映画「ゲッベルスと私」

  • 2018.09.15 Saturday
  • 07:11


「ゲッベルスと私」は、オーストリアで製作されたインタビューを中心としたドキュメンタリー作品です。

 

監督は、クリスティアン・クレーネス、フロリアン・ヴァイゲンザマー、オーラフ・S・ミュラー、ローラント・シュロットホーファーの4人。通常、インタビューは、一人の監督の個性を生かして制作されることが多いですが、この作品は複数の監督によるインタビューで構成しています。白黒の作品です。

 

インタビューの対象は、ゲッベルスの秘書として働いたブルンヒルデ・ポムゼルただ一人。深い皺が刻まれた顔が鮮明に映し出されます。撮影当時103歳だったポムゼルは、ゲッベルスについてのほか、幼少の頃の父親の思い出、初めて出来た恋人の話、ユダヤ人の友人の面影など、細部にわたって淀みなく話し続けます。驚異的な記憶力に驚かされます。

 

ポムゼルは、1942年から終戦までの3年間、ナチスの宣伝担当大臣ヨーゼフ・ゲッベルスの秘書として働き、近代において最も冷酷と言われている戦争犯罪者のそばにいた人です。終戦から69年の沈黙を破って当時を語った貴重なインタビューです。作品は、30時間に及ぶインタビューを元にしています。

 

ポムゼルは「ゲッベルスは上品で紳士だった」「演説では声を荒げて豹変する役者だった」「演技力であの人に勝てる役者はいない」と話します。そして、自分は「ホロコーストについては、なにも知らなかった」「いわれたことをタイプしていただけ」と弁明します。

 

しかし、長年にわたって、彼女が苦悩してきたことは間違いありません。「私に罪があったとは思わない。ただし、ドイツ国民全員に罪があるとするなら話は別」「神はいないけれど悪魔はいる」「正義は存在しない」という発言には、異様な重さがあります。

 

インタビューの合間に、世界各国で製作された様々なアーカイヴ映像が流れます。世界初公開です。ゲッベルスのプライベート映像、ナチスによるプロバガンダ映像、ドイツでのユダヤ人虐殺に向けた教育映像、アメリカによるプロバガンダ映像。中には、目を背けたくなる生々しい映像もありました。

 

様々な立場で製作された当時の映像を挟むことで、ポムゼルの表情や発言の意味が、より多角的になっていたと思います。彼女の話には、わずかな矛盾がありますが、この作品は、ポムゼルを批判することが目的ではないと思います。あの時代を、重層的に、多面的に捉え返そうという姿勢が貫かれていました。

 

1911年生まれの彼女は、インタビューを受けた後、2017年1月27日に106歳で亡くなっています。よくぞ、証言を残してくれたと思います。戦争を防ぐためには、被害者の証言とともに、加害者側の証言も、とても重要です。

 

 


電子書籍
http://www.amzn.to/18ddM5v



コメント
コメントする








    

calendar

S M T W T F S
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< January 2019 >>

selected entries

categories

archives

recent comment

recommend

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM