映画「カツベン!」、日本独自のライブショー

  • 2020.01.01 Wednesday
  • 18:37



周防正行(すお・まさゆき)監督の新作。サイレント映画時代を舞台に、活動弁士になることを夢見る青年・俊太郎を主人公にしたコメディ映画です。

 

欧米のサイレント映画は映画の中に書き込まれたセリフ、背景解説のショットと伴奏音楽によって上映されていました。日本では観客が外国語の文字を理解できないので、上映する際には口頭で説明する活動弁士が導入されました。日本の話芸文化を生かした独自の文化が形成されました。映像を使ったライブショーでした。

 

俊太郎役は、映画初主演の成田凌(なりた・りょう)。注目していなかった俳優ですが、活動弁士の滑らかな話しぶりに驚きました。俊太郎の幼なじみ役梅子を演じた黒島結菜(くろしま・ゆいな)も魅力的です。

 

俊太郎は、映画館・慳擺曚濃用役として働き始めますが、さまざまな騒動に巻き込まれます。短いフイルムをつなぎ合わせて、独自の作品にしてしまうなど、物語はすごく面白いのですが、ドタバタ劇のテンポが悪くて、間延びした感じが少し残念でした。しかし、楽しい時間を過ごすことができました。


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映画「男はつらいよ50 お帰り 寅さん」

  • 2019.12.31 Tuesday
  • 22:08



 

山田洋次監督「男はつらいよ」の最新作「男はつらいよ50 お帰り 寅さん」が、第1作誕生から50周年となる2019年、年末ぎりぎりの12月27日に封切りとなりました。

 

1997年の「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇」以来、22年ぶりに製作されました。2019年のうちに劇場で見ることができました。新しい物語であるとともに、過去の作品のコラージュでもあるという見事な仕上がりです。

 

車寅次郎の甥・満男を吉岡秀隆が演じました。サラリーマンから小説家に転じた満男は、最新作のサイン会で偶然来日していた初恋の人イズミと再会します。満男はイズミを寅次郎の恋人だったリリーが経営する喫茶店に連れていきます。導入部分は、窮屈な作り物という感じがしていましたが、満男がイズミと再会した場面からは、どんどん面白くなっていきました。

 

物語の展開に合わせて、寅次郎と家族が演じた印象的な場面が、次々と登場します。特にメロンのシーンでは、爆笑してしまいました。寅次郎の魅力が全開になっています。そして最後には、歴代マドンナたちが、花を添えます。山田洋次監督の職人芸が楽しめます。


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独断映画ベストテン2019・邦画ベスト5

  • 2019.12.22 Sunday
  • 19:22



私が2019年に劇場で見た作品から選びました。たくさんの名作を見逃していると思いますが、ご了承ください。

 

邦画ベスト5 、こんなに迷ったのは、久しぶりです。

 

5位「僕はイエス様が嫌い」は、奥山大史(おくやま・ひろし)監督が、脚本、撮影、編集も手がけました。大学の卒業制作で、初の長編作品です。第66回サンセバスチャン国際映画祭の最優秀新人監督賞を、22歳の史上最年少で獲得し、注目されました。得体の知れなさが魅力です。

 

同じく5位は、長久允(ながひさ・まこと)監督「WE ARE LITTLE ZOMBIES」。突然両親を亡くして感情を失った4人の子どもたちが火葬場で出会い、音楽を通して成長し心を取り戻していく物語です。RPGゲームのような表現や構成を基本に、深刻なテーマを軽やかに、色彩豊かに描いています。

 

4位「21世紀の女の子」

山戸結希(やまと・ゆうき)監督が、企画・プロデュースを手がけ、自身を含む1980年代後半〜90年代生まれの女性映画監督15人がメガホンをとった短編オムニバス映画です。映画のポスターは可愛らしいですが、作品自体は衝撃的な内容が多いです。

 

「自分自身のセクシャリティあるいはジェンダーがゆらいだ瞬間が映っていること」を共通のテーマに、各監督が1編8分以内の短編として制作しました。既存の「女の子」の狭いイメージを壊しつつ、「女の子」の多面性を肯定する試みです。

 

ラストに置かれた山戸結希監督の「離ればなれの花々へ」は、大きな広がりを持つ「女の子」の肯定であるとともに、映画という表現への揺るぎない信頼を感じました。

 

