映画「インディアナポリスの夏・青春の傷跡」は、マーク・ペリントン監督のデビュー作

  • 2016.01.22 Friday
  • 23:22




「インディアナポリスの夏・青春の傷跡」(1997年。アメリカ映画)は、「隣人は静かに笑う」の切れの良いどんでん返しが記憶に新しいマーク・ペリントン監督のデビュー作です。サンダンス映画祭で審査委員特別賞に輝きました。

1954年、朝鮮戦争で兵役してきた対照的な性格の二人の青年が故郷インディアナポリスに帰る汽車の中で出会い、友情で結ばれます。戦争と抑圧の時代、子離れしない母親の時代に、自分らしい生き方を求めて迷い続ける青年を、ときにユーモラスに、ときにシリアスに描いていきます。

「隣人は静かに笑う」とは、かなり違う舞台ですが、シャープな映像感覚は、この作品でも何度か見ることができました。懐かしいオールデイズに乗せて、ジェレミー・デイヴィス、ベン・アフレックとも50年代の雰囲気を醸し出しています。

周囲の女性たちも、なかなか個性的で、彼女たちになら悩まされるのもうなずけました。母親役のレスリー・アン・ウォーレンがとびきりの怪演です。



超能力と多重人格を扱った水谷俊之監督の映画「ISOLA」

  • 2016.01.22 Friday
  • 23:17




「ISOLA」(2000年)は、貴志祐介 「十三番目のペルソナ人格ISOLA」を原作とした水谷俊之監督の作品です。「勝手に死なせて!」「人間椅子」と、屈折した人間心理を突き抜けた表現で作品化してきた水谷俊之監督。鋭い映像感覚は高い水準にありました。

超能力と多重人格を扱った「ISOLA」も人間心理を描いたものですが、阪神大震災への配慮からか、製作上の制約からか、水谷監督としては大胆さが欠けているように感じました。

黒澤優の拒絶的な表情が抜群にいい。演技はこれからですが、目に力がある女優なので、今後が楽しみです。癒し系の女優と見られていた木村佳乃は、人の心が読める超能力者の孤独を演じて、女優としての幅を広げるきっかけがつかめたと思います。

「 M/OTHER」(諏訪敦彦監督)で強烈な印象を残した渡辺真起子は、激しくはあるが人間としての掘り下げが乏しい役で、かわいそうな気がしました。



映画「リング0〜バースディ〜」は、「リング」シリーズの完結編

  • 2016.01.22 Friday
  • 23:13




鶴田法男監督の「リング0〜バースディ〜」(2000年)は、「リング」シリーズの完結編ということですが、「バースディ」の中編「レモンハート」を基にした組み立てに無理があります。あの作品群は、あくまで外伝として楽しむものです。

山村貞子が、呪いのビデオテープをなぜ生み出すことになってしまったのかを解き明かしたと宣伝されていますが、私は第1作「リング」自体の説明で十分だと思います。

鶴田法男監督は、恐がらせるテクニックには精通しています。しかし、ストーリーが薄いので、恐怖の質も浅いものにならざるを得ません。

仲間由紀恵は美少女ですが、山村貞子役としては線が細すぎます。地味な配役でしたが、麻生久美子はラストに向けて演技に熱がこもり、「カンゾー先生」(今村昌平監督)の体当たりの演技を思い出させました。



映画「うずまき」、ギャグと恐怖を組み合わるセンスが面白い

  • 2016.01.22 Friday
  • 20:58




ウクライナ出身、東京育ちのHiguchinsky監督は、ミュージック・ビデオ・クリップで高い評価を得ていますが、映画は「うずまき」(2000年)がデビュー作です。くすんだ色調は「怪奇大作戦」を連想させます。

懐かしい雰囲気に最新のCGを持ち込み、ギャグと恐怖を組み合わるセンスは面白い。コミック色が強いですが、突然怖いシーンを叩き付けるので、観客は席から飛び上がるくらい驚きます。

