映画「シンドラーのリスト」、スピルバーグ監督の力量を示す

  • 2016.02.14 Sunday
  • 20:30




スティーヴン・スピルバーグ監督の「シンドラーのリスト」(1993年。アメリカ映画)は、ユダヤ人虐殺という重いテーマを扱いつつ三時間の長丁場をとにかく見せる展開。スピルバーグ監督の力量を示しています。

いつもの大げさな演出は影を潜め、説教臭さもありません。虐殺シーンの冷徹さは、ロッセリーニを連想させます。一人のドイツ人が千二百人のユダヤ人の命を救う、というヒューマニズムのドラマに終わっていません。ユダヤ人経理士の圧倒的な影響もしっかり描いていました。

シンドラーが最後に「このナチスの勲章を売れば、もう一人救えた」と叫ぶシーンがあります。ユダヤ人たちは「こんなに救ったのですよ」と慰めますが、このシンドラーの後悔は「何故、ファシズムを許してしまったのか」という問いへと発展していかざるをえせん。この映画が、シンドラーがその後事業と結婚に失敗した、という所で終わっていたら、もっと凄かったと思います。

民族排外主義を何ら教訓化していないイスラエルによって英雄に祭り上げられ、シンドラーの墓に多くの人が列を作るシーンが最後に置かれるのは、不満が残りました。

ファシズムの問題は、個人の良心では解決しません。1万人の死体を積み上げて焼くシーンがありますが、この意味を剥奪された現実から、我々は自由ではありえません。レヴィナス的な問いとして今も切実さを失っていません。

シンドラーが己の欲望に素直だったが故に、ナチズムの底に流れる虚無主義と対峙することができました。ただ、資金が底を突いたときに終戦になったという幸運もありました。改めてあの歴史を教訓化するという意味でも、多面的な問題を孕んでいる作品といえるでしょう。



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