【質問1】あなたは一日平均どれくらい眠っていますか。
https://twitter.com/tawarayat/status/1455520713343791108
8時間以上
7時間
6時間
5時間以下
【質問2】あなたの睡眠時間は足りていますか。
https://twitter.com/tawarayat/status/1455520935096643586
十分足りている
まあ足りている
あまり足りていない
かなり不足している
【質問3】あなたは睡眠に満足していますか。
https://twitter.com/tawarayat/status/1455521154186104841
十分満足している
まあ満足している
あまり満足していない
全く満足していない
【質問4】あなたは毎日の睡眠が好きですか。
https://twitter.com/tawarayat/status/1455521335929557001
とても好き
まあ好き
あまり好きではない
全く好きではない
【質問5】あなたは朝すっきり起きられますか。
https://twitter.com/tawarayat/status/1455521558718398464
毎日すっきり起きる
まあすっきり起きる
あまりすっきり起きられない
全くすっきり起きられない
【質問6】あなたは日中眠くなりますか。
https://twitter.com/tawarayat/status/1455521771570929667
毎日眠くなる
よく眠くなる
あまり眠くならない
全く眠くならない
【質問7】あなたは見た夢を覚えていますか。
https://twitter.com/tawarayat/status/1455521970934534145
よく覚えている
かなり覚えている
あまり覚えていない
全く覚えていない
【質問8】快適な睡眠のために工夫していることはありますか。自由にお書きください。
https://twitter.com/tawarayat/status/1455522189864624141
精神面での工夫
身体面での工夫
寝具寝巻の工夫
寝室環境の工夫
【質問1】あなたは電子書籍を読んでいますか。
https://twitter.com/tawarayat/status/1452228781821726726
【質問2】あなたは有料の電子書籍を買ったことがありますか。
https://twitter.com/tawarayat/status/1452229076291231749
【質問3】あなたが、一番読んでいる電子書籍のジャンルは?
https://twitter.com/tawarayat/status/1452229296521502722
【質問4】電子書籍の一番の良さは何ですか
https://twitter.com/tawarayat/status/1452229557096910854
【質問5】電子書籍の一番悪い点は何ですか
https://twitter.com/tawarayat/status/1452229767814516737
【質問6】個人で電子書籍を出版したいですか
https://twitter.com/tawarayat/status/1452229963969560576
【質問7】個人で紙書籍を出版したいですか
https://twitter.com/tawarayat/status/1452230168072708096
2021年7月24日放送 「シネマキックス」
https://note.com/cinemakicks/n/ne20fbd52f876
放送で紹介した映画です。
「Arc アーク」(石川慶監督)
「劇場編集版 かくしごと ―ひめごとはなんですか」(村野佑太監督)
「ゴジラvsコング」(アダム・ウィンガード監督)
「ライトハウス」(ロバート・エガース監督)
「グリード ファストファッション帝国の真実」(マイケル・ウィンターボトム監督)
放送で紹介したTVアニメです。
「憂国のモリアーティ」(野村和也監督)
「小林さんちのメイドラゴンS」(石原立也監督)
「ヴァニタスの手記」(板村智幸監督)
「平穏世代の韋駄天達」(城所聖明監督)
放送で流した曲です。
大滝 詠一「君は天然色」 5:07
ABBA「Money, Money, Money」 3:08
ビョーク「I’ve Seen It All」 5:29
fhána「愛のシュプリーム!」 4:44
放送で発表した私の2000年独断映画ベストテンです。
1位「ダンサー・イン・ザ・ダーク」(ラース・フォン・トリアー監督)
2位「ゴダールの映画史」(ジャン=リュック・ゴダール監督)
3位「カリスマ」(黒沢清監督)
4位「アメリカン・ビューティー」(サム・メンデス監督)
5位「オール・アバウト・マイ・マザー」(ぺトロ・アルモドバル監督)
6位「マルコヴィッチの穴」(スパイク・ジョーンズ監督)
7位「ヒマラヤ杉に降る雪」(スコット・ヒックス監督)
8位「ザ・パーソナルズ」(伊比恵子監督)。37分
9位「マグノリア」(ポール・トーマス・アンダーソン監督)
10位「金髪の草原」(犬童一心監督)
10位「ブリスター!」(須賀大観監督)
10位「風花」(相米慎二監督)
ゲストは、世界最古の個人系VTuberバーチャル美少女ねむさんとフリーランスCGディレクター・バーチャル雪まつり共同企画者の鳥谷部正輝さんです。
三角山放送局の番組「俵屋年彦のTAWALAB」2021年3月19日放送の事前収録が、VR空間バーチャル雪まつり会場内で行われました。
ゲストは、世界最古の個人系VTuberバーチャル美少女ねむさんです。
ListenRadioというアプリで聴けます。全国のラジオ局から、北海道、三角山放送局を選択してください。
http://listenradio.jp
http://www.sankakuyama.co.jp
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アニメ『劇場版「SHIROBAKO」』は、2014年10月から2015年3月まで全24話が放送されたTVアニメの続編です。TVアニメ「SHIROBAKO」は、TVアニメ作品の完成を目指して奮闘するアニメ業界の日常を描く群像劇で、大きな感動を運んでくれました。
「白箱」というのは、制作会社が納品する白い箱に入ったビデオテープを指す業界の用語です。アニメの無事完成を象徴しています。
上山高校アニメーション同好会の5人は、学園祭で自主制作アニメを発表し、卒業後いつかもう一度、一緒に商業アニメを作ろう約束します。アニメ制作会社「武蔵野アニメーション」で制作進行として働く宮森あおいをはじめ、アニメーター、声優、3Dクリエイター、脚本家と、それぞれの場所でアニメ制作に携わっています。
アニメでは、架空のアニメ制作会社・武蔵野アニメーションを中心に、アニメ制作に携わる人々の奮闘を続きます。2クール、24話あるので、それぞれの担当の葛藤がきめ細かく描かれて、見応えがあります。
アニメでは、架空のアニメ制作会社・武蔵野アニメーションを中心に、アニメ制作に携わる人々の奮闘を描いています。つくっている人たちの苦労を知りながらアニメを見ると、アニメの魅力が増します。
私は、2015年のTVアニメ独断ベスト10の3位に選びました。個性的な人たちがぶつかり合い、協力して作品をつくる姿「SHIROBAKO」の面白さはアニメファンとしては、たまらないものがありました。
『劇場版「SHIROBAKO」』は、テレビシリーズから4年後、オリジナルの劇場用アニメ制作に取りくむ制作関係者の姿が描かれます。TVシリーズでは、TVアニメを制作しましたが、劇場版では劇場版アニメを制作することになりました。
2時間という限られた上映時間内で描くために、大味にはなっていますが、次第に盛り上げていく水島努監督の手腕が見事に発揮されて、満足感の残る結末になっています。
サム・メンデス監督・脚本の「1917 命をかけた伝令」は、第1次世界大戦を舞台です。祖父の体験談がもとになっています。若いイギリス兵のスコフィールドとブレイクは、最前線にいる仲間1600人の命を救うために、重要な命令を伝達するため、敵陣を駆け抜けるという危険な任務を遂行します。
第92回アカデミー賞では作品賞、監督賞を含む10部門にノミネートされ、撮影賞、録音賞、視覚効果賞を受賞しました。今年のアカデミー賞は、アジア映画として初めて「パラサイト」が作品賞を受賞しました。その意義は大きいですが、「命をかけた伝令」が受賞してもおかしくなかったと思います。
兵士がひしめく塹壕(ざんごう)、廃墟になった街、花びらが舞い散る河川、戦闘が続く最前線と、波乱万丈な展開です。あらゆる通信網が遮断されているため、伝令が最後の手段という設定。第1次世界大戦なら、リアリティがあります。
主人公となる2人の兵士は、ジョージ・マッケイとディーン=チャールズ・チャップマンが演じています。二人とも、熱演していますが、無名の俳優です。サム・メンデス監督は「観客には2人の目を通して新たな体験をしてほしいから、無名俳優を起用した。この規模の映画に無名俳優を使えるのは、逆に贅沢なキャスティングだった」と話しています。その点でも、とても珍しい映画だと言えます。
撮影は、ロジャー・ディーキンス。ほぼ全編が長回しのワンカット撮影のように感じられます。その臨場感は圧倒的です。美術チーム、照明チームの仕事も素晴らしい。戦争映画でありながら、時に絵画のような、これまでみたことのない芸術的な映像に出会えます。
上空で3機の戦闘機がドッグファイトを繰り広げ、炎上しながら、あろうことか二人に向かって突っ込んでくる場面は、こちらにも向かってくるので一気に緊張感が高まりました。そして、予想を超えた深刻な状況に陥ります。
物語の構成上、人間ドラマとしての要素は薄いですが、緊張感が持続する新しい表現を生み出した戦争映画として、評価していいと思います。
この作品は、スピルバーグ監督の「プライベート・ライアン」やクリストファー・ノーラン監督の「ダンケルク」と比較されます。しかし、感じる印象は大きく違います。
「プライベート・ライアン」は「戦争映画の歴史を変えた」と絶賛され「兵士の視線で撮られている」という評価されましたが、私は的外れな評価だと思いました。戦場にいるというよりは、神のような視点で安全な場所から見ているという感じがずっとつきまといました。
「ダンケルク」は、ドイツ軍に包囲された英仏連合軍の兵士40万人を救うため、イギリスの輸送船や駆逐艦、民間船が動員された救出劇です。戦う戦争映画ではなく、逃げる戦争映画です。ゲーム的展開ともいえます。その点は「命をかけた伝令」に似ていますが、複数の人物の視点で描かれているところが違います。
私は、兵士に寄り添う映像に徹した「命をかけた伝令」に、戦場のリアルさを痛切に感じました。痛いほどの悲惨さ、残酷さを感じました。その意味では、反戦映画ともいえる出来だと思います。
この映画の最後でも暗示されていましたが、第1次世界大戦は泥沼化していきます。しかし、1918年に大流行したスペイン風邪の影響によって、大戦は終わります。第1次世界大戦の死者は1600万人ですが、スペイン風邪による死者は少なく見積もっても5000万人と言われています。
スペイン風邪という名前は、スペインで最初に発生したからではなく、戦争中で各国での疫病流行の情報が隠されていた中で、中立国だったスペインが流行のニュースを流していたためです。
アリ・アスター監督の長編第2作「ミッドサマー」。ミッドサマーは、草花を飾り、民族衣装を着てダンスを踊るスウェーデンの夏至祭です。スウェーデンでは、クリスマスと並ぶ最も重要な行事の一つですが、この作品では、ミッドサマーがとんでもない展開になります。
事故で家族を失ったダニーは、大学で人類学を研究する恋人や友人たち5人とスウェーデンを訪れます。目的は奥地の村で開催される「90年に一度の祝祭」への参加です。村は、美しい花々が咲き、陽気で優しい村人たちが歌い踊っています。
光に満ちた楽園のような場所に見えましたが、次第に不穏な空気が流れ始めます。明るく透き通った空気の中で惨劇が続きます。白夜の明るさと残酷さの共存が、新しい怖さを生み出しています。細部のユニークな美術も見応えがあります。
事前の予備知識なしで見たのですが、土着の文化を濃厚に描いた日本映画を連想しました。見終わった後に調べてみると、初来日したアスター監督が、今村昌平監督の「神々の深き欲望」「楢山節考」を参考にしたと話している記事を読んで、とても納得しました。
アスター監督は、園子温監督とも対談していました。リップサービスではなく、「園監督の大ファン」と明言し「「愛のむきだし」を観たときは強いジェラシーを感じた」と話していました。園子温監督と共通する作家性、美意識を感じます。
アリ・アスター監督の長編デビュー作は、「ヘレディタリー 継承」です。一度観たら生涯忘れることのできない恐怖を植え付けます。映像から怖さが滲み出てくるのです。
音楽によって増幅される異様な雰囲気。夜が昼に一瞬で変わる場面転換。何が起こっているのかわからなくなる錯乱性。細部に散りばめられた不気味な伏線。1級のホラー作品であると同時に、ホラーというジャンルを超えてしまった傑作と言えます。
ミニチュアのドールハウスが、グラハム家の実際の部屋になるという、どうやって撮ったのと首をかじけた導入からして怖いです。早くも本当か嘘かがわからなくなります。
冒頭でグラハム家の祖母エレンが亡くなります。娘のアニーは、謎の多かった母親エレンに対して複雑な思いを持っています。最初は、アニーに同情してみていきましたが、やがて大きな秘密が明らかになります。アニーを演じたトニ・コレットの熱演ぶりは、高く評価されるべきです。
そして、母親のアニーに心を開かず、何かに取りつかれたように奇妙な行動を繰り返す、祖母に溺愛されていた長女チャーリー。チャーリーを演じたミリー・シャピロのただならぬ存在感にも怯えます。
2018年に公開された「ヘレディタリー 継承」ですが、リバイバルされて、4DX版の上映が始まっています。見ているだけでも怖いのに、どれだけ怖がらせようというのでしょう。
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人工知能意識調査結果2020
Twitterの投票機能を使った4択形式です。
2020年8月12-17日に実施。
カッコ内は2018年7月調査時の数字です。
【質問】人工知能の最も近いイメージは。 970人
革命 27%(31%) 便利 36%(24%)
誇大 12%(10%) 危険 25%(35%)
「革命」とは、文化、経済など社会全体に大きな影響を与えるという意味です。
「便利」とは、さまざまな分野のサービスが向上し利便性が高まるという意味です。
「誇大」とは、誇大広告、大げさな宣伝という意味です。
「危険」には、「人類が滅ぼされる」「人類が支配される」「職を奪われる」など様々な要素が含まれます。
【質問】あなたは、人工知能に関心がありますか? 658人
とても関心がある 42%(44%)
まあ関心がある 39%(35%)
あまり関心がない 12%(11%)
全く関心がない 7%(10%)
【質問】人工知能は、社会に役立つと思いますか? 676人
とても役立つ 50%(51%)
まあ役立つ 41%(38%)
あまり役立たない 6%(6%)
全く役立たない 3%(5%)
【質問】人工知能は、人間の仕事を奪うと思いますか? 670人
大半を奪う 30%(41%)
半分くらい奪う 36%(35%)
あまり奪わない 28%(17%)
全く奪わない 6%(7%)
【質問】人工知能によって社会はどうなると思いますか? 593人
かなり画一化する 25%(31%)
やや画一化する 23%(19%)
やや多様化する 23%(20%)
かなり多様化する 29%(30%)
【質問】人間と人工知能の望ましい関係は? 598人
人間が人工知能を使いこなす 28%(32%)
人間が人工知能に従う 9%(9%)
連携し役割分担する 49%(45%)
緊密に融合する 14%(14%)
【質問】人工知能が人知を大きく超えるシンギュラリティは来ると思いますか? 642人
早くやって来る 40%(51%)
かなり時間がかかる 33%(25%)
やって来ない 17%(12%)
わからない 10%(12%)
人工知能の最も近いイメージは。
https://twitter.com/tawarayat/status/1293532669523841025
あなたは、人工知能に関心がありますか?
https://twitter.com/tawarayat/status/1293532905398968321
人工知能は、社会に役立つと思いますか?
https://twitter.com/tawarayat/status/1293533161654116354
人工知能は、人間の仕事を奪うと思いますか?
https://twitter.com/tawarayat/status/1293533472301019136
人工知能によって社会はどうなると思いますか?
https://twitter.com/tawarayat/status/1293533680736993284
人間と人工知能の望ましい関係は?
https://twitter.com/tawarayat/status/1293533981770543106
人工知能が人知を大きく超えるシンギュラリティは来ると思いますか?
https://twitter.com/tawarayat/status/1293534515655086081
札幌市は、葬送方法として火葬だけを認めています。
しかし、火葬という方法は、大きな問題を抱えています。大量の燃料を消費し、二酸化炭素による大気汚染を起こします。地球環境に優しい方法とは言えません。SDGs未来都市に選ばれた札幌市が、火葬のみを続けることには疑問があります。土葬から火葬中心に変化した理由は主に土地不足でした。しかし持続可能な社会を考えるとき、札幌市が葬送に関する新たな長期計画を検討している今、他の選択肢を検討する時期に来ているのではないでしょうか。
海外では、新しいテクノロジーによる地球環境に優しい葬送方法が模索されています。アルカリ加水分解で短時間で遺体を液体化する方法、遺体を凍結乾燥させて粉砕する方法などが、実施されています。アメリカのワシントン州では、今年5月に「人間の遺体を堆肥にして葬る」ことが認められました。世界は、SDGsの観点から、葬送方法においても、大きく動き始めています。
多様性を尊重する時代です。葬送方法も、ライフスタイルの一つです。葬送方法の選択の自由も、大切な権利です。
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VRの最も近いイメージは。
https://twitter.com/tawarayat/status/1270348949434413057
あなたは、VRに関心がありますか?
https://twitter.com/tawarayat/status/1270349397423865858
VRの技術は、社会に役立つと思いますか?
https://twitter.com/tawarayat/status/1270350820932907008
あなたが初めてVR機器を体験したきっかけは?
https://twitter.com/tawarayat/status/1270349156909895682
初めてVRを体験したとき、あなたは、どう感じましたか?
https://twitter.com/tawarayat/status/1270349597223739397
あなたが一番ほしいVR機器は何ですか?
https://twitter.com/tawarayat/status/1270351104849481728
私の意見35
葬送に関する市民の意識醸成、亡くなった方の葬送に関する希望実現のため、横須賀市は2018年度から「わたしの終活登録」という支援事業を実施している。札幌市でも実行できる内容である。
札幌市の回答35
横須賀市も含め、他都市の取組を参考にして、今後の取組を検討してまいります。
私の意見39
札幌市は、遺体を葬る方法として火葬だけを認めているが、世界的に見れば、地球環境保護の観点などから、遺体を液体化する、凍結 乾燥して粉砕する、堆肥にする等、火葬を見直す動きが強まっている。札幌市も新しい技術を活用した火葬に代わる葬送方法を長い目線で検討すべきである。
札幌市の回答39
現在、国内では、遺体を葬る方法としては火葬が一般的となっていることから、火葬以外の方法について検討することは考えておりません。葬送に関する最新の情報については、把握に努めてまいります。
札幌市火葬場・墓地のあり方基本構想
https://www.city.sapporo.jp/hokenjo/f3seikatu/kihonkoso/index.html
コワーキングスペースを知っていますか。
https://twitter.com/tawarayat/status/1247724366726455296
バーチャル空間で複数の人がアバターになって同じ場所に集まるソーシャルVRを知っていますか。
https://twitter.com/tawarayat/status/1247724702790909952
公式の学校以外の講座やセミナーに参加したことがありますか。
https://twitter.com/tawarayat/status/1247724940939292679
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TVアニメ「メイドインアビス」は、2017年7〜9月に放送され、私の2017年独断アニメベストテンでは、年間2位と評価した傑作です。劇場版「メイドインアビス 深き魂の黎明」は、その続きとなる作品です。
アニメ「メイドインアビス」の原作は、つくしあきひとのダークファンタジーコミック。最初は12歳の探窟家見習いの少女リコと、謎のロボット少年レグを中心に物語が進みます。
アビスへの憧れが人一倍強いリコは、母ライザのような偉大な探窟家になることを夢見ていました。二人は、行方不明の母を探しに、底知れぬ巨大な縦穴・アビスの深層を目指します。のちに深界四層で出会った全身が毛で覆われたナナチが仲間に加わります。
劇場版「メイドインアビス 深き魂の黎明」の公開に先立ち、昨年2019年1月に劇場版総集編が前編と後編に分かれて上映されました。
TVアニメ第1話から第7話Aパートを再編集し新規カットを追加した「【前編】メイドインアビス 旅立ちの夜明け」と第7話Bパートから第13話を再編集し新規カットを追加した「【後編】メイドインアビス 放浪する黄昏」です。
前編は冒険活劇の楽しい展開が中心でしたが、後編は過酷な物語が前面に出てきます。とりわけ、ナナチとミーティの物語は、あまりにも辛い話で、胸が締め付けられました。ただ、総集編としては、まとまっていたと思います。
そして今回の劇場版「メイドインアビス 深き魂の黎明」。黎明卿と呼ばれているボンドルドとの戦いが中心です。残酷な実験を繰り返すボンドルド。壮絶な戦いが繰り広げられ、アクションシーンのキレも見事です。劇場版にふさわしい上質な仕上がりでした。
今回は、父としてボンドルドを慕うプルシュカの、目を背けたくなるような悲劇が描かれます。当初PG12指定とされていましたが、映倫の最終審査の結果R15+指定に引き上げられたのも、頷けます。それほどむごい運命が待ち構えていました。
ボンドルドは、アビスの呪いで人間性を失っていますが、アビスの真相に迫ろうとする姿勢は、最後まで揺るぎません。悪役としては、本当に見事な最後でした。
「この身体が破壊されてしまったことは甚だ残念ですが、君たちと出会い、ぶつかりあえたことは、かけがえのない喜び。君たちがこの先に進むことこそ、私の新たな憧れです。どうか君たちの旅路に、あふれんばかりの呪いと祝福を」
ボンドルドの最後の言葉が、とても印象的でした。
ストーリーとともに、丹念に書き込まれた背景美術も、大きな魅力です。美術監督は増山修(ますやま・おさむ)。音楽は、オーストラリアの作曲家ケビン・ペンキン。イギリスの王立音楽大学を卒業しています。アビスの世界観にぴったりの繊細で拡がりのある楽曲です。
可愛い絵柄と残酷な展開という点は「魔法少女まどか⭐マギカ」と共通していますが、マギカが鋭利な刃物だとしたら、アビスは体を溶かす毒薬です。「メイドインアビス」という美しくも、痛みに満ちた過酷な世界の中に溶かされていきます。
今回は深層6層へと出発するところで、終わります。そして、すぐに続編の制作が発表されました。原作では、6巻からのスタートとなります。今回の劇場新版がとても優れていたので、次回にも期待が高まります。
本編のほかに、ショートアニメ「マルルクちゃんの日常」が同時上映されています。全4話構成で本編の上映前に毎週異なるエピソードが流されます。毎週異なるという点では、観る入場者特典と言えます。
マルルクは、事故で倒れていた所をライザの師匠オーゼンに拾われて弟子になります。日の光に弱いため地上に出ることができず、深界二層の「監視基地」で見張りをしています。とても可愛いです。
ダム、トンネルなど大規模プロジェクトを施工してきた前田建設工業株式会社は、「アニメやゲームに登場する建造物を実際に作ったらどうなるか?」を本格的に検証するWEBコンテンツ「前田建設ファンタジー営業部」を公開しています。そんなユニークな試みが、実写映画化されました。「ハンサム★スーツ」「賭ケグルイ」の英勉(はなぶさ・つとむ)監督がメガホンをとりました。
バブル崩壊後の2003年。前田建設の広報グループ長は、「アニメ『マジンガーZ』の出撃シーンに登場する地下格納庫を現状の技術と材料で建設したらどうなるのか?」を検証するWEB連載を提案します。
乗り気でなかった広報グループの若手社員たちも、プロジェクトを進めるうちに、何事にも真剣に向き合う技術者たちの姿勢に打たれていきます。ロケに実際の建設現場を使っているだけに、迫力満点です。
最初は、大げさな演技が気になりましたが、実現に向けて技術者たちが力を合わせていく熱い展開に引き込まれていきました。「アベンジャーズ」を意識したオープニング映像が、笑えました。
架空の事業に真剣に取り組む姿勢は、とても魅力的です。そして、それは夢物語に終わらないかもしれません。今後、現実世界とツインになるデジタル化した3D空間・ミラーワールドが土木の世界にも浸透してくれば、ミラーワールドでの斬新な事業を真剣に検討する時代が来るかもしれません。その試みが現実世界にも生かされていく時代には、建設業界もサービス業として他の産業と一体化していくことになるのでしょう。
テリー・ギリアム監督が映画化を試みるたびに、不運が重なり、製作中止の憂き目に遭い、なんと9回も頓挫してきた企画を、構想から30年を経て、やっと完成させました。ある意味で奇跡的な作品です。緻密さと奔放さが融合しています。
仕事への情熱を失ってしまったCM監督のトビーは、スペインの田舎で撮影中に謎の男からDVDを渡されます。そのDVDは、なんと、トビーが10年前の学生時代に監督し、賞を取った「ドン・キホーテを殺した男」でした。
映画の舞台の村が近くにあることを知ったトビーは、現地を訪れます。しかし、村の人々はトビーの映画のせいですっかり変わり果てていました。ドン・キホーテを演じた靴職人の老人ハビエルは、今も自分を本物の騎士だと信じ込んでいます。ドン・キホーテと信じる老人と若手監督の奇妙な旅が始まります。
「ドン・キホーテ」は、スペインの作家ミゲル・デ・セルバンテスの小説。 騎士道物語の読み過ぎで現実と物語の区別がつかなくなった下級貴族が、「ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ」と名乗って冒険の旅に出かける物語です。1605年に前編と、1615年に後編が出版されました。
「ドン・キホーテ」のテーマである、物語という虚構と現実との区別がつかなくなる、虚構が現実を支配していくという近代人の戸惑いは、フェイクニュースに翻弄される現代にも繋がっています。「ドン・キホーテ」は、虚構と現実の関係を、本と読者の関係に関連づけて展開されます。それが、今でも人気を失わない魅力でしょう。
映画は、さらにそれを包み込むという複雑な入れ子構造になっています。入れ子構造の中で、人々は、自分がなんであるかがわからなくなり、迷宮に迷い込みます。
映画は、キューブリック監督ほか、様々な映画監督へのオマージュにも満ちています。しかしフェリーニ監督のテイストが色濃かった点は意外でした。
若くして企画しながら、長い年月をかけて完成したために、映画に翻弄され続けたギリアム監督自身の人生も重ねられているように感じました。まるで遺作のような余韻が残りました。
タイカ・ワイティティ監督が、第2次世界大戦時末期のドイツに生きる人びとの姿を、ユーモアを交えて斬新な切り口で描いています。第44回トロント国際映画祭で最高賞の観客賞を受賞しました。確かに愛すべき作品です。
10歳のジョジョは、空想上の友だちアドルフの助けを借りながら、青少年集団「ヒトラーユーゲント」で、立派な兵士になろうとしています。しかし、訓練でウサギを殺すことができなかったジョジョは、教官から「ジョジョ・ラビット」というあだ名をつけられてしまいます。
母親とふたりで暮らすジョジョは、ある日家の隠し部屋に人がいることに気づきます。母親が匿っていたユダヤ人の少女でした。少女への複雑な思いを胸に、ジョジョの葛藤の日々が始まります。
