映画「ROMA ローマ」の「痛いほど美しい」シーン

  • 2019.06.23 Sunday
  • 12:27



「ROMA ローマ」は、アルフォンソ・キュアロン監督が、1970年代のメキシコを舞台に、中産階級の家庭の1年を、若い家政婦の視点から描いたNetflixのオリジナル作品です。「ローマ」という題名は、舞台となるメキシコシティのコロニア・ローマ地区から、取られました。

 

キュアロン監督は、脚本・撮影も手がけ、監督自身の幼少期の体験をもとに、家族のドラマを全編モノクロ映像で描きました。撮影監督・エマニュエル・ルベツキが参加できなかったので、監督が撮影監督も兼ねています。「天国の口、終りの楽園」(2001年)以来、17年ぶりにメキシコで制作・撮影しました。

 

冒頭、清掃をしている石の床が映し出され、排水溝に水が流れ込む映像が延々と続きます。その水に、空と通りかかった飛行機が映し出されます。その美しさに、息を飲みました。この作品は、「痛いほど美しい」シーンが、何度も登場します。

 

主人公のクレオは、住み込みの家政婦として働いています。クレオは、先住民の血を引いています。中産階級の夫婦と彼らの4人の子供、祖母、同じく家政婦のアデラと暮らしています。掃除、料理、子供の送り迎えなどの日常が、ゆっくりと描かれていきます。

 

淡々とした日々に、さまざまな出来事、事件が起こります。1970年代のメキシコが舞台なので、警官隊が学生を虐殺する場面などが登場します。それが、日常の中で突然起こる点が、異様にリアルです。クレオは、最後に家族と強いきずなで結ばれます。自らも移民であるキュアロン監督が、静かにデリケートに移民問題を提起した作品でもあります。

 

その美しい映像は、可能なら劇場で観るべきです。映画館で観ることができた幸運に感謝しています。


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映画「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」神話的な美しさを放つ

  • 2019.06.23 Sunday
  • 08:28



「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」は、ゴジラをハリウッドが映画化した「GODZILLA ゴジラ」のシリーズ2作目。前作2014年から5年後の世界が舞台です。前作は、軍人、兵士を中心に描かれましたが、今回は研究機関「モナーク」の研究者たちが中心です。モスラ、ラドン、キングギドラなどの怪獣たちが次々と復活します。

 

マイケル・ドハティが、脚本と監督を務めています。前作から引き続き、芹沢猪四郎博士役を演じた渡辺謙のほか、チャン・ツィイーが重要な役で出演しています。今回は、芹沢博士の存在が、前面に押し出されていました。

 

怪獣たちは『神話』の生物という設定です。地球の奥深くで生息しているゴジラやモスラたちは、人間に警鐘を発するために、復活します。芹沢博士の「「怪獣は悪ではなく、自分たちの世界を取り戻そうとしているだけ。我々こそが、ペットだ」という主張が、この映画の中心テーマです。

 

ネタばらしになるので、あまり詳しくは話しませんが、非常に複雑な思いに襲われる場面があります。突っ込みどころも満載な場面ですが、あえてこのシーンを盛り込んだドハティ監督の思いも分かります。その場面で芹沢博士は、実際にゴジラに触れ、話しかけます。

 

今回は、怪獣たちが主役です。迫力に満ちたバトルシーンは、まさに神話的な美しさを放っています。ゴジラとキングギドラの激突は、本当に見ごたえがあります。そしてクイーンと呼ばれるモスラは、ため息が出るほどの優雅な美しさがありました。

 

ただ、ストーリー展開は粗さが目立ちます。特にハリウッド映画お決まりの家族ドラマが、めちゃくちゃです。ハリウッド映画に対する皮肉としか思えない出来です。

 

日本語吹き替え版は、主人公の声が若すぎるので、字幕版をお勧めします。音楽を含め、日本のゴジラへの驚くほどの敬意、リスペクトを感じます。ラストシーンで、怪獣たちがゴジラにひれ伏すという、椅子から転げ落ちそうになる場面がありますが、映画も、日本版のゴジラにひれ伏しています。

 

次作は、完結編「ゴジラ対コング」。今回は5年待たされましたが、「ゴジラ対コング」は、嬉しいことに来年2020年劇場公開の予定です。アメリカでは、2020年3月とアナウンスされていますが、今回と同じく日本でも同時公開されるかもしれません。キングコングのほかに、どんな怪獣たちが登場するかも、楽しみです。

 


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映画「ねじれた家」

  • 2019.05.30 Thursday
  • 23:23


 

 


アガサ・クリスティーが1949年に発表した「ねじれた家」を映画化しました。監督は、ジル・パケ=ブレネール。イギリス映画らしい品のある、ミステリアスな雰囲気が楽しめます。

 

 

 

冒頭、大富豪レオニデスが毒殺されます。私立探偵のチャールズは、レオニデスの孫娘で元恋人のソフィアから捜査を依頼され、レオニデスの屋敷を訪れます。屋敷には3世代にわたる一族が同居し、巨額の遺産をめぐって疑惑や嫉妬、憎悪が入り乱れています。

 

チャールズが、いろいろ推理を巡らせていく中盤は、ややもたつきますが、衝撃のラストは、なかなかスリリングでした。グレン・クローズは、さすがの存在感でした。


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女性映画監督15人の短編オムニバス映画「21世紀の女の子」

  • 2019.05.28 Tuesday
  • 18:56



「21世紀の女の子」は、山戸結希(やまと・ゆうき)監督が、企画・プロデュースを手がけ、自身を含む1980年代後半〜90年代生まれの女性映画監督15人がメガホンをとった短編オムニバス映画です。


「自分自身のセクシャリティあるいはジェンダーがゆらいだ瞬間が映っていること」を共通のテーマに、各監督が1編8分以内の短編として制作しました。

 

「21世紀の女の子」は、既存の「女の子」の狭いイメージを壊しつつ、「女の子」の多面性を肯定する試みです。「女の子」という型にはまった作品ではなく、さまざまな「女の子」が登場します。

 

安川有果(やすかわ・ゆか)監督「ミューズ」から始まりました。監督の美意識が凝縮された作品にうちのめされます。次の竹内里紗(たけうち・りさ)監督の「Mirror」も、同性愛をめぐる緊張度の高い作品です。東佳苗(ひがし・かなえ)監督「out of fashion」は、柔らかな映像ながら生き方を鋭く問います。3作品とも濃厚な作品で、かなり疲れました。このままノンストップで15作品を見続けられるか、不安になります。

 

しかし枝優花(えだ・ゆか)監督「恋愛乾燥剤」は、軽めの学園コメディで助かりました。全体にシリアスな内容が多いものの、温泉旅館が舞台の首藤凜(しゅとう・りん)監督の「I wanna be your cat」、中華料理店が舞台の山中瑶子(やまなか・ようこ)監督の「回転てん子と、どりーむ母ちゃん」など、独特なユーモアを漂わせた作品もあり、表現の多様性に癒されます。なかなか新鮮な体験でした。

 

映画界で、パワハラやセクハラが問題になりましたが、根底には差別に支えられた閉鎖性があると思います。メジャーの映画を監督した女性は、この20年で3%というデータがあると山戸監督が話していましたが、映画という表現も多様に見えて、狭い枠に閉じこもっているのかもしれません。「21世紀の女の子」は、そういう閉鎖性への挑戦でもあります。

 

ラストに置かれた山戸結希監督の「離ればなれの花々へ」は、大きな広がりを持つ「女の子」の肯定であるとともに、映画という表現への揺るぎない信頼を感じました。

 

映画のポスターは可愛らしいですが、作品自体は衝撃的な内容が多いです。

 

エンディング曲「LOW hAPPYENDROLL -少女のままで死ぬ-」も、可愛らしい声ですが、歌の内容はかなり辛辣です。

 


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映画「キングダム」は画期的な傑作

  • 2019.05.28 Tuesday
  • 17:56


 

 

原作「キングダム」は、紀元前、中国の春秋戦国時代を舞台にした原泰久のコミックです。「週刊ヤングジャンプ」で2006年から連載が続けられています。現在54巻まで単行本が発刊。 その歴史巨編「キングダム」を、佐藤信介監督が実写映画化しました。

 

 

 

人気コミックの実写映画化が、相次いでいますが、「キングダム」の劇場版実写化のニュースを聞いたときに、あの壮大なスケールの群像劇が、はたして日本映画の実写化に耐えられるのかと、正直不安でした。

 

しかし、その不安は、すぐに感動と興奮に変わりました。俳優たちの熱演と大規模な中国ロケが生かされた画期的な傑作です。

 