うずまきだらけで、おもちゃ箱のような構成ですが、映画としての収まりの面で、大杉漣、高橋恵子の演技に助けられています。

髪を膨張させる関野恭子役の佐伯日菜子は、思い切って漫画チックにデフォルメした演技が笑えます。斎藤秀一役フィーファンは、奇妙な味を漂わせてハマリ役。ヒロインの初音映莉子は、演技はこれからという感じですが、清楚な雰囲気で好感が持てました。



映画「富江Replay」、宝生舞の冷たい美しさが富江役にぴったり

  • 2016.01.22 Friday
  • 20:52




光石冨士朗監督の「富江Replay」(2000年)は、「富江」(及川中監督)の続編ではなく、オリジナルな作品です。伊藤潤二原作の「富江」は、男を狂わせ自分をバラバラに解体させて増殖していきますが、映画もさまざまに原作を切り刻み、それぞれに変化増殖していくことを期待しています。

宝生舞は、なかなか妖しい雰囲気を漂わせていました。冷たい美しさは富江役にぴったりでしたが、脚本が富江の人間性、死ねない辛さを表現しようと考えたので、恐怖がしぼんでしまいました。富江を人間に近付ける必要はありません。富江は人間的な感情から離れた存在であってこそ、迫力があるはずです。



映画「シュリ」、民族分断という現実、スパイと情報部員の悲劇的な恋

  • 2016.01.22 Friday
  • 18:55




「シュリ」(1999年。韓国映画)は、カン・ジェギュ監督・脚本の作品です。冒頭の北朝鮮での特殊工作員の訓練シーンは、息を飲むほどに壮絶です。韓国、北朝鮮の緊張関係、民族分断という現実の裏づけがあるだけに、リアリティは痛いほどです。

北朝鮮の工作員を人間として描いていたのも共感できました。そして、スパイと情報部員の悲劇的な恋が最大の効果を発揮しています。ラストのキャロル・キッドが歌う「When I Dream」は、心に染みました。

ハン・ソッキュは「8月のクリスマス」(ホ・ジノ監督)とは180度違う硬派の男を演じきっていて見事です。キム・ユンジンも苦悩をうまく表現していました。編集も音響も非常に切れが良い。

ただ、液体爆弾CTXの原理があまりにもお粗末だったり、情報部員としてはかなり不用意な行動が目立つなど、娯楽作としても疑問な点はあります。しかし、ハリウッド映画に負けない娯楽作をつくろうというカン・ジェギュ監督の意気込みが全編から伝わってきます。



映画「マグノリア」、12人の男女の一日をタペストリーのように精緻に編み上げる

  • 2016.01.22 Friday
  • 16:36




ポール・トーマス・アンダーソン監督・脚本の「マグノリア」(1999年。アメリカ映画)は、ロバート・アルトマン監督の大傑作「ショート・カッツ」を連想させるアンサンプル映画です。12人の男女の一日をタペストリーのように精緻に編み上げていきます。

それぞれの立場は過酷で、追い詰められていきますが、みつめる監督のまなざしは不思議に温かい。偶然についての歴史的なエピソードを並べた巧みなプロローグから、手際の良い人物紹介、そして登場人物全員が「Wise Up」の「もうとまらない」という歌詞を口ずさむシーンの素晴らしさはどうでしょう。

心地よい肩すかしを楽しみながら、3時間7分を過ごすことができます。「マグノリア」という題から、あからさまな華を求めてはいけません。ラストの控えめな微笑み以外は。

私にとっての本当の驚きは、想像を絶したクライマックスシーン(アイデアは浮かんだとしても、実際にやってしまうとは。すべてを洗い流す土砂降りの雨。It rains frogs.)ではありません。教祖役のトム・クルーズの名演技です。「アイズ・ワイド・シャット」(スタンリー・キューブリック監督)でさえ、枠を超えられなかった彼が、群像劇で花開くとは、驚きです。12人の個性的な俳優たちの中でも、ひときわ存在感のある青年を演じ、強烈な印象を残しました。



