映画「マシニスト」は、極度の不眠症を描いた薄気味の悪い作品

  • 2015.12.30 Wednesday
  • 23:52




ブラッド・アンダーソン監督の「マシニスト」(2003年。スペイン=アメリカ合作)は、とにかく薄気味の悪い作品です。機械工のトレヴァーは、極度の不眠症で1年間ほとんど眠れずにいました。ある日、新入りの溶接工アイバンに気を取られて、仲間の腕を機械に巻き込む大事故を起こしてしまいます。しかし上司や同僚は、アイバンという男は存在しないと口をそろえます。

自宅の冷蔵庫には、身に覚えのない首吊りゲームの絵が張られていました。不気味な出来事が頻発しはじめます。不眠症でがりがりにやせたトレヴァーをクリスチャン・ベイルが演じています。医学的に減量可能な限界まで30キロも体重を落として役に挑みました。すさまじい。

クリスチャン・ベイルの役者魂は認めますが、不気味に謎が増幅していくと、さてどんな種明かしが待っているのかと、期待も膨らんでいきます。映像の不気味な雰囲気は評価しますが、結末はあまりにもあっけない。謎解きになっていません。不眠症による妄想で片付けられてはたまらりません。結末はもっと「マシニスト」!



映画「サイドウェイ」は、ワインの蘊蓄を絡ませながらのこっけいなロードムービー

  • 2015.12.30 Wednesday
  • 23:46




「サイドウェイ」(2004年)は、アレクサンダー・ペイン監督の作品です。離婚のショックから立ち直れない中年の小説家を目指す国語教師マイルスは、結婚を1週間後に控えた大学時代からの親友ジャックとともに、カリフォルニアへとワイン・ツアーの旅に出ます。

マイルスは、オタク的なワイン通。旅の途中でワイン好きの魅力的な女性マヤと出会いますが、気持ちを素直に伝えられません。ワインに関する蘊蓄を絡ませながら中年男たちのこっけいなロードムービーを巧みにみせます。見事な脚本ですが、大絶賛すべき作品とは思えません。「中年男なんて、こんなものよ」という、したり顔が気に入らません。

たしかに中年男の身勝手さや可愛らしさは、うまく描かれています。ダメ男を演じたポール・ジアマッティの哀れな表情は忘れ難い。しかし類型的すぎます。

また「人生は極上のワインのように、そのピークを迎える日まで日ごとに熟成し、複雑味を増す。それからはゆっくりと坂を下っていくが、ピークを過ぎた味わいも捨てがたい」などという台詞は、あまりにも月並みです。道を極めれば、そこに人生が重なって見えてくるのは当然です。



カルト教団の施設で過ごした少年を描いた映画「カナリア」

  • 2015.12.30 Wednesday
  • 22:56




カルト教団の施設で過ごした少年の、その後を描いた「カナリア」(2004年)を観ました。ヒット作「黄泉がえり」の後に、あえてこのテーマを選択した塩田明彦監督の志の高さに驚かされます。子どもたちの視線で、カルト教団の意味を問うという視点は、いかにも塩田監督らしいです。「銀色の道」の歌詞が、実に効果的に使われています。

物語は、深い傷口を無理に縫い合わせるように終わります。塩田監督がこの事件から受けた衝撃の大きさが分かります。だから、何としても縫い合わせようとしました。しかし、無理に縫い合わせると、さらにひどい傷口が開きます。

鮮烈な傷口を直視し続けるしかないのではないでしょぅか。「害虫」のラストのように。時代の最前線としての「カナリア」。子どもたちだけが「カナリア」ではありません。あの事件全体が「カナリア」でした。さらにひどい傷口が開いています。



第1次世界大戦の凄惨なソンムの戦いを描く映画「ロング・エンゲージメント」

  • 2015.12.30 Wednesday
  • 22:44




13年間、映画化への思いをあたためてきたジャン=ピエール・ジュネ監督が、ワーナーの参加で50億円以上の製作費を投じた大作「ロング・エンゲージメント」(2004年)。フランス映画史上破格の製作費となりました。63万人以上の戦死者を記録した第1次世界大戦の凄惨なソンムの戦いを描いています。

観ているだけで苦しくなるような戦場の雰囲気。戦争の悲惨さ、やりきれなさが映像から直接伝わってきます。さすがはジュネ監督です。そして対照的なブルターニュ地方の陽光の輝き。全編にわたる色彩設計の見事さ、構図の卓抜さに、ジュネ監督の意気込みが感じられます。