主人公ジョジョ役のローマン・グリフィン・デイビスが、とにかく元気でハツラツとしています。ジョジョの母親役はスカーレット・ヨハンソン。柔軟で芯の強い母親を、見事に演じています。本当に上手いと思いました。俳優でもあるワイティティ監督は、アドルフ役を軽妙に演じました。いい味を出していました。
今年のアカデミー賞で脚色賞を受賞したワイティティ監督は、授賞式会場でのインタビューで、MacBookのキーボードの酷さをネタにして笑いを取ったことでも有名です。
映画の冒頭では、ヒトラーに熱狂するドイツ国民の記録映像に、ビートルズの「抱きしめたい」をかぶせるという、大胆な演出に驚きました。そして、ラストシーンは、なんとデヴィッド・ボウイです。「ヒーローズ」のドイツ語版が流れます。なんというぶっ飛んだ結末でしょう。
2019年に完結した作品が対象です。多くの傑作を見逃していると思いますが、ご了承ください。
★5位「かぐや様は告(こく)らせたい 〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」
生徒会の会長・白銀御行と副会長・四宮かぐやは、互いにひかれ合っています。「天才たちの恋愛頭脳戦」という副題ですが、計算高いものの、純情な二人のモノローグと掛け合い漫才が持ち味です。ドロドロした展開ではなく、笑えるコメディです。二人と絶妙な関係で場を盛り上げるのが、書記の藤原千花です。会話中心でありながら、3人の動きや表情の変化が楽しく、飽きません。
3話のエンディングでは、突然藤原千花の可愛らしい踊りと歌が披露され、驚きました。
★4位「鬼滅の刃」
2クール、安定した作画の高いクオリティは変わりませんでした。19話を頂点とするアクションシーンの独創的な表現には感心しました。アニメ制作のufotableが、いかに丹精込めて作っているかが、伝わってきます。
主人公の竈門炭治郎が繰り出す剣の技法「水の呼吸」のアニメ表現が素晴らしいです。「葛飾北斎の浮世絵にある波をイメージして動かす」というコンセプトのもと、手書きと3Dを組み合わせて制作しています。
★3位「女子高生の無駄づかい」
さいのたま女子高校に入学し同じクラスになった幼馴染3人の学園コメディ。個性豊かな同級生たちとの日常を描いています。軽い気持ちで見始めましたが、どんどん引き込まれていきました。力の抜けそうな脱力系のギャグが多いのですが、ギャグのセンスはかなり高いです。そして、個性的な女子高生たちの日常生活が、とても微笑ましく感じられます。
11話には驚きました。漫画家を目指しているオタというあだ名の女の子は、低所得Pというボカロイド・プロデューサーの曲のファン。意を決して会いにいきますが、低所得Pの正体は、なんと担任の教師でした。
「女子高生の無駄づかい」の原作者ビーノは、ボカロイド・プロデューサーでもあり、アニメで使われた曲も低所得Pとして発表していた曲でした。ビーノと低所得Pはアニメの中で溶け合い、これまで経験したことのない味わいを生み出しました。
★2位「キャロル&チューズデイ」
「キャロル&チューズデイ」は、毎回冒頭で火星の歴史に残る奇跡の7分間を強調してきました。最初から、さんざん期待を盛り上げてきました。たくさん登場するプロの歌手によるオリジナル曲は、どれも美しく、音楽が主人公と言っていいアニメでした。
ただ、ストーリー展開が雑で、観客の静止画シーンの使いまわしが気になるなど、欠点も目立ちました。しかし、最終回24話のラストシーンは、まさに奇跡の7分間でした。これまでの欠点を帳消しにしてあまりある感動の結末でした。「Mother」の熱唱は、アニメ史に残る傑作です。
★1位「ロード・エルメロイ?世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-(レール・ツェッペリン・グレイズ・ノート)」
第四次聖杯戦争を生き延びたウェイバー・ベルベットは、ロード・エルメロイの名を受け継ぎ、「ロード・エルメロイII世」として、魔術師が集まるロンドンの時計塔で様々な事件に立ち向かいます。
魔術ミステリーという特異な展開ですが、緻密な構成と落ち着いた展開が心地よかったです。TROYCA(トロイカ)の気品に満ちた作画、梶浦由記の情感あふれる音楽が作品を盛り上げました。イギリス・ロンドンの雰囲気も伝わってきました。何と言っても、世界を魔術的な観点で捉え返していくロード・エルメロイII世の姿勢が、かっこいいです。
次点
★「Dr.STONE」工夫をこらしながら、科学文明を取り戻していく過程がとても面白いです。
★「炎炎ノ消防隊」炎の表現が多彩です。アクションシーンは、見応えがありました。
★「彼方のアストラ」の9話以降の怒涛の展開、驚くべき事実が次々に明らかになるスリリングさには、目を見張りました。
★「さらざんまい」 幾原邦彦監督のオリジナルアニメ。独創的な幾原ワールドが楽しめました。
★「約束のネバーランド」 なかなか練られた内容で、想像以上にハラハラしました。背後に壮大な世界観を備えています。
★「火ノ丸相撲」 青春熱血アニメ。熱い展開が続き、相撲というスポーツの面白さを教えられました。
★「どろろ」 原作「どろろ」の世界を再構築し、壮絶な人間ドラマに仕上げました。
これらの作品も、捨てがたい魅力を持っていました。5位に入れたい作品ばかりです。
私が、2019年に見た作品の中から選んでいます。多くの傑作を見逃していると思いますが、ご了承ください。
★5位「空の青さを知る人よ」
長井龍雪監督、脚本家・岡田麿里、キャラクターデザイナの田中将賀で結成したアニメ制作チーム「超平和バスターズ」によるオリジナルアニメです。「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」「心が叫びたがってるんだ。」につづく三部作の最後の作品です。前2作とともに埼玉県秩父市が舞台です。見事な脚本でした。派手さはありませんが、見終わった後に余韻が広がる作品です。声優初挑戦の吉沢亮が、18歳と31歳の主人公を演じ分けていました。驚くほどうまかったです。
★5位「プロメア」新しいアニメの質感
「天元突破グレンラガン」「キルラキル」の今石洋之監督と脚本家の中島かずきが、タッグを組んだオリジナルのアニメです。アニメーションスタジオのTRIGGERと、XFLAGが初めて共同製作しました。
スタイリッシュな作画が、魅力的です。「天元突破グレンラガン」を連想させる場面も多いのですが、パステルカラーを強調した色彩と幾何学的なポリゴンを活用した表現が、新しいアニメの質感を生み出しています。
★4位「トイ・ストーリー4」
綺麗な結末を迎えたと思っていた「トイ・ストーリー」が、予想外の続編を公開しました。相変わらず気持ちの良いテンポで物語が進みます。実写と変わらないリアルな風景、人形たちの微妙な表情の変化や繊細な質感の表現には、感動しました。「トイ・ストーリー2」以来19年ぶりに再登場した陶器製の人形ボー・ピープが大活躍します。
人形を、子供自らが作るという新たな視点の導入で、完璧な結末と思われたトイ・ストーリーの世界が、別の展開を見せます。ラストのウッディの決断も、新鮮でした。
★3位「天気の子」
監督が驚くほど冷静な作品づくりをしていることに感動しました。そして、揺るぎない作家性にも心を打たれました。とても楽しい映画ですが、議論を巻き起こす壮大な実験作品でもあります。RADWIMPSの効果的な曲が、作品をより豊かな世界へと高めています。中でも、女性ボーカルとして三浦透子が参加した「グランドエスケープ」は、深い感動を運んできました。
公開初日は、2019年7月19日。京都アニメーションの放火事件の翌日でした。新海監督は、舞台あいさつで作品を作り続ける決意を述べています。
★2位「海獣の子供」
渡辺歩監督が、五十嵐大介のコミック「海獣の子供」をもとにアニメ化しました。原作は緻密な書き込みが特徴ですが、アニメでも原作のタッチを生かした緻密な表現が追求されています。それに鮮やかな色彩と繊細な動きが加わり、これまで見たことのない質感のアニメ表現になっています。
ストーリーを追うよりも圧倒的に美しい映像に溺れる作品です。ただ、考えること、感じることの限界を実感するアニメでもあると思います。私は、VRを体験することで、この作品のテーマが、とても切実に感じられるようになりました。
★1位「スパイダーマン:スパイダーバース」
初代スパイダーマンのピーター・パーカーが殺された後、2代目スパイダーマンの少年マイルス・モラレスが、異次元から来た多彩なスパイダーマンたちとともに、世界の危機に立ち向かいます。
全く違う絵柄、様々な表現スタイルのスパイダーマンが登場しますが、アニメ表現も斬新です。実験的と言えるほどの尖った表現にも出会えます。多彩なアニメ表現の垣根を超え、見事な融合を果たしました。劇場アニメは、新しい地平に踏み出したと言えます。
次点★「きみと、波にのれたら」
濃厚な作家性、過剰な表現が持ち味の湯浅政明監督ですが、今回は様々なアイデア、魅力的な表現を盛り込みつつ、明るい歌にのせて、軽快にテンポよく進みます。これくらいの濃度で気持ちよく流れる作品も悪くありません。これはこれで新たな挑戦だと思います。
ポン・ジュノ監督の新作です。2019年カンヌ国際映画祭で最高賞にあたるパルムドールを受賞。1月5日発表のアメリカ・ゴールデン・グローブ賞では韓国映画初の外国語映画賞を受賞しました。
半地下の住宅で暮らす全員失業中のキム一家。息子のギウは大学受験に失敗し浪人中です。ギウの友人で名門ソウル大学に通うミニョクが「僕が海外留学する間、僕の代わりに家庭教師をしてほしい」とギウに頼むところから物語は始まります。
ギウは、IT企業の社長パク・ドンイクの高校2年生の娘ダヘを教えるため豪邸を訪れます。パクの妻ヨンギョの信頼を得たギウは、妹ギジョンをパクの幼い息子ダソンの美術の家庭教師に推薦します。更に父ギテクを運転手に、母チョンスクを家政婦にと、ドンイク社長一家の「パラサイト」になります。
金持ち家族を騙して底辺の家族全員が職を得るという、ある意味コミカルで痛快な展開です。しかし、その後、想像を超えた怒涛の物語が繰り広げられます。
観終わると、なんとも言えない感覚に包まれ、心が落ち着かなくなっています。韓国の格差社会を皮肉っただけではない、得体の知れない作品を体験しました。
岩井俊二監督の新作。岩井監督の出身地・宮城県で撮影されました。ドローン撮影を多用し透明な空気感が漂います。
映画は、葬儀の場面から始まります。岸辺野裕里は、姉の未咲の葬儀で未咲の娘・鮎美と再会します。
未咲宛に届いていた同窓会案内をもとに、裕里は未咲の同窓会で姉の死を伝えようとしますが、同級生たちに未咲本人と間違われ、真実を打ち明けられずに退席します。しかし片思いの初恋の相手で、小説家になっていた乙坂鏡史郎と再会し、二人は文通を始めます。
岩井俊二監督が、また手紙を中心にした映画を作るとは思いませんでした。手紙という手段が生み出す、思わぬ行き違いが重なりますが、前半は岩井監督らしい鋭い切り口が感じられませんでした。
しかし、後半に入ると思わぬ展開の連続で、岩井ワールドが楽しめます。前半に仕掛けられた伏線が作品を叙情豊かに彩ります。広瀬すずの演技を、初めてうまいと感じました。そして、ラストシーンの美しさは、まさに岩井作品でした。
TAWALAB(創設者・俵屋年彦)は、札幌市保健所生活環境課が、今月末まで「火葬場・墓地のあり方」について、市民からの意見を募集していることを重く捉え、緊急セミナー「SDGs葬送-テクノロジーで葬送を変える-」を企画しました。世界では、地球環境の観点から火葬という葬送方法が問い直されています。しかし、2018年に「SDGs未来都市」に選ばれた札幌市には、従来の火葬を見直そうという姿勢が見られません。今後も、火葬だけを認めていくことが大前提になっています。しかし、世界各地で新しいテクノロジーを葬送方法に取り入れる動きが加速し、大きな変化が生まれています。
★2020年1月27日(月)午後7時-9時
★会場=13LABO (札幌市北区北13条西4丁目、第一志水ビル2階、南向)
★参加無料・途中参加・退席自由
★主催=TAWALAB(創設者・俵屋年彦、連絡先=tawalab2020@gmail.com)
札幌市保健所生活環境課は「みんなが尊厳ある葬送を実現できるまち」を目指し、今月末まで「火葬場・墓地のあり方」について、市民からの意見を募集しています。現在札幌市は、葬送方法として火葬だけを認めています。
札幌市火葬場・墓地のあり方基本構想(案)に係るパブリックコメント
https://www.city.sapporo.jp/hokenjo/f3seikatu/kihonkoso/pubcome.html
しかし、火葬という方法は、大きな問題を抱えています。大量の燃料を消費し、二酸化炭素による大気汚染を起こします。地球環境に優しい方法とは言えません。SDGs未来都市に選ばれた札幌市が、火葬のみを続けることには疑問があります。土葬から火葬中心に変化した理由は主に土地不足でした。しかし持続可能な社会を考えるとき、新たな計画の中で、他の選択肢を検討する時期に来ているのではないでしょうか。
海外では、新しいテクノロジーによる地球環境に優しい葬送方法が模索されています。アルカリ加水分解で短時間で遺体を液体化する方法、遺体を凍結乾燥させて粉砕する方法などが、実施されています。アメリカのワシントン州では、今年5月に「人間の遺体を堆肥にして葬る」ことが認められます。世界は、SDGsの観点から、葬送方法においても、大きく動き始めています。
