kinematopia91.12(3)『コルチャック先生』『木靴の樹』『テルマ&ルイーズ』『仮面の情事』
- 2016.04.07 Thursday
- 10:38
「『コルチャック先生』(アンジェイ・ワイダ監督)も名作と言っていいだろう。白黒の落ちついた、それでいて艶のある映像。場面を的確に盛り上げる音楽。一切の美化を遠ざけ、静かに淡々と描くことで、歴史的な事実の重みが、どれほど心の奥に響くことか」 「ラストの幻想シーンは、悲惨な否定しえない現実に裏打ちされていなければ、単なる逃避になるが、ワイダはそこに表面的な歴史を超えたリアリティを込めることに成功している」
「『木靴の樹』(エルマンノ・オルミ監督)に、やっと劇場で会えた。期待を裏切らない秀抜な映像。緑を中心に北イタリアの農村風景、人々が冴えわたっている。出演者は皆農民。子供たちも愛くるしい」「この作品のいとおしさは、観た人が静かに味わうものだね」
「『テルマ&ルイーズ』(リドリー・スコット監督)は、期待外れだった。後半のニューメキシコの風景の美しさはさすがというほかないが、ストーリーは10年古い」「フェミニズム映画との評価があるが、フェミニズムの現在的な地平とは相いれない。古いパターンの活劇だよ」「『仮面の情事』(ペーターゼン監督)は、ひと癖ある配役だが、最初の20分でオチが分かってしまった」「こんな決まりきったオチで満足しているのだろうか」