監督としては満足のいく出来だったのでしょう。ただし、作品的な完成度と映画的な面白さは比例しません。「アメリ」のような、わくわくする面白さがあるわけではありません。ラストもあまりに予想通りで、映画的な興奮は少ないです。ジョディ・フォスターが意外な役で登場したシーンや、冷え冷えと突き放したギロチンの場面では、どきりとさせられましたが。



映画「バンジージャンプする」は、生まれ変わりをテーマにした恋愛劇

  • 2015.12.30 Wednesday
  • 21:46




イ・ビョンホン人気にあやかって2001年の作品「バンジージャンプする」(韓国映画、キム・デスン監督)が、2005年に日本公開されました。しかし2005年2月22日のイ・ウンジュ自殺によってイ・ウンジュ遺作としても注目されました。と言っても観客の95%は女性でしたが。

生まれ変わりをテーマにした恋愛劇ですが「性別が変わってしまっていたら」というひねりを効かせているところがユニークです。国語教師の担任した男子生徒がかつての恋人の生まれ変わりと気づき、激しく動揺します。細かな伏線が巧みに生かされています。ロケしたニュージーランドのたゆたう自然が美しいです。

イ・ビョンホンは、甘いマスクだけの俳優ではありません。不器用な大学生と17年後の落ち着いた中年男性を演じ分けています。しかも、その中年が取り乱す姿を熱演しました。イ・ウンジュは、物静かながら芯が強い女性を好演しています。派手さはありませんが、端正で不思議な存在感のある俳優です。地道に俳優としてのキャリアを積んでいくタイプに見えました。自殺しなければ、きっとそうなったと思います。イ・ウンジュは生前、この作品が一番好きと言っていたらしいです。



ゴンドリー監督の映画「エターナル・サンシャイン」は、記憶除去をめぐる物語

  • 2015.12.30 Wednesday
  • 21:41




ミシェル・ゴンドリー監督の「エターナル・サンシャイン」(2004年)は、「マルコビッチの穴」の脚本家カウフマンが仕掛ける奇天外なストーリーかと思っていました。ただ、主人公の脳内イメージが映像になっていることを理解すれば「エターナル・サンシャイン」は分かりやすかったと思います。

ゴンドリー監督は、現実の場面と脳内イメージを巧みに操って物語をころがしていきます。基本的にコミカルさよりもシニカルさが目立ちます。ジム・キャリーよりもウィンスレットの印象が変わっていて驚きました。

肝心の「記憶除去」というテーマの動機が弱いです。別に大失恋した訳ではないのに、2人に関する記憶を消そうとします。重大なことを安易に実行してしまうという現状批判なのでしょうう。記憶が消され始めて、やっと記憶の大切さ、かけがえのなさを知るという展開も、やや幼稚です。最初は、なかなか意欲的な試みと評価していましたが、見終わったときには空しい気持ちになっていました。



映画「ZOO」は、乙一原作の5つの物語で構成

  • 2015.12.30 Wednesday
  • 21:32




「ZOO」(2005年)は、乙一原作の5つの物語「カザリとヨーコ」「SEVEN ROOMS」「So-far」「陽だまりの詩」「ZOO」で構成しています。「ZOO」以外は、悪くない出来です。

「カザリとヨーコ」は母親による子ども虐待。新人・小林涼子が一人二役を演じ分けました。恐怖と笑顔の対比が印象に残る。「SEVEN ROOMS」は監禁・惨殺がテーマ。市川由衣の名演技に拍手しましょう。子役の須賀健太も立派なものです。感動的で胸の詰まるラストは忘れ難い。ただ、助かった人たちがのんびり警察呼びに行くのは、変です。

「So-far」は、とにかく神木隆之介の演技力に圧倒されます。カメラワークも計算されています。唯一のCGアニメーション「陽だまりの詩」は、古屋兎丸が脚本とキャラクターデザインを担当し、水崎淳平監督が後味の良い不思議なラストを演出しています。静かで清清しくてせつない。

表題作の「ZOO」には、魅力を感じません。死体腐乱もシマウマも、生かされていません。オムニバスが台なしです。「ZOO」を最初に持ってきて、徐々に盛り上げ「陽だまりの詩」で締めくくったら、満足して観終わることができたかもしれません。

