「天国でまた会おう」

  • 2019.03.25 Monday
  • 23:04



映画「天国でまた会おう」の原作は、エール・ルメートルが2012年に発表した小説です。第1次世界大戦後のフランスが舞台です。政府の尋問を受ける元フランス軍の兵士アルベール・マイヤールの回想という形を取って物語は進みます。アルベール役は、アルベール・デュポンテル監督が務めています。

故意に戦争を長引かせようとする上官の悪事を知ったアルベールは、上官に生き埋めにされます。彼を救い出したエドゥアールは、直後に爆撃を受け、顔の下半分を失います。エドゥアールは家に戻りたくないと戦死したことにして、アルベールと暮らし始めます。



権力者が戦争で肥え太り、帰還兵や傷病兵は戦争後も苦しみ続ける。ストレートな戦争批判が根底にあります。しかし戦争の欺瞞性を鋭く問いながら、魔術的といってよい映像美も備えています。単純なハッピーエンドではない、それでいて明るさもある結末が、余韻を残します。




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「ビール・ストリートの恋人たち」

  • 2019.03.25 Monday
  • 23:03


 

「ビール・ストリートの恋人たち」は、「ムーンライト」でアカデミー作品賞を受賞したバリー・ジェンキンス監督が、ジェームズ・ボールドウィンの小説「ビール・ストリートに口あらば」を映画化しました。1970年代ニューヨークのハーレムで暮らす若い黒人男女の愛と信念を描いています。

 

幼ななじみで共に育ち、強いきずなで結ばれたティッシュとファニー。愛し合う二人の前半の幸せな場面が、冤罪に苦しむ後半の残酷さを際立たせます。真実が通じない過酷な現実が描かれます。

 

強烈な映像美が印象的だった「ムーンライト」から一転して、繊細な色彩感覚で1970年当時のニューヨークを再現しています。セットデザイン、衣装へのこだわり。ジェンキンス監督の新たな美意識に触れることができます。


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映画「アリータ:バトル・エンジェル」

  • 2019.03.25 Monday
  • 22:36


 

「アリータ:バトル・エンジェル」は、木城ゆきとのコミック「銃夢(ガンム)」を、ジェームズ・キャメロンの脚本・製作で、ハリウッドで実写映画化したアクション大作です。監督は「シン・シティ」のロバート・ロドリゲス。キャメロン監督が、25年をかけて完成にこぎつけた企画です。荒廃した街の細部へのこだわりには、キャメロン監督の深い原作愛が感じられます。

 

原作の「銃夢」は、1990年から1995年にかけて連載されました。サイボーグの少女ガリィが、格闘技術を駆使してさまざまな強敵と戦うサイバーパンク格闘アクション漫画でした。翻訳された英語版は『Battle Angel Alita』という題名で、実写映画の題名にもなりました。主人公の名前「ガリィ」は、「アリータ」に変更されています。 

 

数百年後の未来が舞台。空中都市「ザレム」の真下には、ザレムから吐き出された廃棄物の山があり、そのゴミを再利用して生きる人々が街を作って暮らしています。 

 

廃棄物の山の中から脳が無傷の状態で発見されたサイボーグの少女アリータは、サイバー医師のイド博士によって新たな身体を与えられ、目を覚まします。しかしアリータは、驚異的な格闘スキルを持ちながら、全ての記憶を失っていました。やがて彼女は、自分が最終兵器として作られたことを知ります。殺人サイボーグたちとの戦いが始まります。

 

CGで作られたヒロインの圧倒的なクオリティに驚きます。アリータの人間らしい、あまりにも自然な動きと表情。目が異様に大きくなければ、CGとは思えなくなりそうです。

 

巨大なスタジアムで行われるバトルロイヤルゲーム「モーターボール」の息をつかせないスピードと迫力だけでも、見る価値はあります。

 

ストーリー展開の雑さなど、指摘したい点はありますが、日本のSFコミックの映画化としては、最高水準です。「度肝を抜かれる」という表現を、久しぶりに使いたくなる作品です。続編を期待したいですね。