多様性を尊重する時代です。葬送方法も、ライフスタイルの一つです。葬送方法の選択の自由も、大切な権利です。
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周防正行(すお・まさゆき)監督の新作。サイレント映画時代を舞台に、活動弁士になることを夢見る青年・俊太郎を主人公にしたコメディ映画です。
欧米のサイレント映画は映画の中に書き込まれたセリフ、背景解説のショットと伴奏音楽によって上映されていました。日本では観客が外国語の文字を理解できないので、上映する際には口頭で説明する活動弁士が導入されました。日本の話芸文化を生かした独自の文化が形成されました。映像を使ったライブショーでした。
俊太郎役は、映画初主演の成田凌(なりた・りょう)。注目していなかった俳優ですが、活動弁士の滑らかな話しぶりに驚きました。俊太郎の幼なじみ役梅子を演じた黒島結菜(くろしま・ゆいな)も魅力的です。
俊太郎は、映画館・?木館で雑用役として働き始めますが、さまざまな騒動に巻き込まれます。短いフイルムをつなぎ合わせて、独自の作品にしてしまうなど、物語はすごく面白いのですが、ドタバタ劇のテンポが悪くて、間延びした感じが少し残念でした。しかし、楽しい時間を過ごすことができました。
山田洋次監督「男はつらいよ」の最新作「男はつらいよ50 お帰り 寅さん」が、第1作誕生から50周年となる2019年、年末ぎりぎりの12月27日に封切りとなりました。
1997年の「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇」以来、22年ぶりに製作されました。2019年のうちに劇場で見ることができました。新しい物語であるとともに、過去の作品のコラージュでもあるという見事な仕上がりです。
車寅次郎の甥・満男を吉岡秀隆が演じました。サラリーマンから小説家に転じた満男は、最新作のサイン会で偶然来日していた初恋の人イズミと再会します。満男はイズミを寅次郎の恋人だったリリーが経営する喫茶店に連れていきます。導入部分は、窮屈な作り物という感じがしていましたが、満男がイズミと再会した場面からは、どんどん面白くなっていきました。
物語の展開に合わせて、寅次郎と家族が演じた印象的な場面が、次々と登場します。特にメロンのシーンでは、爆笑してしまいました。寅次郎の魅力が全開になっています。そして最後には、歴代マドンナたちが、花を添えます。山田洋次監督の職人芸が楽しめます。
私が2019年に劇場で見た作品から選びました。たくさんの名作を見逃していると思いますが、ご了承ください。
邦画ベスト5 、こんなに迷ったのは、久しぶりです。
5位「僕はイエス様が嫌い」は、奥山大史(おくやま・ひろし)監督が、脚本、撮影、編集も手がけました。大学の卒業制作で、初の長編作品です。第66回サンセバスチャン国際映画祭の最優秀新人監督賞を、22歳の史上最年少で獲得し、注目されました。得体の知れなさが魅力です。
同じく5位は、長久允(ながひさ・まこと)監督「WE ARE LITTLE ZOMBIES」。突然両親を亡くして感情を失った4人の子どもたちが火葬場で出会い、音楽を通して成長し心を取り戻していく物語です。RPGゲームのような表現や構成を基本に、深刻なテーマを軽やかに、色彩豊かに描いています。
4位「21世紀の女の子」
山戸結希(やまと・ゆうき)監督が、企画・プロデュースを手がけ、自身を含む1980年代後半〜90年代生まれの女性映画監督15人がメガホンをとった短編オムニバス映画です。映画のポスターは可愛らしいですが、作品自体は衝撃的な内容が多いです。
「自分自身のセクシャリティあるいはジェンダーがゆらいだ瞬間が映っていること」を共通のテーマに、各監督が1編8分以内の短編として制作しました。既存の「女の子」の狭いイメージを壊しつつ、「女の子」の多面性を肯定する試みです。
ラストに置かれた山戸結希監督の「離ればなれの花々へ」は、大きな広がりを持つ「女の子」の肯定であるとともに、映画という表現への揺るぎない信頼を感じました。
3位「アルキメデスの大戦」
戦艦大和の建造をめぐる歴史を描いた三田紀房のコミックを、山崎貴監督が実写映画化しました。史実に添いながら、天才数学者という架空の人物が主人公です。映画は原作をかなり改変して大胆にまとめています。
天才数学者・櫂直(かい・ただし)を演じた菅田将暉(すだ・まさき)のうまさ、才能に感心しました。特に膨大な数式を書きながら、早口で主張する場面は、圧巻です。戦艦「大和」の設計を担当した平山忠道(ひらやま・ただみち)を演じた田中泯が、強烈です。最後に凄みのある演技を見せます。
見応えのある群像劇ですが、映画の冒頭、戦艦・大和が沈没する迫力のあるシーンが描かれます。山崎監督ならではの重厚なCG映像です。CGをうまく生かした独創的なアングルは、タイタニックやダンケルクを連想させます。大和の沈没を、映画の最後ではなく、最初に持ってきた山崎監督の判断は、間違っていなかったと思います。
2位「キングダム」
コミック「キングダム」の劇場版実写化のニュースを聞いたときに、あの壮大なスケールの群像劇が、はたして日本映画の実写化に耐えられるのかと、正直不安でした。しかし、その不安は、すぐに感動と興奮に変わりました。俳優たちの熱演と大規模な中国ロケが生かされた画期的な傑作です。佐藤信介(さとう・しんすけ)監督。
主人公・信を演じた山?賢人の迫力には驚きました。間違いなく代表作になるでしょう。吉沢亮は、奴隷の漂と秦の王「えい政」の二役をみごとに演じ分けています。えい政の気品、冷静さと熱い思いに、ほれぼれしました。
楊端和を演じた長澤まさみのアクションが、あまりにもかっこよいです。クールな美しさがありました。王騎を演じた大沢たかおは、さすがの存在感でした。
1位「蜜蜂と遠雷」
原作小説の「蜜蜂と遠雷」が、天才的なピアニストたちを描いた小説だけに、実写映画化が、とてつもなく困難だということは、すぐにわかります。あえて、それに挑戦した石川慶監督は、脚本も手がけています。
競い合う4人のピアニストを中心に物語は、進みます。俳優たちの熱意が伝わって来ます。実際の演奏は、世界的に活躍しているプロのビアニストが弾いています。素晴らしいです。
1977年生まれの若い監督ですが、周到で大胆な演出が見事でした。信じがたいほどのリアルさを兼ね備え、音楽に包まれた濃密な時間を過ごせました。そして、映画は、感動とともに風のようにさわやかに終わりました。
私が2019年に劇場で見た作品から選びました。たくさんの名作を見逃していると思いますが、ご了承ください。
★5位「サスペリア」
ルカ・グァダニーノ監督の「サスペリア」は、賛否が分かれる作品です。
イタリアンホラー映画の金字塔、1977年制作のダリオ・アルジェント監督の「サスペリア」とは雰囲気が全く違います。リメークではなく、脱構築です。しかし痛いほどストレートな表現は、元祖「サスペリア」とは別な意味でトラウマになる映画です。女優ティルダ・スウィントンが複数の役をこなし、世代も性別も超えた対照的な役を演じ分けました。
★4位「ジョアン・ジルベルトを探して」
「イパネマの娘」などで世界的に有名な「ボサノヴァの神様」と呼ばれているブラジルのミュージシャン、ジョアン・ジルベルトの行方を追った音楽ドキュメンタリー映画です。ジョルジュ・ガショ監督です。
ドイツ人ジャーナリストのマーク・フィッシャーは、公けの場から姿を消したジルベルトに会うためにリオ・デ・ジャネイロを訪れ、探しますが、本人に会うことはできませんでした。その旅を記録した本が出版される1週間前、フィッシャーは自殺します。
偶然この本を手にしたジョルジュ・ガショ監督は、フィッシャーの旅と本の内容に心をうごかされます。フランス生まれのガショ監督もブラジル音楽を愛していました。フィッシャーの夢を実現させるため、監督は、ブラジル中を歩き、ジルベルトゆかりの人や土地を訪ねます。ジョアン・ジルベルトに会いたいという熱い想いを秘めながらも、洗練されたボサノヴァに乗って流れる映像は、とてもエレガントです。
そして、監督は、ついにジョアン・ジルベルトへと近づきます。映画の製作は、2018年。ジョアン・ジルベルトは、2019年7月6日に、88歳で亡くなっています。
★3位「天国でまた会おう」
原作は、エール・ルメートルが2012年に発表した小説。第1次世界大戦後のフランスが舞台です。政府の尋問を受ける元フランス軍の兵士アルベール・マイヤールの回想という形を取って物語は進みます。アルベール役は、アルベール・デュポンテル監督が務めています。
故意に戦争を長引かせようとする上官の悪事を知ったアルベールは、上官に生き埋めにされます。彼を救い出したエドゥアールは、直後に爆撃を受け、顔の下半分を失います。エドゥアールは家に戻りたくないと戦死したことにして、アルベールと暮らし始めます。
権力者が戦争で肥え太り、帰還兵や傷病兵は戦争後も苦しみ続ける。ストレートな戦争批判が根底にあります。しかし戦争の欺瞞性を鋭く問いながら、魔術的といってよい映像美も備えています。単純なハッピーエンドではない、それでいて明るさもある結末が、余韻を残します。
★2位「レディ・マエストロ」
マリア・ペーテルス監督は、オランダでは有名ですが、日本では作品が初公開です。女性指揮者の先駆者アントニア・ブリコの半生を描いたドラマ。女性が指揮者になることが不可能とされていた時代に、ブリコは夢を実現します。波乱万丈の人生に、さらに独自の脚色が加わり、実話とは思えない面白さです。
アントニア・ブリコの激しい情熱がベースにあるものの、逆境の時に助けてくれる人々の存在なしに、彼女の夢は実現しませんでした。彼女の熱い想いが、幸運を引き寄せたとも言えます。
映像に艶があり、ストーリーも緩急が巧みで飽きさせません。アントニア・ブリコをさりげなくさえ続けたロビンの魅力的な生き方に感動します。計算された演出による数々の伏線の回収は見事です。こんなところまで伏線だったとは、という驚きの連続でした。
★1位「ROMA ローマ」
「ROMA ローマ」は、アルフォンソ・キュアロン監督が、1970年代のメキシコを舞台に、中産階級の家庭の1年を、若い家政婦の視点から描いたNetflixのオリジナル作品です。
キュアロン監督は、脚本・撮影も手がけ、監督自身の幼少期の体験をもとに、家族のドラマを全編モノクロ映像で描きました。撮影監督・エマニュエル・ルベツキが参加できなかったので、監督が撮影監督も兼ねています。「天国の口、終りの楽園」以来、17年ぶりにメキシコで制作・撮影しました。
主人公のクレオは、住み込みの家政婦として働いています。クレオは、先住民の血を引いています。中産階級の夫婦と彼らの4人の子供、祖母、同じく家政婦のアデラと暮らしています。掃除、料理、子供の送り迎えなどの日常が、ゆっくりと描かれていきます。そして「痛いほど美しい」シーンが、何度も登場します。
淡々とした日々に、さまざまな出来事、事件が起こります。1970年代のメキシコが舞台なので、警官隊が学生を虐殺する場面などが登場します。それが、日常の中で突然起こる点が、異様にリアルです。クレオは、最後に家族と強いきずなで結ばれます。自らも移民であるキュアロン監督が、静かにデリケートに移民問題を提起した作品です。
桑原裕子が主宰する「劇団KAKUTA」が、東日本大震災をきっかけに2011年に初演した舞台を、白石和彌監督が映画化しました。
タクシー会社を営む稲村家の母こはるは、3人の子供達に暴力を振るい続ける夫を殺します。運命を大きく狂わされた3人の兄妹は、傷を隠しながら人生を歩みます。15年の歳月が流れ、3人のもとに母こはるが帰ってきます。
陰影に満ちた見事な配役。俳優たちは、競って演技の高みへと登っていきます。群像劇が、魅力的に輝いています。田中裕子の演技には、いつも驚かされます。底なしの存在感は貴重です。
松岡茉優は、「蜜蜂と遠雷」での演技も素晴らしかったですが、今回の微妙な立ち位置での柔軟な役のうまさには、名俳優にふさわしい確かな才能を感じました。この若さで、ここまで全体をまとめ上げる力があるとは。感嘆しました。
白石監督にしては、突き抜け感が弱いという評価もあるかもしれませんが、家族という関係の不思議さ、絶望と希望の絶妙なバランスは、一つの成果だと思います。
1980年公開のホラー映画の金字塔、スタンリー・キューブリック監督「シャイニング」の続編ということで注目された「ドクター・スリープ」を観て来ました。主演はユアン・マクレガーです。
1968年公開のSF映画の金字塔、スタンリー・キューブリック監督「2001年宇宙の旅」の続編「2010年」を 1985年に観た時と似たような感覚に襲われました。悪い作品ではないけれど、何かが違います。納得できません。
続編は、「シャイニング」の惨劇から40年後。物語は、超能力を持つ子どもの生気を吸い取って生きる集団と主人公のダンとの戦いが描かれます。終盤に入り、戦いの舞台は、惨劇のホテルに移り、「シャイニング」の印象的な場面が登場します。
マイク・フラナガン監督は、キングの原作に忠実でありつつ、キューブリックの映画と調和させるという離れ業に挑みます。表面的には狙いは満たされたように見えますが、ギクシャクして、納得できない内容になりました。原作者のスティーブン・キングが絶賛していることが信じられません。