2005年作品。日本映画。119分。配給:東映ビデオ。企画:黒澤 満。原作:乙一「ZOO(集英社刊)」。プロデューサー:結城良熙、山口敦規。脚本:東多江子/奥寺佐渡子/古屋兎丸/山田耕大/及川章太郎。主題歌:「奇跡」THE BACK HORN(スピードスターレコード)。撮影:高瀬比呂志(J.S.C.)。照明:小野 晃。美術:和田 洋。録音:井家眞紀夫。音楽プロデューサー:津島玄一。■「カザリとヨーコ」=監督:金田龍。出演:小林涼子/松田美由紀/吉行和子。■「SEVEN ROOMS」=監督:安達正軌。出演:市川由衣、須賀健太、佐藤仁美、東山麻美、サエコ■「So-far」=監督:小宮雅哲。音楽:栗山和樹 。出演:神木隆之介/杉本哲太/鈴木杏樹。■「陽だまりの詩」=監督:水崎淳平。キャラクターデザイン:古屋兎丸。■「ZOO」=監督:安藤尋。音楽:栗山和樹。出演:村上淳/浜崎茜。出演:鈴木かすみ、龍坐。



映画「コンスタンティン」は、アメリカン・コミック「ヘルブレイザー」の映画化

  • 2015.12.30 Wednesday
  • 21:26




フランシス・ローレンス監督の「コンスタンティン」(2004年)は、アメリカン・コミック「ヘルブレイザー」を映画化したオカルト・アクション作品です。天国と地獄、天使と悪魔と宗教的なテーマを基本にしていますが、あまりまじめに考えず、頭を空にして楽しむタイプの映画です。

キアヌ・リーヴスの活躍は「マトリックス」というよりも、「ブレイド」。「カンフー・ハッスル」並みの「ありえねえ」展開が続きます。

天使や悪魔を見分ける能力を持つジョン・コンスタンティンは、肺の末期ガンに冒され、余命1年。以前自殺しかけたので天国に行けず、何とか天国行きを認めてもらうため、人間界に潜む悪魔を地獄へ送り返し続けています。利己的な動機によるダーク・ヒーローという設定です。

しかし、たえずタバコを吸い続け、派手なアクションを繰り広げるコンスタンティンは、とても余命1年には見えません。出来の悪い禁煙キャンペーンみたいです。エンドロールの最後の最後に、どうでもいい種明かしの映像があるというのも、おかしいです。



映画「トニー滝谷」、村上春樹の小説の持つ空気感を見事に演出

  • 2015.12.30 Wednesday
  • 21:21




市川準監督・脚本の「トニー滝谷」(2004年)は、村上春樹の短編小説の映画化です。市川準監督は村上春樹の愛読者であり、春樹ワールドを映像空間に移し替えました。シンプルですが、丁寧な仕上がりです。

これまでの作品でも場の空気感を巧みに醸し出してきた市川監督は、村上春樹の小説の持つ空気感を見事に演出しています。無駄を省いた75分という長さも、心地よい。

「孤独」な人生を歩んできた主人公のトニーをイッセー尾形が好演しています。あっさりとしているが、味がある演技です。英子役の宮沢りえは、ほわっとした忘れ難い存在感を漂わせていました。とりわけ足の美しさが眼に焼き付いています。物語は、ほとんど二人だけで進行します。いや、西島秀俊のナレーションが加わり、絶妙な間で物語が進んでいきます。



映画「鏡心・完全版」、身体性と霊性という石井聰亙監督のテーマが浮き上がる

  • 2015.12.30 Wednesday
  • 21:10




「鏡心・完全版」(2005年)は、韓国全州映画祭「デジタルショート・フィルム3人3色、2004」の3本の中の1本として映画祭に提出された短編作品「鏡心」を完成後に、映画祭側が定めた制限時間の枠、画質や音質の枠、予算の枠等に収まらない作品内容にするため、追加撮影し、映像をハイビジョン24Pフォーマットに全面変換、音響や音楽を100%やり直し、石井監督が自力で完全版を制作しました。

デジタルの技術を生かし、一切の制約から完全に自由な自主制作体制で創られました。上映場所を選び、監督のトークなどを同時に提供する「ライブ」としての上映ツアーを行っていました。デジタルとライブの組み合わせがユニークです。新しい映画の可能性をめぐるスリリングな試みだと思います。

作品自体が、個人映画のように虚構化されています。完全ノーライト、ゲリラ的オールロケ、小型カメラでの撮影によって、独特の生々しさが映像に定着しています。一方で、陶酔的なデジタル加工も徹底的に追究されています。一人の女性の都会での現実喪失とバリ体験による回復を幻想譚として描いているように見せて、そういう都合の良い神話化を批判しているように見えます。身体性と霊性という石井聰亙監督の基本テーマが浮き上がってきます。



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