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映画「翔んで埼玉」

  • 2019.03.25 Monday
  • 22:00


「翔んで埼玉」は、魔夜峰央のコミックの実写映画化ですが、実現までには紆余曲折がありました。


原作は中断したままで、映画は原作の実写化というよりも、原作をもとに構想を思い切り膨らませた内容になっています。監督は、「テルマエ・ロマエ」の武内英樹です。

 

魔夜峰央は、1953年3月4日生まれ。代表作の『パタリロ!』は、『花とゆめ』で1978年に連載を開始し、現在も連載中です。2018年に『パタリロ!』40周年と単行本100巻刊行が実現しました。1982年にTVアニメ化、2016年には舞台で上演され、2018年にも第2弾の舞台が公演されています。そして、舞台版のキャスト・スタッフで制作した実写版の『パタリロ!』が、6月28日から劇場公開されます。

 

コミック『翔んで埼玉』は、『花とゆめ』1982年冬の別冊、1983年春の別冊・夏の別冊に3回に分けて連載されました。

 

魔夜 峰央は、出身地の新潟県から埼玉県の所沢市に転居しました。『翔んで埼玉』は、住んでいる埼玉県を「おちょくる面白さ」を狙いましたが、第3話まで執筆した後に横浜市に転居して連載を中断し『未完の作品』となりました。

 

「翔んで埼玉」は、1986年に短編集「やおい君の日常的でない生活」に収録されましたが、あまり話題になりませんでした。しかし発表から30年以上経った2015年に、インターネット上で「翔んで埼玉」の衝撃的な内容が話題になり、宝島社から復刊されます。2016年2月時点で発行部数は50万部を突破しました。

 

映画「翔んで埼玉」は、出身地・居住地によって激しい差別が行われている架空の日本が舞台です。


名門校・白鵬堂学院に、容姿端麗な麻実麗という男子学生が転入してきます。当初は麗に反発していた、自治会長・白鵬堂百美は、次第に麗(れい)にひかれていきます。 しかし麗は、埼玉解放戦線のメンバーでした。

 

見た目が女性のような白鵬堂百美を、二階堂ふみが演じました。原作の濃厚なBLの雰囲気が微妙に緩和されました。

 

麻実麗役は、まさかのGACKT。しかし、見事に決まっています。


埼玉デューク役の京本政樹も、いい味を出しています。

 

くだらないギャグの連続に、笑い転げているうちに、価値観を変えられるストーリーです。今の時代を問い返すインパクトがあります。埼玉は、地名ではなく、生き方なのです。埼玉化は、画一化ではなく、多様化なんですね。

 

どこがおもしろいかは、観ていただくのが一番。2018年の「カメラを止めるな!」は奇跡でしたが、危険な題材を取り上げて見事に突き抜けた「翔んで埼玉」も、ある意味で奇跡的な作品です。


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ゆうばり映画祭2019オープニング上映と「麻雀放浪記2020」

  • 2019.03.25 Monday
  • 20:00


3月7日から10日まで開催された、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019の7日のオープニング・セレモニー、オープニング上映に参加しました。

 

オープニング上映作品は、キム・ギドク監督の「人間、空間、時間、そして人間」でした。虐殺とカニバリズムという衝撃的な内容の作品ですが、監督を巡っても衝撃的なニュースが流れています。女優から暴行や性被害の告発を受けました。そのため、作品の劇場公開のめどが立っていません。その作品を、あえてオープニング上映に選んだわけです。賛否が分かれる挑戦的な選択だと思います。

 

この点について、オフシアター・コンペティション部門の審査委員長を務めた白石和彌監督が、あいさつの中で、説明不足を指摘しています。これに対して、塩田時敏プログラミング・ディレクターが、疑問に応えるあいさつをしました。

 

映画祭閉幕後に予想もしなかった事件が、起きました。12日にピエール瀧が麻薬取締法違反の容疑で逮捕されました。ピエール瀧は、4月5日に劇場公開を控えている、白石和彌監督の「麻雀放浪記2020」に、重要な役で出演しています。

 

劇場公開の自粛も検討されましたが、予定通り4月5日にノーカットで劇場公開されます。過度に自粛するのではなく、こういう形で、観客に判断を委ねる方向に社会が変わってほしいと思います。