フランスに実在する建築物で、ひとりの郵便配達員の男が33年の歳月をかけ、1人で完成させた宮殿「シュバルの理想宮」の実話が映画化されました。周りの中傷に耐え、信念を貫いたシュヴァルは、私に最も希望を与えてくれた人です。
シュヴァルが、建造を始めるきっかけになった運命の石につまずく前の30分の物語が好きです。郵便配達員であるため、毎日30キロ歩き、様々な自然と触れ合い、たくさんの絵葉書を見て海外の建築物を知りました。
宮殿建造では自然から学び、世界中の文化を取り入れています。子どもの遊び場として構想された宮殿は、世界の文化の融合という高い目的を持つようになったと思います。
撮影は、建造途中の場面を含め、実際のシュヴァルの理想宮で行われました。うっすらと雪が積もった宮殿、無数の蝋燭が灯された宮殿の場面は、夢のように美しかったです。幸せな気持ちになりました。
映画では触れられていませんでしたが、建造には相当のお金がかかっています。今では、VRの立体空間の中で庭園や宮殿を作ることができます。実際の敷地や建造の材料が入りません。SDGs(エズ・ディー・ジーズ)なアートが可能です。私もVR空間の広大な敷地で巨大な彫刻物を作り続けています。
ドキュメンタリー「i-新聞記者ドキュメント-」。記者会見での菅義偉内閣官房長官への鋭い質問で知られる東京新聞の望月衣塑子(もちづき・いそこ)記者の姿を追っています。しかし、このドキュメンタリーの狙いは、菅官房長官対望月記者ではないでしょう。
森達也監督が映画の中で語る「記者として当たり前のことをしているのに、なぜ注目されるのか」ということが、この作品のポイントだと思います。
記者クラブ、記者会という閉鎖的な制度によって、権力の監視役であるはずのマスコミが、権力に利用され事実を伝えなくなっているという現実です。
このことは、福島の原発事故の報道で、誰の目にも明らかになりました。記者会見のライブ映像がインターネットで公開されたからです。各紙が足並みをそろえている新聞記事の内容と、実際の記者会見の内容が大きく異なっていました。
そういった現状に果敢に挑戦し続ける望月記者。カメラは、彼女の行動を追い続けます。しかし、ハッとするような場面は登場しません。望月記者は、終始前向きで、カメラの前で弱さを見せることはありませんでした。
森達也監督は、これまで、社会とは別の視点を提供する作品を制作してきました。だから、心を揺さぶられる場面に出会えました。しかし、今回の作品での望月記者の像は変わりません。よく知っている姿が映し出されているだけです。驚きはありませんでした。
音楽やナレーションに頼ることなく、記録された映像の力だけで、別の見方を提示してきた森監督のドキュメンタリーとしては、やや物足りなかったです。菅(すが)官房長官と望月記者が戦うアニメの挿入も、作品を薄っぺらいものにしています。残念です。
「イパネマの娘」などで世界的に有名な「ボサノヴァの神様」と呼ばれているブラジルのミュージシャン、ジョアン・ジルベルトの行方を追った音楽ドキュメンタリー映画です。2018年製作。スイス・ドイツ・フランス合作。ジョルジュ・ガショ監督です。
ジョアン・ジルベルトは、2008年8月にリオ・デ・ジャネイロでコンサートに出演した後、公けの場に姿を現すことは、ありませんでした。10年後、ドイツ人ジャーナリストのマーク・フィッシャーは、ジルベルトに会うためにリオ・デ・ジャネイロを訪れ、探しますが、本人に会うことはできませんでした。その旅を記録した本「オバララ ジョアン・ジルベルトを探して」が出版される1週間前、フィッシャーは自殺します。
偶然この本を手にしたジョルジュ・ガショ監督は、マーク・フィッシャーの旅と本の内容に心をうごかされます。フランス生まれのガショ監督もブラジル音楽を愛していました。フィッシャーの夢を実現させるため、監督は、ブラジル中を歩き、ジルベルトゆかりの人や土地を訪ねます。
マーク・フィッシャーの旅をなぞり、地元の風景とともに彼の本の一節が紹介されます。多くの人たちが登場しジョアン・ジルベルトについて話します。ジョアン・ジルベルトに会いたいという熱い想いを秘めながらも、洗練されたボサノヴァに乗って流れる映像は、とてもエレガントです。
ジョアン・ジルベルトが一日中こもってボサノヴァを生み出したとされる、バスルームが見つかりますが、その一見地味で、こじんまりとした佇まいが、ボサノヴァにふさわしいと感じました。
そして、監督は、ついにジョアン・ジルベルトへと近づきます。映画の製作は、2018年。ジョアン・ジルベルトは、2019年7月6日に、88歳で亡くなっています。
ピアニストたちの群像劇です。構想12年、取材11年、執筆7年という、長い時間をかけた渾身の大作です。
天才的なピアニストたちを描いた小説だけに、実写映画化が、とてつもなく困難だということは、すぐにわかります。あえて、それに挑戦した石川慶監督は、脚本も手がけています。
石川監督は、東北大学で物理を学んだ後、映画監督を志し、ポーランドの国立大学、ウッチ映画大学に留学して学びました。短編映画などの制作でキャリアを積み、日本で映画を作りたいと帰国。ドキュメンタリーやCMなどを手掛けてきました。日本とポーランドの合作企画『BABY』ではプチョン国際ファンタスティック映画祭の企画マーケットでグランプリを受賞しています。2017年に「愚行録」で長編映画デビューを果たしました。
1977年生まれの若い監督ですが、周到で大胆な演出が見事でした。信じがたいほどのリアルさを兼ね備え、音楽に包まれた濃密な時間を過ごせます。そして、映画は、感動とともに風のようにさわやかに終わりました。
ピアニストで競い合う4人のピアニストを中心に物語は、進みます。
母親の死をきっかけに表舞台を去り今回のコンクールで再起をかける、かつての天才少女・栄伝亜夜を、松岡茉優が演じています。
森崎ウィンは、才能を認められた天才で、コンクールの優勝候補のマサル・カルロス・レヴィ・アナトール役。
年齢制限のため「これが最後」と覚悟を決めコンクールに出場した楽器店勤務のサラリーマン高島明石は、生活に根付いた音楽を目指しています。演じたのは、松坂桃李。
天真爛漫な野生的演奏で、ピアノの大家のホフマンに見いだされ、推薦状をもらっている風間塵役は、2019年から俳優として活躍し始めた新人の鈴鹿央士です。
4人とも、それぞれの個性を十分に表現していました。
実際の演奏は、世界的に活躍しているプロのビアニストが弾いています。素晴らしいです。
原作の中に登場する架空の曲「春と修羅」は、藤倉大が、原作に合わせて作曲しています。即興部分のカデンツァでは、4人の個性が見事に表現されています。
オランダ映画。マリア・ペーテルス監督。マリア・ペーテルス監督は、オランダでは有名ですが、日本では作品が初公開です。
女性指揮者の先駆者アントニア・ブリコの半生を描いたドラマです。女性が指揮者になることが不可能とされていた時代に、ブリコは夢を実現します。波乱万丈の人生に、さらに独自の脚色が加わり、実話とは思えない面白さです。
幼い頃、アントニアは、オルガン奏者だったシュヴァイツァーの曲に影響されて音楽の魅力に目覚めます。
1926年、ニューヨーク。オランダから移民したアントニアは、将来指揮者になると心に決めています。オーケストラホールの仕事をやめさせられて困っていたアントニアは、ロビンに拾われ、ナイトクラブでピアノを弾き始めます。稼いだ学費で音楽学校に通い始めますが、セクハラに遭い、退学を余儀なくされます。
彼女はベルリンに向かい、女性に指揮を教えてくれる指揮者と巡り合いレッスンに没頭します。そして1930年、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の指揮者としてデビューします。映画は、ここで終わらずに、ニューヨークで凱旋コンサートを開きます。この場面がとてもスリリングです。
アントニア・ブリコの激しい情熱がベースにあるものの、逆境の時に助けてくれる人々の存在なしに、彼女の夢は実現しませんでした。彼女の熱い想いが、幸運を引き寄せたとも言えます。
映像に艶があり、ストーリーも緩急が巧みで飽きさせません。アントニア・ブリコをさりげなくさえ続けたロビンの魅力的な生き方に感動します。
計算された演出による数々の伏線の回収は見事です。こんなところまで伏線だったとは、という驚きの連続でした。
エンドロールで、2017年のデータでは、トップ50人の指揮者の中にひとりも女性がいないと表示されていました。アントニア・ブリコも指揮者としては認められたものの首席指揮者になったことはありません。
しかし、ここ1、2年で指揮の世界に、女性の参入が進んでいます。今年9月には若手指揮者の登竜門として知られるフランス・ブザンソン国際指揮者コンクールで、青森出身の沖澤のどかさんが優勝しました。32歳です。2021年のドイツ・バイロイト音楽祭では、新演出作品を女性指揮者が担当します。時代は、大きく変わりつつあるのかもしれません。
道化師のメイクで、人々を恐怖に陥れるジョーカーは、どうして誕生したのか。「バットマン」の悪役ジョーカーの誕生秘話を、コミックスにはない映画オリジナルのストーリーで描いています。ホアキン・フェニックスの主演、トッド・フィリップス監督です。
第79回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門で、ディーシー コミックスの映画化作品では史上初めて最高賞の金獅子賞を受賞しました。
アーサーは、「どんな時でも笑顔で人々を楽しませなさい」という母の言葉を大切にし、大道芸人として生きようとしています。しかし、自分の笑いを抑えられない障害を持っています。差別され、だまされる中で、悪へと変貌していきます。
なかなか評判が高い作品ですが、私は評価しません。「ジョーカー」は、格差社会を批判する抗議活動と懸命に生きている障害者、そしてこれまでのジョーカー自身を侮辱する、娯楽作です。人間を描いているように見せて、底の浅い解釈を押し付けているだけです。
ジョーカーの魅力は、2008年公開の「ダークナイト」で、鮮明に描かれていました。偽善的な人間社会の本質を暴くことがジョーカーの行動原理です。自分の恨みを晴らすためというような狭い動機ではありません。だからこそ、バットマンを上回る存在感を放っているのです。
そんなジョーカーを、馬鹿にされ騙されてキレた連続殺人者犯という分かりやすい存在をして描いた映画が「ジョーカー」です。格差社会に抗議する人たちが安易にジョーカーを英雄扱いするのも、抗議活動を馬鹿にしています。
しかも最後は、すべては入院しているアーサーの妄想というオチで、責任を回避しようとさえしています。
蜷川実花(にながわ・みか)監督の映画「人間失格 太宰治と3人の女たち」。太宰治の小説「人間失格」を映画化したのではなく、太宰治自身の晩年を描いています。どちらかというと女性主導の物語です。
「さくらん」(2007年)、「ヘルタースケルター」(2012年)に比べると、ややおとなしくなっているものの、鮮やかで耽美的な実花ワールドは健在です。その大胆な色彩の演出を、大いに楽しみました。
太宰治役の小栗旬は、太宰治の色気を巧みに演じていました。沢尻エリカ、二階堂ふみ、宮沢りえの3人も熱演しています。二階堂ふみの大胆な演技には驚きました。
]]>長井龍雪(ながい ・たつゆき)監督、脚本家・岡田麿里(おかだ・まり)、キャラクターデザイナの田中将賀(たなか・まさよし)で結成したアニメ制作チーム「超平和バスターズ」によるオリジナルアニメです。「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」「心が叫びたがってるんだ。」につづく三部作の最後の作品です。前2作とともに埼玉県秩父市が舞台です。見事な脚本でした。
両親を事故で亡くした姉あかねと妹あおいは、秩父で暮らしています。13年前、金室慎之介はミュージシャンになるために上京します。あおいを心配するあかねは恋人の金室慎之介と上京することを諦めています。慎之介は、大物歌手のバックバンドのメンバーとして秩父にやってきますが、突然あおいの前に、13年前の慎之介が時を超えて現れます。あおいも、慎之介が好きでしたが、姉に負い目を感じてもいます。
声優初挑戦の吉沢亮が、18歳と31歳の慎之介を演じ分けていました。驚くほどうまかったです。
「空の青さを知る人よ」という題は、有名な「井の中の蛙大海を知らず、されど空の青さを知る」からとられています。あおいのために、秩父に残ったあかねが卒業文集に書いた言葉です。派手さはありませんが、見終わった後に余韻が広がる作品です。
伊藤智彦(いとう・ともひこ)監督、制作は3DCGが得意なグラフィニカです。舞台は2027年の古都・京都です。内気な男子高校生・堅書直実(かたがき・なおみ)の前に、10年後の自分だという人物・ナオミが現れます。そして、彼と恋人になる女子高生1年生の一行瑠璃 (いちぎょう・るり)が事故で死ぬ未来を変えてほしいと頼みます。
直実の認識している世界は現実ではなく、歴史の保存を目的としたアルタラと呼ばれるシミュレーターの中に仮想世界であることが明らかにされます。京都の世界は、人も含め完全にコピーされ続けているという設定です。実際に現実化しつつあるミラーワールドを先取りしたような近未来SFです。