3位「アルキメデスの大戦」

戦艦大和の建造をめぐる歴史を描いた三田紀房のコミックを、山崎貴監督が実写映画化しました。史実に添いながら、天才数学者という架空の人物が主人公です。映画は原作をかなり改変して大胆にまとめています。

 

天才数学者・櫂直(かい・ただし)を演じた菅田将暉(すだ・まさき)のうまさ、才能に感心しました。特に膨大な数式を書きながら、早口で主張する場面は、圧巻です。戦艦「大和」の設計を担当した平山忠道(ひらやま・ただみち)を演じた田中泯が、強烈です。最後に凄みのある演技を見せます。

 

見応えのある群像劇ですが、映画の冒頭、戦艦・大和が沈没する迫力のあるシーンが描かれます。山崎監督ならではの重厚なCG映像です。CGをうまく生かした独創的なアングルは、タイタニックやダンケルクを連想させます。大和の沈没を、映画の最後ではなく、最初に持ってきた山崎監督の判断は、間違っていなかったと思います。

 

2位「キングダム」

コミック「キングダム」の劇場版実写化のニュースを聞いたときに、あの壮大なスケールの群像劇が、はたして日本映画の実写化に耐えられるのかと、正直不安でした。しかし、その不安は、すぐに感動と興奮に変わりました。俳優たちの熱演と大規模な中国ロケが生かされた画期的な傑作です。佐藤信介(さとう・しんすけ)監督。

 

主人公・信を演じた山賢人の迫力には驚きました。間違いなく代表作になるでしょう。吉沢亮は、奴隷の漂と秦の王「えい政」の二役をみごとに演じ分けています。えい政の気品、冷静さと熱い思いに、ほれぼれしました。

 

楊端和を演じた長澤まさみのアクションが、あまりにもかっこよいです。クールな美しさがありました。王騎を演じた大沢たかおは、さすがの存在感でした。

 

1位「蜜蜂と遠雷」

原作小説の「蜜蜂と遠雷」が、天才的なピアニストたちを描いた小説だけに、実写映画化が、とてつもなく困難だということは、すぐにわかります。あえて、それに挑戦した石川慶監督は、脚本も手がけています。

 

競い合う4人のピアニストを中心に物語は、進みます。俳優たちの熱意が伝わって来ます。実際の演奏は、世界的に活躍しているプロのビアニストが弾いています。素晴らしいです。

 

1977年生まれの若い監督ですが、周到で大胆な演出が見事でした。信じがたいほどのリアルさを兼ね備え、音楽に包まれた濃密な時間を過ごせました。そして、映画は、感動とともに風のようにさわやかに終わりました。

 


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独断映画ベストテン2019★洋画ベスト5

  • 2019.12.22 Sunday
  • 19:20



私が2019年に劇場で見た作品から選びました。たくさんの名作を見逃していると思いますが、ご了承ください。

 

★5位「サスペリア」

ルカ・グァダニーノ監督の「サスペリア」は、賛否が分かれる作品です。

イタリアンホラー映画の金字塔、1977年制作のダリオ・アルジェント監督の「サスペリア」とは雰囲気が全く違います。リメークではなく、脱構築です。しかし痛いほどストレートな表現は、元祖「サスペリア」とは別な意味でトラウマになる映画です。女優ティルダ・スウィントンが複数の役をこなし、世代も性別も超えた対照的な役を演じ分けました。

 

★4位「ジョアン・ジルベルトを探して」

「イパネマの娘」などで世界的に有名な「ボサノヴァの神様」と呼ばれているブラジルのミュージシャン、ジョアン・ジルベルトの行方を追った音楽ドキュメンタリー映画です。ジョルジュ・ガショ監督です。

 

ドイツ人ジャーナリストのマーク・フィッシャーは、公けの場から姿を消したジルベルトに会うためにリオ・デ・ジャネイロを訪れ、探しますが、本人に会うことはできませんでした。その旅を記録した本が出版される1週間前、フィッシャーは自殺します。

 

偶然この本を手にしたジョルジュ・ガショ監督は、フィッシャーの旅と本の内容に心をうごかされます。フランス生まれのガショ監督もブラジル音楽を愛していました。フィッシャーの夢を実現させるため、監督は、ブラジル中を歩き、ジルベルトゆかりの人や土地を訪ねます。ジョアン・ジルベルトに会いたいという熱い想いを秘めながらも、洗練されたボサノヴァに乗って流れる映像は、とてもエレガントです。

 