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映画「ファースト・マン」

  • 2019.02.24 Sunday
  • 17:29



ニール・アームストロングの伝記「ファーストマン」を、「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督と主演を務めたライアン・ゴズリングが映画化しました。

 

人類が初めて月面に足跡を残した宇宙飛行士アームストロングの半生を中心に、月面有人着陸という困難な計画に取り組む宇宙飛行士やNASA職員たちの奮闘を描いています。

 

強烈な轟音と宇宙の無音の対比が見事ですが、大げさな表現はなく淡々と物語が進みます。アポロ計画までの歩みを丹念にたどっていますが、肝心の月面着陸、歩行の過程を、もう少し丁寧に描いてもらいたかったです。

 

アームストロングは、娘のカレンを病気で失っています。それが、宇宙飛行士を目指すきっかけにもなりました。アームストロングと家族の関係が、宇宙開発以上にきめ細かく映画化されています。妻ジャネットの不安に揺れ動きつつも、アームストロングを毅然として支える姿は、感動的です。

 

アポロ11号の偉業から50年が経ちます。当時中学生だった私は天文学、生物学が大好きな少年でした。固唾を飲んでテレビを見つめていました。高校時代に、公害を告発したレーチェル・カーソンの「沈黙の春」を読んで、科学技術への疑問を持ち、哲学や社会学に関心が移りました。

 

40代になって、パソコンやインターネットが普及し始めて、私はまた科学技術に関心が移っています。


アポロ11号の有人飛行は、軍拡競争を背景にした政治的なショーの面がありました。巨額を投じて人を月に送ることへの批判は、映画の中でも繰り返し描かれています。しかし、50年前、月面から地球を見つめた歴史的な意義を、今一度かみしめるべき時であると思います。

 

アメリカ航空宇宙局(NASA)は2月14日、宇宙飛行士を運ぶ月面着陸船を企業と協力して開発する構想を発表しました。月の周回軌道に建設する宇宙ステーションと月面を往復する再利用型を目指しています。2024年に試験飛行を始め、2028年に飛行士を月面に送り込む計画です。


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映画「ヴィクトリア女王 最期の秘密」

  • 2019.02.24 Sunday
  • 17:28



スティーブン・フリアーズ監督。晩年のイギリス女王とインドからきた使者の交流を描いています。

 

1887年、ヴィクトリア女王の在位50周年記念式典が開かれます。記念硬貨の贈呈役に選ばれたアブドゥルは、イギリスの植民地インドからイギリスにやって来ます。深い孤独感とともに暮らし心を閉ざしていたヴィクトリア女王は、王室のしきたりにとらわれない率直なアブドゥルに心を開きます。2人の間には立場や年齢を超えた絆が生まれます。そんな女王とアブドゥルをこころよく思わない周囲の人びとは、2人を引き離そうと王室を揺るがす事態に発展します。

 

「ほぼ史実」というストーリー展開。ジュディ・デンチ演じるヴィクトリア女王は、深い悲しみに包まれています。ただ、イケメン好きで可愛らしい面もちゃんと演じています。振幅の大きな演技は、さすがです。

 

美しい映像が印象的ですが、映画として初めてカメラが入った王室離宮のオズボーン・ハウスの本物の迫力は、特筆すべきです。イギリス南部のワイト島にあるオズボーン・ハウスは、ヴィクトリア女王の夫アルバートが、設計から内装までを手掛け、女王が最も愛した場所でした。

 

VRを体験できる一体型の機器Oculus GOに、「wander」というアプリがあります。Googleのストリートビューを360度映像で体験できます。その場所にいるように感じます。建物の内部を自由に移動できる場所もたくさんあります。私は、毎日のように世界各地を散策して楽しんでいます。映画を観た後、早速オズボーン・ハウスに行き、その美しさを再確認しました。


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映画「女王陛下のお気に入り」

  • 2019.02.24 Sunday
  • 17:27



ギリシャのヨルゴス・ランティモス監督が、18世紀イギリスの王室を舞台に、アン女王と彼女に仕える2人の女性の激しい愛憎劇を描いています。2018年・第75回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で審査員グランプリを受賞しました。

 