自動運転のため高速道路などで始まっているミラーワールド化は、限られたデータによるリアルタイムの仕組みですが、「HELLO WORLD」の世界はパラレルワールドのように膨大なデータを必要とする精密なものという設定です。2027年では、結構無理があります。
脚本は、小説家の野崎まど。TVアニメ「正解するカド」同様、面白い設定ながら、展開にあざとさを感じます。今回も、畳みかけるようなどんでん返しの連続がうまく生かされていません。
肝心の仮想世界を表現するCGは、予算の関係かもしれませんが、手抜き感があり、古さがぬぐえません。作品を、平板なものにしています。
伊藤智彦監督は、「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」という傑作を生み出していますが、今回はビジュアル、ストーリーの両面で、やや疑問が残りました。
フィンランドのドメ・カルコスキが監督し、トールキンの波乱に満ちた半生を描いています。トールキンと作品への敬愛に満ち、当時のイギリスの雰囲気も丁寧に再現しています。FOXサーチライト設立25周年記念作品の第1弾です。
トールキンは3歳で父親を失くし、イギリスの田園で母と弟と暮らしています。しかし12歳で母親が急死し、孤児になります。母親の友人で後見人だったモーガン神父によって、名門キング・エドワード校に入学します。
エドワード校でトールキンは3人の仲間と出会います。理想に燃えて「芸術で世界を変えよう」と誓い合いますが、第1世界大戦がトールキンと仲間の運命を大きく変えてしまいます。学生時代の熱い友情、第一次世界大戦の悲惨が、胸に迫ります。戦場の場面では、トールキンの作品が幻想的に再現されています。
若きトールキンが、架空言語の創造に熱心だったことが随所に描かれます。戦争から生還したトールキンは、大学で教鞭をとりつつ、地道に神話を研究し続けます。
最初は自分の子供たちを喜ばせるために物語をつくりますが、その作品は大人を含め幅広い読者を得ていきます。若い時に仲間と約束した「芸術で世界を変える」という目標を実行したと言えます。
作品の公開を前に、トールキンの遺族と遺産管理団体であるトールキン財団は「この映画は、我々の許可を得ることなく作られたものであり、我々は製作に一切関与していないということを、明確にしておきたい。よって我々一同、本作とその内容を支持しない」という声明を発表しました。
トールキンの遺族が映画化を批判し、不支持を表明したと報道されましたが、声明のニュアンスは「映画で描かれているトールキンのエピソードを事実として支持しない」という、関与を否定するものでしょう。この作品がトールキンへの敬愛に満ちていることを否定することはできません。
人口の2%しか電気が使えないアフリカのマラウイで、少年が風車を使った自家発電に成功した実話をもとにした映画です。
俳優のキウェテル・イジョフォーがメガホンをとり、映画監督デビューを果たしました。撮影はマラウイ現地で行われました。
原作を読んだイジョフォー監督は、意志の強さで困難を乗り越えていく主人公に感動し、9年をかけて脚本を執筆しました。主人公の少年ウィリアムの父親トライウェル役でも出演しています。極限状態の下、息子を信じた父の姿を熱演しています。
2001年、マラウイを大干ばつが襲います。ラジオで流れる「911のニュース速報」が、当時を思い出させます。14歳のウィリアムは、貧困で学費を払えず学校を強制退学になってしまいます。しかし、図書館で出合った本をきっかけに、独学で発電のできる風車を作って畑に水を引くことを思いつきます。
たしかに感動的な物語です。雨ごいで雨を降らせるのが普通だった村で、意志を貫く少年。最初は反対していましたが、最後に息子に希望を託す柔軟さを見せた父親。風車に勇気づけていく村の人々。
ただ、試行錯誤を繰り返しながら風力発電機をつくっていく姿を、もっと丁寧に描くべきでした。あまりにもあっさりと発電機が完成してしまうのは事実に反します。底の浅い美談になってしまいます。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」は、クエンティン・タランティーノ監督の9作目となる長編です。161分。最近のタランティーノ作品は、160分以上あります。レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットが初共演しています。ディカプリオが落ち目の俳優、ピットがそのスタントマン役です。
タランティーの映画は、「レザボア・ドッグス」から「デス・プルーフ in グラインドハウス」までは、どこかキワモノの雰囲気が強い作品だったのですが、「イングロリアス・バスターズ」以降は、重厚なテーマと余韻の残る巧みなストーリー展開が強く印象に残っています。
「ジャンゴ 繋がれざる者」「ヘイトフル・エイト」は、異色の西部劇と呼べそうな傑作です。そして、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」も西部劇のスターとスタントマンを主人公にした作品です。
1969年というハリウッドが曲がり角を迎えた時代をえがいています。細部まで当時の様子を再現するこだわりは、さすがタランティーノ監督です。
神経質で涙もろい俳優リック・ダルトンと、貧しくても毅然としているスタントマンのクリフ・ブースは、堅い友情で結ばれています。対照的な二人の演技が見ものです。
8歳の子役としてスクリーンデビューしたジュリア・バターズの大人びた演技が素晴らしいです。自信をなくして涙ぐむ、落ち込んだリック・ダルトンを慰めたり、ダルトンの演技を褒めるシーンの演技力は、目を見張るものがあります。
ダルトンの邸宅の隣に引っ越してきたのは、なんとポランスキー監督と妻のシャロン・テートです。1969年8月9日のシャロン・テート殺害事件がすぐに思い出されます。ただ、この事件を知らないで映画を観ると、印象が全く違ってしまいます。
ラストシーンには驚きます。あまり起伏のないストーリーは、ラスト15分のためにあったと痛感するはずです。
そして、エンドクレジットとともに流れる、リック・ダルトンのたばこのCM撮影の場面には笑いました。見ないと損です。
藤井道人監督の映画「新聞記者」は、望月衣塑子記者のノンフィクション小説「新聞記者」を原案にした、オリジナルの作品です。
東都新聞の吉岡記者は、日本人の父と韓国人の母のもと、アメリカで育ち、ジャーナリストとして強い思いを持って日本の新聞社で働いています。ある日、新聞社に大学新設計画に関する極秘情報が匿名のFAXで届きます。吉岡記者は、真相を究明するため、取材をはじめます。
一方、内閣情報調査室ではたらく杉原は、ソーシャルメディアで政権に都合の良いように世論を操作したり、政権を批判する人物のスキャンダルを新聞社にリークしたりする調査室の仕事に疑問を持ち始めています。
妻の出産が迫ったある日、杉原は、尊敬するかつての上司・神崎から電話を受け、再会します。しかし、数日後、神崎はビルの屋上から身を投げて自殺してしまいます。
大学新設計画をめぐって3人はつながり、衝撃の事実が明らかになります。果敢に政治の闇に切り込んだ姿勢は評価しますが、最後に情緒に流される展開は疑問に思いました。
11月に、望月衣塑子記者の姿を通して報道の問題に迫る森達也監督のドキュメンタリー作品が公開されます。ジャーナリズムの機能不全、同調圧力や忖度の問題に迫るのなら、やはりドキュメンタリーがふさわしいと思います。
三谷幸喜監督の長編映画8作目です。
史上最低の支持率になっていた総理大臣が、演説中に市民から投げられた石が頭にあたり記憶をなくしてしまいます。しかし、しがらみから解放されたことで、悪徳政治家から善良なおじさんに変わります。政治の場で登場する都合の良い言葉「記憶にございません」を、逆手に取った設定は見事です。
最初に出たクレジットがいいです。この作品はフィクションであり、「実在の人物と似ていても、たまたまです」というクレジットで、早くも笑ってしまいました。前半には、不必要なすべるギャグが多く、少し心配しましたが、徐々に物語の中に引き込まれました。
なにもかも忘れてしまい、周りに振り回される黒田総理大臣を中井貴一が、軽妙に演じています。終始、困った顔が印象に残ります。俳優としての安定感、うまさに磨きがかかっています。
黒田総理大臣は、夢と理想を取り戻し、政治を変えようと捨て身の行動に出ます。合わせて家族の再生も描かれます。
底抜けの楽天性を貫いていますが、そこには家族や政治に対する屈折した皮肉がこめられているのでしょう。
政治コメディとしては、軽すぎるという印象が残るものの、あまりムキにならずに楽しんだ方がいいです。
東宝のホームページをみると、一般公開を前にした8月11日、安倍首相に「記憶にございません!」を観てもらい、上映後に三谷監督と対談した様子が公開されています。
まず三谷幸喜監督が「どうもありがとうございます」と話し、安倍首相が「楽しく拝見しました」と感想を述べます。三谷監督は「ムッとはしなかったですか?」と直球の質問をします。安倍首相は「いえ、一瞬しましたけれど」と本音を明かします。 三谷監督が、「とりあえず、おうかがいをしたいのですが、感想は? 」と畳みかけ、安倍首相は「記憶にございません!」とかわしています。
映画を観た後、この対談を読むと、映画の余韻が変わるかもしれません。
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ガブリエレ・ムッチーノ監督作品。2018年イタリア本国で最高の話題作となり150万人を動員しました。イタリアの大家族をテーマにしています。サルーテは、乾杯の意味です。ただし、原題は、「家ではみんな良い感じ」という、なんとも皮肉な題名です。
イスキア島に暮らすピエトロとアルバ夫妻の結婚50周年を祝うために、親戚19人が集まります。教会で金婚式を挙げ、自宅の屋敷でパーティを開きます。再会したファミリーの楽しい宴会が終わりますが、天候不良でフェリーが突然欠航してしまいます。そして、島に足止めされた家族の、それぞれが抱えている秘密が、次第に明らかになっていきます。
イスキア島は、アラン・ドロン主演の「太陽がいっぱい」など多くの名作が撮影された場所です。予告編では、コメディが強調されていますが、コメディというよりは、悩みを抱えた人たちのかなり深刻な人間ドラマです。
複雑な人間関係に悩む人々の姿が描かれます。その中で、認知症が進みつつある男性の存在が、別な角度から家族のあり方についての、問いを投げかけます。
イタリアは家族の結びつきが強いといわれていますが、家族のいさかいが最高潮に達した時、一家の長であるピエトロは「俺は孤児だ!家族はむかつくんだ!」は叫びます。イタリアの大家族主義という紋切り型のイメージを揺さぶる見事な場面でしたが、もう少し効果的に演出してもらいたかったと思います。それが、少し残念でした。
ガブリエレ・ムッチーノ監督は「本作は私がこれまで成し遂げてきたものの集大成といえるかもしれない」と話しています。確かに多面的な映画でした。
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19世紀末のオーストリア・ウィーンを代表する画家グスタフ・クリムトとエゴン・シーレの没後100年にあわせて2018年に製作されました。テレビのドキュメンタリー番組を手がけてきたミシェル・マリー監督の映画初監督作品です。
クリムトとクリムトを師と仰ぎ支援されたエゴン・シーレは、それまでの絵画とは異なる斬新な作品を生み出します。しかし、二人は、2018年のスペイン風邪の流行で、相次いで死んでしまいました。
クリムトの絵画はたくさんの金箔を使い、官能的ですが、死の香りが充満しています。シーレの絵画は歪んだ身体にエロスとタナトスが漂っています。映画の中では触れられていませんでしたが、シーレの画風はゴッホやムンクの影響を受けています。
19世紀末から20世紀初頭にかけては、精神医学者ジークムント・フロイトの精神分析が注目され、無意識に関心が集まりました。クリムトとシーレの作風も、そうした時代の雰囲気が大きく影響しています。その流れは、現代にもつながっています。
著名な芸術家や歴史家たちが、次々に作品の魅力を解説します。アルベルティーナ美術館、オーストリア絵画館、美術史美術館、分離派会館、レオポルド美術館、ウィーン博物館などの絵画が、矢継ぎ早に紹介されます。
ゆったりと大画面で作品を見せていくというスタイルではなく、たえず関心をひきながら慌ただしく進んでいきます。テレビの美術番組のようでした。ただ、新しく知った事実が多く、クリムトやシーレの作品の細部を大写しで鑑賞できたので、満足しています。
]]>「アルキメデスの大戦」は、戦艦大和の建造をめぐる歴史を描いた三田紀房のコミックを、山崎貴監督が実写映画化しました。史実に添いながら、天才数学者という架空の人物が主人公です。原作はまだ連載中ですが、映画は原作をかなり改変して大胆にまとめています。
日本と欧米の対立が激化する1933年、日本帝国海軍上層部は巨大戦艦・大和の建造計画の実現を目指しますが、海軍少将・山本五十六は、建造計画の裏に隠された不正を暴き、計画を阻止するために、天才数学者・櫂直を海軍に招き入れます。
