2018年独断映画ベスト10-邦画ベスト5
- 2018.12.23 Sunday
- 21:07
私が2018年に劇場で見た映画に限っていますので、ご理解ください。
★5位「パンク侍、斬られて候」
大風呂敷を広げに広げた奇想天外でパンクな作品です。
芥川賞作家の町田康が2004年に発表した時代小説を、宮藤官九郎の脚本、石井岳龍監督のメガホンで映画化しました。
権力闘争が続く黒和藩と、新興宗教「腹ふり党」を巡る物語ですが、あらすじをか説明しても、この映画の突き抜けた魅力は伝わりません。
石井監督が、久しぶりにやりたい放題の演出を見せてくれました。登場人物全員が、主演級の豪華なキャストです。スタッフも超一流の人たちをそろえました。そして、思いっきり遊んでいます。
★4位「縄文にハマる人々」
山岡信貴が監督を務め、5年間にわたって取材をつづけました。ドキュメンタリーは、縄文にハマっている人たちの、とんでもない解釈から始まり、笑っているうちに、得体のしれない縄文の魅力に包まれます。全国の博物館を巡り、1000以上の土器や土偶が、次々に紹介され、謎の渦に巻き込まれていきます。
お気楽に始まって、徐々に縄文のわからなさ、異質な世界へと連れて行かれ、とても脳みそが刺激されました。
★3位「花筐 HANAGATAMI」
80歳の大林宣彦監督が檀一雄の文学作品を映画化しました。1941年を舞台に、必死に生きる8人の若者の姿を描く群像劇。大林監督の商業映画デビュー作「HOUSE ハウス」(1977年)より以前に書き上げられていた幻の脚本を、40年の時を経て完成させました。なんという、みずみずしい映像でしょう。
「映像の魔術師」と呼ばれた個人映画時代の奇想に満ちた濃密な映像が、次から次へと押し寄せてきます。50年間の大林ムービーが、一つにつながったのです。原点にして集大成というのは、このような作品のことです。
★2位「万引き家族」
「万引き家族」は、是枝裕和監督が、万引きを繰り返す家族の姿を通して、人と人のつながりを描いた群像劇です。2018年・第71回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品し、日本映画としては21年ぶりに最高賞パルムドールを受賞しました。
「万引き家族」にはこれまで出会ったことがない驚くべきシーンが、何度も登場します。ラストに向けて、一人一人の秘密が明らかになっていきます。そして緊密な物語の全体が見渡せるようになります。見事は脚本です。是枝監督は、原案、脚本、編集も担当しています。
樹木希林の味わい深い演技にも感動しましたが、安藤サクラの超絶的な演技には、感嘆しました。この2人の怪物級の演技に比較すると、小粒ではありますが、松岡茉優も熱演しています。そして子役のうまさは、是枝作品の特徴です。
親から虐待されている少女から、年金で暮らす高齢者まで、様々な年代の心の襞を繊細に描き出します。是枝監督の心の柔らかさ、深さ、度量の広さを感じます。
★1位「カメラを止めるな!」
上田慎一郎監督作品「カメラを止めるな!」は、2018年最大の事件です。
監督・俳優養成スクール・ENBUゼミナールの「シネマプロジェクト」作品として企画されました。12人の役者が集まりワークショップした後に、撮影に入りました。上田監督・脚本・編集ですが、劇団「PEACE」の舞台「GHOST IN THE BOX!」を原案にしています。
俳優たちは、皆無名の新人で、映画に初めて参加した人が過半数でした。撮影期間は8日間。制作費は300万円です。
まず37分のB級ゾンビ映画が流れます。そして、後半には企画、撮影の舞台裏が明らかになります。ここからが、怒涛の面白さです。何度も涙が出るほど笑いました。
ゾンビ映画であるとともに、コメディ映画であり、ファミリー映画であり、青春映画でもあります。笑いの後に、気持ちの良い感動が訪れます。
上田監督の見事な脚本、参加者の情熱に支えられていますが、低予算、撮影条件の悪さや撮影中の偶然が、この作品をさらに魅力的にしています。
劇場でたくさんの人たちと一緒に笑い、楽しむことで、面白さが膨らむという映画本来の魅力が実感できます。
★アイドルを起用しながら、アイドル映画を超える作品も目立ちました。
「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」は、湯浅弘章監督の長編商業映画デビュー作です。
上手く言葉を話せない高校1年生の志乃と音楽好きだけれど音痴な同級生・加代は、バンドを結成し自分の生き方と向き合います。
大写しが多い、不器用なカメラアングルが、かえってドキュメンタリーのような生々しさを醸し出しています。志乃役の南沙良と加代役の蒔田彩珠のみずみずしい演技に圧倒されます。
「響 HIBIKI」は、月川翔監督が映画化しました。原作は、15歳の天才女子高生・鮎喰響を主人公にした柳本光晴のコミック「響 小説家になる方法」です。
映画初出演となる「欅坂46」の平手友梨奈が、主演してます。後半に向けて徐々に緊急感が高まり、綺麗な結末を迎えました。平手の独特な存在感なしには、この映画は、ここまで説得力を持たなかったでしょう。