原作者の原泰久が、映画化にあたって脚本に参加したことが良い方向に作用しました。「ちゃんと2時間の中で成立する、起承転結のある作品にしたい」という思いで、1年にわたる脚本会議に参加し、完成した脚本について「すごくいい脚本になって送り出せた」「原作の1巻から5巻までの内容と映画の内容を比べると圧倒的に映画が勝ってます」と話しています。


主人公・信を演じた山賢人の迫力には驚きました。間違いなく代表作になるでしょう。欠点は、イケメンすぎることだけです。

 

吉沢亮は、奴隷の漂と秦の王「えい政」の二役をみごとに演じ分けています。えい政の気品、冷静さと熱い思いに、ほれぼれしました。イケメン俳優のレベルを軽々と超える名優の誕生です。

 

橋本環奈は、河了貂をかわいらしく演じました。熱量の高い作品の中で、良いアクセントでした。

 

山の王の楊端和を演じた長澤まさみのアクションが、あまりにもかっこよいです。クールな美しさがあります。

 

秦の6将軍最後の生き残り・王騎を、筋トレでムキムキになった大沢たかおが演じています。さすがの存在感です。

 

Twitterで「キングダム」を観た感想を、4択で答えてもらいました。770人が投票してくれました。
「とても良かった」40%
「まあ良かった」29%
「あまり良くなかった」9%
「全く良くなかった」22%
「とても良かった」が一番多かったです。

 

今回の映画化は、原作5巻までの内容。まだ、始まったばかりです。まずは王騎の最後までの早期のシリーズ化を切望します。

 

世界公開も決まっています。アクション主体の日本映画が、世界の人々の心に届くかどうか。とても楽しみです。


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映画「ダンボ」

  • 2019.04.30 Tuesday
  • 21:25



「ダンボ」は、1941年、ウォルト・ディズニーが制作したアニメ映画が有名です。誰もが知っている「ダンボ」を、ティム・バートン監督が実写映画化に挑戦しました。

 

冒頭のサーカス団を乗せた汽車のシーンから、一気にバートンワールドに引き込まれます。世界中から本物の曲芸師を呼び寄せてリアリティーを追求しています。

 

ダンボは、言葉を話しませんが、表情豊かでかわいいです。これだけで、この作品は成功したと言えます。はらはらする飛行シーンも見事です。

 

ディズニー映画ですが、壮大なテーマパークである「ドリームランド」が、後半では否定的に描かれます。ディズニーランド批判となりかねないストーリー展開に、ディズニーの懐の深さを感じました。

 

ラストシーンでは、ダンボ親子は、母親が生まれた自然の中で、多くのゾウたちと暮らし始めます。


アウトサイダーを肯定するバートン監督のスタンスは変わっていません。バートン・フアンにとっては、もっと毒を期待してしまいますが、これはこれでなかなか意味深な作品だと思います。


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映画「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」

  • 2019.04.30 Tuesday
  • 21:22


 

 

「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」は、16世紀の英国を生きた2人の女王を描いた歴史ドラマです。ケイト・ブランシェット主演の「エリザベス」を手がけたプロデューサーが、エリザベスと同時代に生きたメアリーに着目して製作しました。

 

 

 

監督は、ロンドンの演劇界で活躍する女性演出家で、映画監督はこれがデビュー作となるジョージー・ルークです。

 

16歳でフランス王妃となりながら、2年後に未亡人になったメアリーは、故郷のスコットランドに帰国し、再び王位の座に就きます。陰謀や内乱などによって何度も王座を追われそうになりながら、厳しい現実と向き合います。一方、イングランドを統治するエリザベスは、自分と違い、結婚して子どもを産んだメアリーに、複雑な思いを持っています。

 

メアリー・スチュアート役をシアーシャ・ローナン、エリザベス役をマーゴット・ロビーが演じています。二人の複雑で波乱にとんだ関係が描かれます。ただ、人物造形が十分に定まらないために、物語は膨らみません。とりわけ男性の描き方が弱すぎます。

 

一方、スコットランドの壮大な自然描写は、胸を打ちます。天候不順の中、スコットランドでの大規模なロケーションにこだわった監督の思いは伝わってきます。


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映画「バーニング 劇場版」

  • 2019.04.30 Tuesday
  • 21:20


 

 

「バーニング 劇場版」は、イ・チャンドンの8年ぶり監督作品です。村上春樹が1983年に発表した短編小説「納屋を焼く」を大胆にアレンジしたミステリードラマです。

 

 

 