建造費を不正に安く積算して計画を実現しようとする海軍。現在の日本でも蔓延している不正です。この作品は、現在の日本の政治の様々な腐敗を見事にあぶり出します。その意味では、とてもタイムリーな作品です。
天才数学者・櫂直を演じた菅田将暉のうまさ、才能に感心しました。特に膨大な数式を書きながら、早口で主張する場面は、圧巻です。
山本五十六役の舘ひろしをはじめ、登場人物は、皆好演していましたが、中でも戦艦「大和」の設計を担当した平山忠道を演じた田中泯が、すごいです。
田中泯は、天才的な舞踏家の土方巽を師と仰ぐ、世界的な前衛舞踏家です。2002年、山田洋次監督の映画「たそがれ清平衛」に初めて出演して以来、俳優としても活躍し、その深みのある存在感が強烈な印象を残してきました。今回も、最後に凄みのある演技を見せます。
見応えのある群像劇ですが、映画の冒頭、戦艦・大和が沈没する迫力のあるシーンが描かれます。山崎監督ならではの重厚なCG映像です。CGをうまく生かした独創的なアングルは、タイタニックやダンケルクを連想させます。大和の沈没を、映画の最後ではなく、最初に持ってきた山崎監督の判断は、間違っていなかったと思います。
「僕はイエス様が嫌い」は、奥山大史(おくやま・ひろし)監督が、脚本、撮影、編集も手がけました。大学の卒業制作で、初の長編作品です。第66回サンセバスチャン国際映画祭の最優秀新人監督賞を、22歳の史上最年少で獲得し、注目されました。
映画は、死を前にしたおじいちゃんが、障子に穴を開けて外を覗く意味深な場面から始まります。そして、ラスト近くでは、主人公のユラが障子に穴を開けて外を覗くシーンが登場します。
その家に、家族とともに主人公のユラが引っ越してきます。ミッション系の小学校に転入し、同級生のカズマと友達になります。そして、ユラの前に小さくて可愛いイエス様が現れます。
折り畳んだ千円札とイエス様の紙相撲というアイデアには、笑いました。イエス様は、ときにコミカルで、礼拝堂だけでなく、ユラとともに神社にもやってきます。さりげなく、宗教を横断する柔軟性にハッとします。
ロイ・アンダーソン監督の映像手法の影響を感じますが、天才的なアングルや光の演出は奥山監督の独自の才能です。
監督自身、小学校5年生の時に、仲のよかった友達が亡くなるという体験をし、この作品は、そこから生まれました。宗教的な作品というよりは、少年の体験した「死」をテーマにした作品です。
監督は、「狭い意味での宗教を深く信仰しているわけではないけれど、自分たちの常識を超越するなにかがあるとは思っている」と話しています。
私が初めて出会った奥山監督の作品は、「Tokyo 2001/10/21」です。簡易カメラ「写ルンです」で撮影した3000枚の写真で構成した切り絵アニメでした。とぼけた味ですが、毒を含んだ見応えのある人間ドラマになっています。主演の大竹しのぶのうまさとともに、若い監督の人間観察力にも驚かされました。
「僕はイエス様が嫌い」は、「Tokyo 2001/10/21」とは、かなり違う作風ですが、得体の知れなさは共通しています。
新海誠監督の新作アニメ「天気の子」は、もうご覧になりましたか。期待を裏切らない作品に仕上がっています。いや、期待以上の驚きを与えてくれました。
歴史的な大ヒットを記録した「君の名は。」から3年。新海誠監督が、どんな新しい作品を届けてくれるのか、とても楽しみにしていました。「天気の子」を観て、監督が驚くほど冷静な作品づくりをしていることに感動しました。そして、揺るぎない作家性にも心を打たれました。
制作スタッフは、「君の名は。」とほぼ同じですが、組織体制は変わっています。 プロデューサーの古澤佳寛、川村元気の両氏は、東宝を飛び出し、2017年9月に新会社STORYを設立しました。このSTORYが企画・製作に当たりました。そのことで、新海監督の大胆な挑戦が可能になったのだと思います。
16歳の高校1年生の男の子が、島から家出し、東京にやって来ます。オカルト雑誌のライターの仕事を始めますが、不思議な少女と出会います。彼女には、「祈る」ことで天気を晴れにできる能力がありました。
その力で、仕事を始め注目されますが、物語は意外や方向へと発展していきます。雨の表現は、ますます多彩になりました。そして天候による都市の表情の変化の美しさには目を見張りました。世界を輝かせる新海マジックは、健在でした。
主人公の森嶋帆高の声優は、醍醐虎汰朗。彼と出会う少女・天野陽菜の声優は森七菜が担当しています。2000人のオーディションの中から選ばれました。初々しくてなかなか良かったです。
空前のヒットを記録した「君の名は。」ですが、2000万人以上が観たことで、予想外の批判も起こりました。新海監督は、それを前向きに受け止め、あえて賛否の分かれるストーリーにしています。とても楽しい映画ですが、議論を巻き起こす壮大な実験作品でもあります。
雨が降り続く東京が舞台。大雨被害が相次いでいる天候不順な時期に公開されたことで、「天気の子」の世界は、異様なリアルさを持ち始めます。新海監督の時代感覚の鋭さを感じさせます。そして地球規模の長期的な視点が、印象的でした。
公開初日は、7月19日。京都アニメーションの放火事件の翌日でした。新海監督は、舞台あいさつで悲惨な事件に触れながら、「どういうことがあったとしてもエンターテインメントを作って表現することで自分たちや誰かを傷つける可能性もゼロではないけれど、怯まずに、それをやり続けていくことが自分たちの役目であり、一番やりたいことなんだなと改めて思いました」と、作品を作り続ける決意を述べています。その言葉に、うたれました。
今回もRADWIMPSが音楽を担当しています。効果的な曲が、作品をより豊かな世界へと高めています。中でも、女性ボーカルとして三浦透子が参加した「グランドエスケープ」は、深い感動を運んできました。
「きみと、波にのれたら」の予告編を観ると、薄っぺらな恋愛ものに思えましたが、作家性がつよい湯浅政明監督なので、それだけで終わるはずはないと思い、劇場に足を運びました。
サーフィン好きな女子大生と消防士の青年が恋に落ち、甘い日々を送りますが、後半は予想外の展開を見せます。前作「夜明け告げるルーのうた」に続くオリジナル作品です。独創的な水の表現が見所です。
濃厚な作家性、過剰な表現が持ち味の湯浅監督ですが、今回は様々なアイデア、魅力的な表現を盛り込みつつ、明るい歌にのせて、軽快にテンポよく進みます。
「マインド・ゲーム」など過激で濃密な作品だけでなく、これくらいの濃度で気持ちよく流れる作品も悪くありません。これはこれで新たな挑戦だと思います。
「ホットギミック ガールミーツボーイ」は、山戸結希監督の新作です。脚本も担当しています。原作は、相原実貴の少女コミックです。
16歳の少女・成田初(なりた・はつみ)が主人公です。初を取り巻く3人の男性との間で、心が激しく揺れ動きます。「乃木坂46」の堀未央奈が映画初主演で、初を演じています。演技はぎこちないですが、不器用だけれど前向きな少女を演じるには、そこが良かったのでしょう。
少年が少女と出会って恋に落ちる物語を「ボーイ・ミーツ・ガール」と言いますが、この作品は「ガールミーツボーイ」と、あえてガールを前面に出しています。そして、よくあるストーリーとは大きくかけ離れた展開を、独自の映像表現で、畳みかけるように描いていきます。監督の尖った美意識が充満しています。
前作の「溺れるナイフ」も、初々しい映像表現が魅力的でしたが、新作ではさらに作家性を発揮した表現が目立ちます。とらえどころがなく、たえず変化する少女を描くことに成功しています。
映画では、「バカでいる」ことが強調されます。スティーブ・ジョブズが2005年6月、スタンフォード大学卒業式辞で語ったスピーチの締めくくりの言葉として述べた「stay hungry, stay foolish」を思い出しました。
紋切り型の少女観、女性観を問い返し、破壊する山戸結希監督は、目が離せない作家です。
「WE ARE LITTLE ZOMBIES」は、長久允(ながひさ・まこと)監督が、脚本も手がけています。長編映画デビュー作でもあります。
突然両親を亡くして感情を失った4人の子どもたちが火葬場で出会い、音楽を通して成長し心を取り戻していく物語です。RPGゲームのような表現や構成を基本に、深刻なテーマを軽やかに、色彩豊かに描いています。
自主制作映画の自由さが持ち味ですが、佐々木蔵之介、工藤夕貴、佐野史郎、菊地凛子、永瀬正敏ら、ベテラン俳優が大勢出演しています。
長久允監督の前作「そうして私たちはプールに金魚を、」には、2017年、札幌国際短編映画祭ナショナルプログラムで出会いました。新鮮な映像に圧倒されました。思春期の女の子たちの猥雑でパワフルなエネルギーと閉塞感が良く表現されていました。映画祭では、最優秀監督賞、最優秀国内作品賞、最優秀編集賞を受賞しています。
「WE ARE LITTLE ZOMBIES」は、今年、ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門準グランプリを受賞したほか、第35回サンダンス映画祭で、日本人初の審査員特別賞・オリジナリティ賞を受賞しました。長久監督は「この作品は僕のすべてをかけて作った作品です。すべての若い人たちに、絶望と戦う力を与えられたら良いなと思います」と話していました。
審査員のチャールズ・ギルバードは「最後の最後まで驚きに満ち、想像をかき立てる、素晴らしい独創性」と絶賛。審査員のジェーン・カンピオン監督は「とってもクレイジーで、とても革新的で、すごく新しい」と評価しました。
たしかに非常に独創的な映像表現ですが、どこか懐かしい感触も覚えました。生きるのが辛い思春期のカオスを必死に表現しようとした1970年代の自主制作映画に通じています。しかし、突き抜けた境地は、現代的です。
次にどんな作品をつくるのか、非常に楽しみな監督です。
綺麗な結末を迎えたと思っていた「トイ・ストーリー」が、予想外の続編を公開しました。新作「トイ・ストーリー4」は、ピクサー作品でストーリーボード・アーティストを担当してきたジョシュ・クーリーが、長編初監督を務めました。
「トイ・ストーリー4」の予告編を見たとき、くにゃくにゃの使い捨てフォークが仲間入りしていて、何かの冗談かと思いましたが、ウッディたちの新しい持ち主になった女の子ボニーが工作で作ったフォークの人形・フォーキーは、とても重要な役回りをします。
相変わらず気持ちの良いテンポで物語が進みます。実写と変わらないリアルな風景、人形たちの微妙な表情の変化や繊細な質感の表現には、感動しました。「トイ・ストーリー2」以来19年ぶりに再登場した陶器製の人形ボー・ピープが大活躍します。
人形を、子供自らが作るという新たな視点の導入で、完璧な結末と思われたトイ・ストーリーの世界が、別の展開を見せます。ラストのウッディの決断も、新鮮でした。
最初の「トイ・ストーリー」は、ピクサー・アニメーション・スタジオが制作して、1995年に公開されたコンピュータアニメ作品でした。
私が自分のホームページを開設したのは、1996年3月18日です。その月に日本で劇場公開されたのが、「トイ・ストーリー」でした。長さは81分。さっそく、ホームページに映画の感想を書きました。こんな内容です。
アニメ「トイ・ストーリー」(1995年)は、とても良くできています。完成作品総メモリー500GB。世界初の3Dフル・コンピューター・グラフィックス・アニメーションという話題性に溺れずに、全編を通じてアニメの職人芸と優しさがあふれています。さまざまな人形キャラクターの描き分けも見事です。ラストに向かって徐々にスピードを上げていく演出も巧みでした。
「ベイブ」は動物の視点から人間を見つめていましたが、「トイ・ストーリー」はおもちゃの視点で子供たちの移り気や残酷さを見つめています。おもちゃを破壊する、敵役のシド少年が作り上げたフリーク・トイのデザインは、子供の無邪気さと悪意を象徴していて、秀抜です。彼等がカウボーイ人形ウッディの呼びかけで、シド少年を脅かしに行くシーンはおもちゃ版「フリークス」でしょうか。
「マスク」「ジキル博士はミスハイド」など、人間のアニメ化が盛んになる一方、人形たちに人間らしい息吹を吹き込む技術としてもコンピューターは力を発揮します。もう垣根はありません。生物と無生物。人間と動物。そんな壁を軽々と乗り越えて、主人公がさまざまな視点から世界を体験する時代です。
以上です。
さまざまな視点から世界を体験する時代。あれから23年が経ち、今まさにVRによって実現しようとしている世界です。
「トイ・ストーリー」の着想のきっかけを作ったのは、おもちゃコレクターの北原照久です 。監督のジョン・ラセターが横浜の北原が運営するブリキのおもちゃ博物館を訪問したことでトイ・ストーリーの構想が誕生しました。
1990年代では、CG製作に多額の費用が必要でした。ピクサーのCEO最高経営責任者・スティーブ・ジョブズの資産がなければ、制作は不可能でした。公開までの4年間の投資額は5000万ドルに上りました。しかし「トイ・ストーリー」のヒットでピクサーの株は高騰し、スティーブ・ジョブスの資産は4億ドル増えました。そしてピクサーが、良質なCGアニメを制作していける基盤ができました。
