映画「バスキア」、落書きアーティストを懐かしむ感傷ばかりが感じられる
- 2016.02.03 Wednesday
- 16:39
「バスキア」( 1996年、アメリカ映画)は、ジュリアン・シュナーベル監督・脚本の作品です。1980年代の落書きアーティストを映画化する意味は、漂白されて、すべてがパッケージ化されつつある1990年代に、その芸術の暴力性を思い返すことでなければならないでしょう。しかし、昔を懐かしむ感傷ばかりが感じられ、腹立たしいまでに甘ったるい匂いが立ちこめています。つきあいで出演したデニス・ホッパーやデヴィッド・ボウイは、どうかしています。
だいたい監督が、バスキアに近すぎます。あんなに親しくては、距離感を保つことなどできないでしょう。個性的な俳優たちも妙に小さくまとまり、脇役に徹しているようで、歯がゆいです。バスキアとアンディ・ウォーホルの関係も、あんな奇麗事だったのか。もっとアーティストらしい葛藤はなかったのでしょうか。
そんな中で、ジャーナリスト役のクリストフォー・ウォーケンが、バスキアの孤独さを引き出していたのがせめてもの救いです。歯に絹を着せぬ鋭い質問をぶつけながらも、言葉の根底に励ましがあり、それを理解したバスキアが微笑み返すシーンが、心に残りました。