映画「スリーピー・ホロウ」、ティム・バートン監督の壮絶な映像美

  • 2016.01.22 Friday
  • 16:24




すべてがティム・バートン監督にコントロールされた「スリーピー・ホロウ」(1999年。アメリカ映画)の映像美に見とれました。自分のテイストを守りながら、有名なワシントン・アーヴィングの原作「スリーピー・ホローの伝説」をもとにホラー娯楽作をつくってしまうティム・バートン。

確かに血みどろであり、首がぽんぽん切られていきますが、ハメを外すほどのおふざけはありません。今回は「マーズ・アタック!」以上に、そつなくまとまっています。深いトラウマを抱えながら、ハッピーエンドを描けるようになった監督の幸せを、批判するつもりはありません。

「エド・ウッド」のジョニー・デップと「アダムス・ファミリー」(バリー・ソンネンフェルド監督)のクリスティーナ・リッチの共演というバートンらしい取り合わせとともに、尖った歯をむき出しにしたクリストファー・ウォーケンの怪演が嬉しいです。

そして、バートン最愛のリサ・マリーは、天使のような母親役で登場します。最後は「鉄の処女」に入れられて全身串刺しになります。何という壮絶な美しさでしょう。ヴアンパイア役で名高いクリストファー・リーの起用も忘れてはいけないポイントです。



映画「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ」、デュ・プレ姉妹の愛と確執

  • 2016.01.22 Friday
  • 16:00




アナンド・タッカー監督の「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ」(1998年。イギリス映画)は、イギリス最高の天才チェリスト、ジャクリーヌ・デュ・プレと姉のヒラリー・デュ・プレの愛と確執を描いた迫力あるドラマです。「シャイン」(スコット・ヒックス監督)に並ぶ佳作です。

ジャクリーヌは、28歳の頂点の時に難病の多発性硬化症に冒されてステージを降り、42歳で1987年に亡くなっています。「ほんとうの・・・」という邦題は、伝説化され神格化されている天才の実像に迫ろうという姿勢を示していますが、それを知らないと奇異な感じを受けます。欧州では抗議のデモがあったといいます。

前半はそっけないほど淡々と流れていきますが、後半に入って前半の場面が眩しく活きてきます。予想はしていたものの、エルガーのチェロ協奏曲の鬼気迫るような音色に圧倒されました。この音に出会えただけでも収穫です。

自分の才能と人生に戸惑い苦悩するジャクリーヌをエミリー・ワトソンが渾身の力で演んじました。印象深い「奇跡の海」(ラース・フォン・トリアー監督)以上にリアルだと思います。ヒラリー役はやや美化されている気もしますが、レイチェル・グリフィスの演技に嫌味はありません。



キューバ音楽のドキュメンタリー映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」

  • 2016.01.22 Friday
  • 15:21




「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」(1999年。ドイツ・アメリカ・フランス・キューバ合作)は、キューバ音楽の素晴らしさに感動したヴィム・ヴェンダース監督とライ・クーダーによって企画された至福の音楽ドキュメンタリーです。

演奏者の生き生きとした表情と人生の年輪が刻み込まれた明るい音楽に包まれて、幸せな気分になれます。作為を感じさせない落ち着いた構成ながら、ニューヨーク・カーネギーホールでの歴史的なコンサートが実現する過程を追ううちに、アメリカとキューバの複雑な歴史的関係が静かに浮かび上がります。脳天気なようで、意外に深い作品です。

自分の人生を語り、楽しそうに演奏する往年のミュージシャンたち。忘れられた人たちが集まり、再び脚光をあびます。一人ひとりが輝いています。

最初に登場する90歳を超えたギタリスト、コンパイ・セグントのダンディーさ、天性のシンガーであるイブライム・フェレールの人なつっこさ、ピアニストのルービン・ゴンサレスの華麗なテクニックと繊細な感性。その音楽は本当に心地よいのですが、過酷なキューバの歴史が生み出したものであることも忘れてはなりません。



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