女王アンを演じたオリビア・コールマン、女王の幼なじみレディ・サラを演じたレイチェル・ワイズ、没落した貴族の娘アビゲイルを演じたエマ・ストーン。映画では3人の力関係が絶妙ですが、派手な演技バトルとしても、絶妙なバランスでした。

 

豪華なセットが強烈な印象を放ちます。そして、衣装のセンスの良さが際立っています。衣装のスタイルは当時に従いながら、素材や配色は現代的です。オリビア・コールマンは「サンディ・パウエルの衣裳は特別。何もかもが美しい」と強調していました。

 

作家性の強いランティモス監督。18世紀の宮廷劇に、超広角映像を多用していたのは、ユニークでした。映像美と演技バトル、そして意図的な下品さは楽しめますが、物語自体はそれほど面白くありません。もっと奔放に、史実を無視した展開を期待していました。


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映画「サスペリア」

  • 2019.02.24 Sunday
  • 17:26



ルカ・グァダニーノ監督の「サスペリア」は、1977年のドイツが舞台です。バレリーナ志望のスージーは、ドイツにある女性だけの舞踊団に入るために、ニューヨークからやって来ます。1977年制作のダリオ・アルジェント監督の「サスペリア」のリメイクです。

 

アルジェント監督の「サスペリア」は、イタリアンホラー映画の金字塔といえます。ストーリー自体はB級ホラーのレベルでしたが、その映像美には目を奪われました。

 

そしてゴブリンの音楽の斬新さ。インドのシタールやタブラ、ギリシャのブズーキなどの民俗楽器とモーグ・シンセサイザーなどの電子楽器を組み合わせて、独創的な音楽を生み出しました。原色を多用した鮮烈な色彩と響きあい、新しいホラー映画の世界が開かれました。

 

この作品を14歳のときに観たグァダニーノ監督は「いつか自分バージョンの『サスペリア』を作るぞ!と監督としての目的を持った」と話しています。

 

しかし、作品の雰囲気はまるで違います。リメークではなく、脱構築です。痛いほどストレートな表現は、元祖「サスペリア」とは別な意味でトラウマになる映画です。

 

重要な役を演じているのは、女優ティルダ・スウィントン。舞踊団の「カリスマ振付師」マダム・ブラン、そして舞踊団の謎に迫ろうとする「82歳男性の心理療法士」クレンペラ―博士という、世代も性別も超えた対照的な役を演じ分けました。

 

ティルダは、1日4時間におよぶ特殊メイクによって82歳の老人に変身。エキストラやスタッフの多くは、クレンペラー博士をティルダが演じていることを知りませんでした。クレンペラーを演じた架空の俳優・ルッツ・エバースドルフは、映画の編集作業中に死ぬという筋書きまで用意していました。

 

音楽を担当したのは、レディオヘッドのトム・ヨーク。映画音楽を初めて手がけました。ノスタルジックでメランコリックな曲調は、ゴブリンとは対照的です。トム・ヨークは「美しい映画だと思った。ゴブリンの音楽も印象的だった。しかし、その音楽からはまったく離れたところに行こうと思った」と話しています。

 


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映画「エリック・クラプトン 12小節の人生」

  • 2019.01.29 Tuesday
  • 07:34


リリ・フィニー・ザナック監督。クラプトン本人によるナレーションで「ギターの神様」クラプトンの人生をたどるドキュメンタリーです。

 

日記、手書きの手紙、デッサンなどが登場します。ジョージ・ハリスン、ジミ・ヘンドリックス、B・B・キング、ローリング・ストーンズ、ビートルズ、ボブ・ディランなどの貴重な映像も楽しめます。

 

ジョージ・ハリソンの妻パティへの熱い思いが、率直に語られます。パティ本人もナレーションで参加し、当時を回顧しています。不思議な生々しさがあります。4歳の息子コナーの墜落死の衝撃の大きさも伝わってきます。

 

母親の冷たさが深いトラウマとなっていたことも分かりました。親の愛を知ることなく育ったクラプトンですが、最後に家族を得て、人生を静かに肯定する場面で終わります。

 

彼を救ったのが音楽であることは間違いありませんが、彼を支えた多くの女性たちの存在も忘れてはいけません。淡々とした展開ですが、心にしみる作品です。


俵屋年彦の電子書籍

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