そして、監督は、ついにジョアン・ジルベルトへと近づきます。映画の製作は、2018年。ジョアン・ジルベルトは、2019年7月6日に、88歳で亡くなっています。

 

★3位「天国でまた会おう」

原作は、エール・ルメートルが2012年に発表した小説。第1次世界大戦後のフランスが舞台です。政府の尋問を受ける元フランス軍の兵士アルベール・マイヤールの回想という形を取って物語は進みます。アルベール役は、アルベール・デュポンテル監督が務めています。 

 

故意に戦争を長引かせようとする上官の悪事を知ったアルベールは、上官に生き埋めにされます。彼を救い出したエドゥアールは、直後に爆撃を受け、顔の下半分を失います。エドゥアールは家に戻りたくないと戦死したことにして、アルベールと暮らし始めます。

 

権力者が戦争で肥え太り、帰還兵や傷病兵は戦争後も苦しみ続ける。ストレートな戦争批判が根底にあります。しかし戦争の欺瞞性を鋭く問いながら、魔術的といってよい映像美も備えています。単純なハッピーエンドではない、それでいて明るさもある結末が、余韻を残します。

 

★2位「レディ・マエストロ」

マリア・ペーテルス監督は、オランダでは有名ですが、日本では作品が初公開です。女性指揮者の先駆者アントニア・ブリコの半生を描いたドラマ。女性が指揮者になることが不可能とされていた時代に、ブリコは夢を実現します。波乱万丈の人生に、さらに独自の脚色が加わり、実話とは思えない面白さです。

 

アントニア・ブリコの激しい情熱がベースにあるものの、逆境の時に助けてくれる人々の存在なしに、彼女の夢は実現しませんでした。彼女の熱い想いが、幸運を引き寄せたとも言えます。

 

映像に艶があり、ストーリーも緩急が巧みで飽きさせません。アントニア・ブリコをさりげなくさえ続けたロビンの魅力的な生き方に感動します。計算された演出による数々の伏線の回収は見事です。こんなところまで伏線だったとは、という驚きの連続でした。

 

★1位「ROMA ローマ」

「ROMA ローマ」は、アルフォンソ・キュアロン監督が、1970年代のメキシコを舞台に、中産階級の家庭の1年を、若い家政婦の視点から描いたNetflixのオリジナル作品です。

 

キュアロン監督は、脚本・撮影も手がけ、監督自身の幼少期の体験をもとに、家族のドラマを全編モノクロ映像で描きました。撮影監督・エマニュエル・ルベツキが参加できなかったので、監督が撮影監督も兼ねています。「天国の口、終りの楽園」以来、17年ぶりにメキシコで制作・撮影しました。

 

主人公のクレオは、住み込みの家政婦として働いています。クレオは、先住民の血を引いています。中産階級の夫婦と彼らの4人の子供、祖母、同じく家政婦のアデラと暮らしています。掃除、料理、子供の送り迎えなどの日常が、ゆっくりと描かれていきます。そして「痛いほど美しい」シーンが、何度も登場します。

 

淡々とした日々に、さまざまな出来事、事件が起こります。1970年代のメキシコが舞台なので、警官隊が学生を虐殺する場面などが登場します。それが、日常の中で突然起こる点が、異様にリアルです。クレオは、最後に家族と強いきずなで結ばれます。自らも移民であるキュアロン監督が、静かにデリケートに移民問題を提起した作品です。

 


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映画「ひとよ」

  • 2019.12.22 Sunday
  • 19:18



 

桑原裕子が主宰する「劇団KAKUTA」が、東日本大震災をきっかけに2011年に初演した舞台を、白石和彌監督が映画化しました。

 

タクシー会社を営む稲村家の母こはるは、3人の子供達に暴力を振るい続ける夫を殺します。運命を大きく狂わされた3人の兄妹は、傷を隠しながら人生を歩みます。15年の歳月が流れ、3人のもとに母こはるが帰ってきます。

 

陰影に満ちた見事な配役。俳優たちは、競って演技の高みへと登っていきます。群像劇が、魅力的に輝いています。田中裕子の演技には、いつも驚かされます。底なしの存在感は貴重です。

 

松岡茉優は、「蜜蜂と遠雷」での演技も素晴らしかったですが、今回の微妙な立ち位置での柔軟な役のうまさには、名俳優にふさわしい確かな才能を感じました。この若さで、ここまで全体をまとめ上げる力があるとは。感嘆しました。