今年は、ディズニーアニメの実写映画化が相次いで劇場公開されています。
春に公開されたティム・バートン監督の「ダンボ」に続いて、1992年の名作アニメの実写版「アラジン」が公開されました。
「アラジン」は、ガイ・リッチー監督。映像表現の個性が強い監督ですが、キレのあるカメラワークが、アラジンの世界を、より魅力的にしています。
豪華絢爛という言葉がぴったりで、最初から最後まで楽しめます。娯楽作品としては満点に近い映画です。ストーリーは、単純といえば、単純ですが、実写化では、現代的な味付けがされています。
中東や南アジアの異なる民族、たくさんの国の人たちが登場します。アラジン役はエジプト系、ジャスミン役はインド系、ジャスミンの付き人ダリア役はイラン系の俳優です。
リッチー監督は「特定の文化や肌の色、民族にスポットを当てることが大嫌い」と話しています。
またジャスミンを通じて女性の自立が、はっきりと打ち出されています。ランプの精ジーニーも、自由を得ます。
ディズニー・アニメの実写化は、個性的なベテラン監督を起用し、現代的な味付けをしながら、見事な娯楽作に仕上げ、おおむね成功しているといえます。
1996年、「101(ワン・オー・ワン)」が「101匹わんちゃん」の実写版として公開され、グレン・クローズがクルエラを演じました。これが、名作アニメ実写化の先駆けです。なかなか面白いと思いました。
しかし、今回のような早いペースの実写映画化は、ここ数年のことです。名作アニメが、形を変えて映画になること自体は、楽しいことですが、ここまでハイペースだと、過去の遺産を食いつぶしていくことになるのではないかと、少し心配にもなります。
渡辺歩監督 が、五十嵐大介 が2006年から2011年にかけて連載したコミック「海獣の子供」をもとにアニメ化しました。五十嵐のコミックがアニメ化されるのは今回が初めてです。
「海獣の子供」は、中学生の少女・琉花が、ジュゴンに育てられた2人の少年と出会い、驚異の海洋体験をする物語です。
渡辺監督は、劇場版「ドラえもん」シリーズなどを監督してきました。制作は、アニメ表現にこだわることで有名なSTUDIO4°C。6年間かけて制作しました。音楽は、久石譲が、担当。映像世界をしっかりと支えています。
キャラクターデザインと総作画監督を、小西賢一が担当しています。小西賢一は「かぐや姫の物語」「千年女優」などの作画監督として有名です。彼も、こだわりの人です。
原作は緻密な書き込みが特徴ですが、アニメでも原作のタッチを生かした緻密な表現が追求されています。それに鮮やかな色彩と繊細な動きが加わり、これまで見たことのない質感のアニメ表現になっています。
あたらしいアニメ表現を、大きなスクリーンで見る幸せをかみしめました。
私は、2010年前後、連載途中の「海獣の子供」を読みました。その圧倒的な画力に驚きましたが、伝えようとしているテーマについては、心の奥には十分届いていませんんでした。
2014年に没入型のVRを体験し、人間の感覚について学びなおすことによって、「海獣の子供」のテーマは、心の奥にまで届くようになりました。
映画の中で「鯨の歌は、とても複雑な情報の波なんだ。鯨たちはもしかしたら、見た風景や感情をそのままの形で、伝え合って共有しているのかもしれない」という話が出てきます。
これは、今後VRが実現しようとしていることです。
研究者でアーテストの落合陽一さんは、「VRで人はイルカのようになる」と話しています。イルカは、超音波によって周囲の状況を3次元的に把握し、それを超音波によって仲間に伝えています。人間も、周囲の状況を3Dスキャンして、他人にデータとして送ったものをVR機器で再生することで、複数の人々が同じ体験を共有できるようになります。
「この世界に在るもののうち、僕ら人間に見えているものなんて、ほんの僅かしかない」人間と鯨などの世界は全く違い、人間には分からない世界が広がっているという「環世界」という考えが出てきます。
すべての動物はそれぞれに特有の知覚世界をもって生きています。環境を、独自の時間・空間として知覚しています。環世界は、もともとユクスキュルが提唱した生物学の概念です。
しかし生物学を超えて、哲学にも大きな影響を与えました。ユクスキュルは、カント哲学の影響を受けています。
五十嵐大介は、人間の認識の狭さを繰り返し描いています。環世界の意味の「ウムヴェルト」という題名の短編も書いています。
アニメでは、この世界のあり方について印象的な言葉が話されますが、それは言葉による比喩に過ぎません。時間も空間も、生も死も、人間の狭い認識に過ぎません。「誕生祭」と呼ばれている出来事も、人間がかってに意味づけをしているに過ぎないと思います。
このアニメはストーリーを追うとわからなくなります。考えるのではなく、感じる映画と言われます。たしかにストーリーを追うよりも圧倒的に美しい映像に溺れる作品です。ただ、考えること、感じることの限界を実感するアニメでもあると思います。
私は、VRを体験することで、この作品のテーマが、とても切実に感じられるようになりました。
2019年6月は、VR30周年なんです。1989年6月にバーチャルリアりティが体験できるゴーグル型の機器が発売されました。耳の機器がイヤフォンなので、目の機器ということで「アイフォン」と名付けられました。30年たって、VR機器が高性能で安価になりました。これから様々な分野で使われていきます。どんどん身近になります。
「天元突破グレンラガン」「キルラキル」の今石洋之監督と脚本家の中島かずきが、タッグを組んだオリジナルのアニメです。アニメーションスタジオのTRIGGERと、XFLAGが初めて共同製作しました。
2007年にTV放送されたロボットアニメ「天元突破グレンラガン」は、衝撃的でした。今石監督は、「天元突破グレンラガン」で初めてTVシリーズアニメの監督を務めました。劇団☆新感線の座付作家として活躍する中島かずきとは、アニメ「Re:キューティーハニー」で出会いました。
「プロメア」は、炎をテーマにしていますが、全編が激しく燃え続けている熱血ドラマです。炎を操る人種「バーニッシュ」が突然出現し、「世界大炎上」が起こり、世界の半分が焼失します。そして攻撃的なバーニッシュ「マッドバーニッシュ」は、世界を危機に陥れようとしています。
対バーニッシュ用の救命消防隊「バーニングレスキュー」の新人隊員ガロと、マッドバーニッシュのリーダー・リオは、互いの信念をぶつけあいますが、やがて心を通わせていきます。
主人公ガロを松山ケンイチ、リオを早乙女太一、ガロの上司クレイを堺雅人が、担当し、実力派俳優としての力をいかんなく発揮しています。堺雅人の豹変ぶりには、いつもながら驚かされます。
スタイリッシュな作画も、魅力的です。「天元突破グレンラガン」を連想させる場面も多いのですが、パステルカラーを強調した色彩と幾何学的なポリゴンを活用した表現が、新しいアニメの質感を生み出しています。
2時間に壮大な物語を凝縮しているので、クライマックスシーンの連続です。ただ、緊張がつづき、緩急がないので、魅力的な場面にも、だんだん慣れてしまいます。見ごたえはありますが、ちょっと残念な気もします。
ただ、決め台詞も多く、劇場で盛り上がるタイプの作品です。6月20日には、「発声OK!応援上映」も行われました。
入場特典と教えてもらったインターネットのアドレスで、ガロが「バーニングレスキュー」に入隊するエピソードを描いた「ガロ編」を観ました。10分間の短編ですが、しっかりと作りこまれていました。得した気分になりました。
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「ROMA ローマ」は、アルフォンソ・キュアロン監督が、1970年代のメキシコを舞台に、中産階級の家庭の1年を、若い家政婦の視点から描いたNetflixのオリジナル作品です。「ローマ」という題名は、舞台となるメキシコシティのコロニア・ローマ地区から、取られました。
キュアロン監督は、脚本・撮影も手がけ、監督自身の幼少期の体験をもとに、家族のドラマを全編モノクロ映像で描きました。撮影監督・エマニュエル・ルベツキが参加できなかったので、監督が撮影監督も兼ねています。「天国の口、終りの楽園」(2001年)以来、17年ぶりにメキシコで制作・撮影しました。
冒頭、清掃をしている石の床が映し出され、排水溝に水が流れ込む映像が延々と続きます。その水に、空と通りかかった飛行機が映し出されます。その美しさに、息を飲みました。この作品は、「痛いほど美しい」シーンが、何度も登場します。
主人公のクレオは、住み込みの家政婦として働いています。クレオは、先住民の血を引いています。中産階級の夫婦と彼らの4人の子供、祖母、同じく家政婦のアデラと暮らしています。掃除、料理、子供の送り迎えなどの日常が、ゆっくりと描かれていきます。
淡々とした日々に、さまざまな出来事、事件が起こります。1970年代のメキシコが舞台なので、警官隊が学生を虐殺する場面などが登場します。それが、日常の中で突然起こる点が、異様にリアルです。クレオは、最後に家族と強いきずなで結ばれます。自らも移民であるキュアロン監督が、静かにデリケートに移民問題を提起した作品でもあります。
その美しい映像は、可能なら劇場で観るべきです。映画館で観ることができた幸運に感謝しています。
「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」は、ゴジラをハリウッドが映画化した「GODZILLA ゴジラ」のシリーズ2作目。前作2014年から5年後の世界が舞台です。前作は、軍人、兵士を中心に描かれましたが、今回は研究機関「モナーク」の研究者たちが中心です。モスラ、ラドン、キングギドラなどの怪獣たちが次々と復活します。
マイケル・ドハティが、脚本と監督を務めています。前作から引き続き、芹沢猪四郎博士役を演じた渡辺謙のほか、チャン・ツィイーが重要な役で出演しています。今回は、芹沢博士の存在が、前面に押し出されていました。
怪獣たちは『神話』の生物という設定です。地球の奥深くで生息しているゴジラやモスラたちは、人間に警鐘を発するために、復活します。芹沢博士の「「怪獣は悪ではなく、自分たちの世界を取り戻そうとしているだけ。我々こそが、ペットだ」という主張が、この映画の中心テーマです。
ネタばらしになるので、あまり詳しくは話しませんが、非常に複雑な思いに襲われる場面があります。突っ込みどころも満載な場面ですが、あえてこのシーンを盛り込んだドハティ監督の思いも分かります。その場面で芹沢博士は、実際にゴジラに触れ、話しかけます。
今回は、怪獣たちが主役です。迫力に満ちたバトルシーンは、まさに神話的な美しさを放っています。ゴジラとキングギドラの激突は、本当に見ごたえがあります。そしてクイーンと呼ばれるモスラは、ため息が出るほどの優雅な美しさがありました。
ただ、ストーリー展開は粗さが目立ちます。特にハリウッド映画お決まりの家族ドラマが、めちゃくちゃです。ハリウッド映画に対する皮肉としか思えない出来です。
日本語吹き替え版は、主人公の声が若すぎるので、字幕版をお勧めします。音楽を含め、日本のゴジラへの驚くほどの敬意、リスペクトを感じます。ラストシーンで、怪獣たちがゴジラにひれ伏すという、椅子から転げ落ちそうになる場面がありますが、映画も、日本版のゴジラにひれ伏しています。
次作は、完結編「ゴジラ対コング」。今回は5年待たされましたが、「ゴジラ対コング」は、嬉しいことに来年2020年劇場公開の予定です。アメリカでは、2020年3月とアナウンスされていますが、今回と同じく日本でも同時公開されるかもしれません。キングコングのほかに、どんな怪獣たちが登場するかも、楽しみです。
アガサ・クリスティーが1949年に発表した「ねじれた家」を映画化しました。監督は、ジル・パケ=ブレネール。イギリス映画らしい品のある、ミステリアスな雰囲気が楽しめます。
冒頭、大富豪レオニデスが毒殺されます。私立探偵のチャールズは、レオニデスの孫娘で元恋人のソフィアから捜査を依頼され、レオニデスの屋敷を訪れます。屋敷には3世代にわたる一族が同居し、巨額の遺産をめぐって疑惑や嫉妬、憎悪が入り乱れています。
チャールズが、いろいろ推理を巡らせていく中盤は、ややもたつきますが、衝撃のラストは、なかなかスリリングでした。グレン・クローズは、さすがの存在感でした。
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原恵一監督が、柏葉幸子の児童文学「地下室からのふしぎな旅」をアニメ化した作品です。
誕生日の前日、小学生の少女アカネの前に、突然錬金術師ヒポクラテスとその弟子ピポが現れます。そして、自分たちの世界を救ってほしいと訴え、アカネを骨董品屋の地下室から繋がるワンダーランドに連れていきます。
小学生・少女アカネの声は、なんと松岡茉優です。彼女は、声優としても素晴らしい実績を持っていますが、小学生の声は無理です。ずっと気になっていました。
色鮮やかな場面は登場しますが、異世界冒険ファンタジーとしては、あまりにもおとなしいです。
展開が優等生で物足りません。クライマックスのしずく切りの儀式はとても魅力的でしたが、それでも物足りなさは残りました。
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