フリーターで小説家志望の青年ジョンスは、幼なじみの女性ヘミと偶然再会し、彼女がアフリカ旅行に行く間の飼い猫の世話を頼まれます。旅行から戻ったヘミは、アフリカで知り合った金持ちの男ベンをジョンスに紹介します。ベンは、ヘミと一緒にジョンスの自宅を訪れ、「僕は時々ビニールハウスを燃やしている」と秘密を打ち明け、その日を境にヘミは行方不明になります。

 

ジョンスは母が離婚して家を出、父は暴力沙汰を起こして裁判中です。外車に乗り高級マンションで暮らす青年ベンとのヘミを巡る三角関係に悩みます。理不尽な格差社会の下で、ジョンスの感情は鬱屈し、やがて爆発します。

 

巧みに組み込まれたメタファーやトリック。全体を包む非現実感、宙吊り感。くすんだ映像。それを楽しめるかどうかで、この148分の作品の評価は大きく分かれるでしょう。私は、やや紋切り型の展開に感じて、あまり楽しむことができませんでした。


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映画「ブラック・クランズマン」

  • 2019.04.30 Tuesday
  • 21:19



「ブラック・クランズマン」は、スパイク・リー監督、脚本、製作の作品です。1970年代、黒人刑事が白人至上主義団体 KKK(クー・クラックス・クラン)に潜入捜査した史実を克明に描いたノンフィクション小説を、映画化しました。

 

2018年、第71回カンヌ国際映画祭で最高賞パルム・ドールに次ぐグランプリを受賞しています。今年の第91回アカデミー賞では、脚色賞を受賞しました。

 

スパイク・リー監督の代表作「マルコムX」(1992年)で主演を務めたデンゼル・ワシントンの息子ジョン・デヴィッド・ワシントンが、主人公のロン・ストールワースを演じています。

 

過激な団体クー・クラックス・クランに潜入することは、きわめて危険な行為です。黒人刑事ロン・ストールワースは、電話で言葉巧みに人種差別主義者をだまし、ユダヤ人の同僚刑事フィリップが実際に団体のメンバーになります。クー・クラックス・クランはユダヤ人も差別していたので、フィリップは自分がユダヤ人であることを強く意識し始めます。

 

軽妙なタッチと手に汗握る緊迫感。ユーモアを交えながらスリリングに描くスパイク・リー監督の力量はさすがです。物語は、ある意味痛快な形で終わりますが、監督は最後に現代も続いている深刻な対立を突きつけます。

 

映画の中では「ブラック・パワー」「ホワイト・パワー」という言葉が飛び交います。肌の色が決定的な対立のように描かれます。しかし、外見による人種という分類は、遺伝子レベルでは全く意味がないことが分かっています。

 

黒人と白人の遺伝子の違いは、黒人の中での遺伝子の違いよりも、遥かに少ないのです。そのような科学的な事実を知ることも、人種という凝り固まった考えを改めるきっかけになると思います。


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映画「麻雀放浪記2020」

  • 2019.04.30 Tuesday
  • 21:17



「麻雀放浪記2020」、面白すぎです。突然日本が戦争に巻き込まれて敗戦国となり、東京オリンピックが中止になった2020年が舞台です。こんな設定の映画が製作され、劇場公開できたこと自体が、奇跡でしょう。

 

監督は白石和彌。賭博麻雀の緊張感を生きがいとしている主演の坊や哲を演じているのが、斎藤工です。この作品は、もともと斎藤工が企画したものです。ふんどし姿が素晴らしい。

 

坊や哲は、戦後の1945年から、新たな戦後の2020年にタイムスリップします。戦後から戦後へ。とても意味深な設定です。麻雀は、長い年月を超えて、2020年でも人気を保っています。

 

人工知能を搭載したロボット役のベッキーは、なかなかのはまり役。エンドロール後のラストシーンも決まって、代表作になるかもしれません。

 

逮捕・起訴されたピエール瀧のシーンも、ノーカットで公開しています。渋いです。予告編で淀川長治に扮して軽妙な解説していた小松政夫が、本編でも、とても重要な役で登場します。熱演に驚きました。

 

B級テイストをふんだんに盛り込み、意図的に安物っぽく見せながらも、斎藤工の熱演と白石監督の力技で、スリリングな世界に引き込まれます。最後の人工知能と哲の麻雀対決では、なかなか巧みな展開を見せます。

 

「翔んで埼玉」に続く、2019年の問題作です。


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