 

白石監督にしては、突き抜け感が弱いという評価もあるかもしれませんが、家族という関係の不思議さ、絶望と希望の絶妙なバランスは、一つの成果だと思います。

 


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映画「ドクター・スリープ」は「シャイニング」の続編

  • 2019.12.22 Sunday
  • 19:17



1980年公開のホラー映画の金字塔、スタンリー・キューブリック監督「シャイニング」の続編ということで注目された「ドクター・スリープ」を観て来ました。主演はユアン・マクレガーです。

 

1968年公開のSF映画の金字塔、スタンリー・キューブリック監督「2001年宇宙の旅」の続編「2010年」を 1985年に観た時と似たような感覚に襲われました。悪い作品ではないけれど、何かが違います。納得できません。

 

続編は、「シャイニング」の惨劇から40年後。物語は、超能力を持つ子どもの生気を吸い取って生きる集団と主人公のダンとの戦いが描かれます。終盤に入り、戦いの舞台は、惨劇のホテルに移り、「シャイニング」の印象的な場面が登場します。

 

マイク・フラナガン監督は、キングの原作に忠実でありつつ、キューブリックの映画と調和させるという離れ業に挑みます。表面的には狙いは満たされたように見えますが、ギクシャクして、納得できない内容になりました。原作者のスティーブン・キングが絶賛していることが信じられません。

 


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映画「シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢」

  • 2019.12.22 Sunday
  • 19:16



フランスに実在する建築物で、ひとりの郵便配達員の男が33年の歳月をかけ、1人で完成させた宮殿「シュバルの理想宮」の実話が映画化されました。周りの中傷に耐え、信念を貫いたシュヴァルは、私に最も希望を与えてくれた人です。

 

シュヴァルが、建造を始めるきっかけになった運命の石につまずく前の30分の物語が好きです。郵便配達員であるため、毎日30キロ歩き、様々な自然と触れ合い、たくさんの絵葉書を見て海外の建築物を知りました。

 

宮殿建造では自然から学び、世界中の文化を取り入れています。子どもの遊び場として構想された宮殿は、世界の文化の融合という高い目的を持つようになったと思います。

 

撮影は、建造途中の場面を含め、実際のシュヴァルの理想宮で行われました。うっすらと雪が積もった宮殿、無数の蝋燭が灯された宮殿の場面は、夢のように美しかったです。幸せな気持ちになりました。

 

映画では触れられていませんでしたが、建造には相当のお金がかかっています。今では、VRの立体空間の中で庭園や宮殿を作ることができます。実際の敷地や建造の材料が入りません。SDGs(エズ・ディー・ジーズ)なアートが可能です。私もVR空間の広大な敷地で巨大な彫刻物を作り続けています。

 


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ドキュメンタリー映画「i-新聞記者ドキュメント-」

  • 2019.12.15 Sunday
  • 08:31



ドキュメンタリー「i-新聞記者ドキュメント-」。記者会見での菅義偉内閣官房長官への鋭い質問で知られる東京新聞の望月衣塑子(もちづき・いそこ)記者の姿を追っています。しかし、このドキュメンタリーの狙いは、菅官房長官対望月記者ではないでしょう。

 

森達也監督が映画の中で語る「記者として当たり前のことをしているのに、なぜ注目されるのか」ということが、この作品のポイントだと思います。


記者クラブ、記者会という閉鎖的な制度によって、権力の監視役であるはずのマスコミが、権力に利用され事実を伝えなくなっているという現実です。

 

このことは、福島の原発事故の報道で、誰の目にも明らかになりました。記者会見のライブ映像がインターネットで公開されたからです。各紙が足並みをそろえている新聞記事の内容と、実際の記者会見の内容が大きく異なっていました。

 

そういった現状に果敢に挑戦し続ける望月記者。カメラは、彼女の行動を追い続けます。しかし、ハッとするような場面は登場しません。望月記者は、終始前向きで、カメラの前で弱さを見せることはありませんでした。

 

森達也監督は、これまで、社会とは別の視点を提供する作品を制作してきました。だから、心を揺さぶられる場面に出会えました。しかし、今回の作品での望月記者の像は変わりません。よく知っている姿が映し出されているだけです。驚きはありませんでした。

 

音楽やナレーションに頼ることなく、記録された映像の力だけで、別の見方を提示してきた森監督のドキュメンタリーとしては、やや物足りなかったです。菅(すが)官房長官と望月記者が戦うアニメの挿入も、作品を薄っぺらいものにしています。残念です。


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映画「ジョアン・ジルベルトを探して」

  • 2019.12.15 Sunday
  • 08:28



「イパネマの娘」などで世界的に有名な「ボサノヴァの神様」と呼ばれているブラジルのミュージシャン、ジョアン・ジルベルトの行方を追った音楽ドキュメンタリー映画です。2018年製作。スイス・ドイツ・フランス合作。ジョルジュ・ガショ監督です。

 

ジョアン・ジルベルトは、2008年8月にリオ・デ・ジャネイロでコンサートに出演した後、公けの場に姿を現すことは、ありませんでした。10年後、ドイツ人ジャーナリストのマーク・フィッシャーは、ジルベルトに会うためにリオ・デ・ジャネイロを訪れ、探しますが、本人に会うことはできませんでした。その旅を記録した本「オバララ ジョアン・ジルベルトを探して」が出版される1週間前、フィッシャーは自殺します。

 

偶然この本を手にしたジョルジュ・ガショ監督は、マーク・フィッシャーの旅と本の内容に心をうごかされます。フランス生まれのガショ監督もブラジル音楽を愛していました。フィッシャーの夢を実現させるため、監督は、ブラジル中を歩き、ジルベルトゆかりの人や土地を訪ねます。

 

マーク・フィッシャーの旅をなぞり、地元の風景とともに彼の本の一節が紹介されます。多くの人たちが登場しジョアン・ジルベルトについて話します。ジョアン・ジルベルトに会いたいという熱い想いを秘めながらも、洗練されたボサノヴァに乗って流れる映像は、とてもエレガントです。

 

ジョアン・ジルベルトが一日中こもってボサノヴァを生み出したとされる、バスルームが見つかりますが、その一見地味で、こじんまりとした佇まいが、ボサノヴァにふさわしいと感じました。

 

そして、監督は、ついにジョアン・ジルベルトへと近づきます。映画の製作は、2018年。ジョアン・ジルベルトは、2019年7月6日に、88歳で亡くなっています。


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映画「蜜蜂と遠雷」

  • 2019.12.15 Sunday
  • 08:26



ピアニストたちの群像劇です。構想12年、取材11年、執筆7年という、長い時間をかけた渾身の大作です。

 

天才的なピアニストたちを描いた小説だけに、実写映画化が、とてつもなく困難だということは、すぐにわかります。あえて、それに挑戦した石川慶監督は、脚本も手がけています。

 

石川監督は、東北大学で物理を学んだ後、映画監督を志し、ポーランドの国立大学、ウッチ映画大学に留学して学びました。短編映画などの制作でキャリアを積み、日本で映画を作りたいと帰国。ドキュメンタリーやCMなどを手掛けてきました。日本とポーランドの合作企画『BABY』ではプチョン国際ファンタスティック映画祭の企画マーケットでグランプリを受賞しています。2017年に「愚行録」で長編映画デビューを果たしました。

 

1977年生まれの若い監督ですが、周到で大胆な演出が見事でした。信じがたいほどのリアルさを兼ね備え、音楽に包まれた濃密な時間を過ごせます。そして、映画は、感動とともに風のようにさわやかに終わりました。

 

ピアニストで競い合う4人のピアニストを中心に物語は、進みます。


母親の死をきっかけに表舞台を去り今回のコンクールで再起をかける、かつての天才少女・栄伝亜夜を、松岡茉優が演じています。


森崎ウィンは、才能を認められた天才で、コンクールの優勝候補のマサル・カルロス・レヴィ・アナトール役。
年齢制限のため「これが最後」と覚悟を決めコンクールに出場した楽器店勤務のサラリーマン高島明石は、生活に根付いた音楽を目指しています。演じたのは、松坂桃李。
天真爛漫な野生的演奏で、ピアノの大家のホフマンに見いだされ、推薦状をもらっている風間塵役は、2019年から俳優として活躍し始めた新人の鈴鹿央士です。

 

4人とも、それぞれの個性を十分に表現していました。

 

実際の演奏は、世界的に活躍しているプロのビアニストが弾いています。素晴らしいです。

 

原作の中に登場する架空の曲「春と修羅」は、藤倉大が、原作に合わせて作曲しています。即興部分のカデンツァでは、4人の個性が見事に表現されています。


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