映画「ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総進撃」、時代への切実なメッセージ

  • 2016.01.14 Thursday
  • 20:52




「ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総進撃」(2001年)は、金子修介監督作品です。まず、最初のシーンで「Godzilla」(ローランド・エメリッヒ監督)を皮肉る金子修介のユーモアに感心しました。そして、ゴジラが第2次世界大戦で死んだ人々の残留思念であるという設定に時代への切実なメッセージを感じて納得しました。

さらには、ガメラシリーズでお馴染みの日本の古代伝説とからめるストーリー展開にも、にやりとさせられました。物語の厚みもCGの美しさも、これまでのゴジラシリーズを上回っていました。

主人公はTV番組「デジタルQ」のスタッフ・由里。この辺は、ハリウッド映画っぽいです。由里を演じた新山千春が素晴らしい。華奢な身体ながら、ゴジラをリポートしようとする気迫が、清清しく伝わってきます。応援したくなる日本の若手女優の一人です。

キャスティングといえば、多彩なメンバーに加えて、ほんの数秒の役で、実に多くの有名な俳優たちが登場します。それも、楽しみの一つです。ゴジラが悪役に徹し、いつも白眼をむいているのもユニークでした。動きも早いです。

2001年作品。日本映画。105分。 配給=東宝。監督=金子修介。脚本長谷川圭一、横谷昌宏、金子修介。音楽=大谷幸。撮影=岸本正広。美術=清水剛。録音=斎藤禎一。照明=粟木原毅。編集=冨田功。特殊技術=神谷誠。特殊撮影=村川聡。特美=三池敏夫。特殊照明=齋藤薫。造型=品田冬樹。立花由里=新山千春、立花泰三=宇崎竜童、武田光秋=小林正寛、門倉春樹=佐野史郎、丸尾淳=仁科貴、江森久美=南果歩、三雲勝将=大和田伸也、日野垣真人=村井国夫、広瀬裕=渡辺裕之、小早川=葛山信吾、崎田=中原丈雄、宮下=布川敏和、官房長官=津川雅彦、伊佐山嘉利=天本英世



映画「ピストルオペラ」、鈴木清順監督の徹底して遊びまくる自在さ

  • 2016.01.14 Thursday
  • 20:43




「夢ニ」から10年。鈴木清順監督の「ピストルオペラ」(2001年)を観ることができたことを本当に嬉しく思いました。「ツィゴイネルワイゼン」「陽炎座」「夢ニ」を3部作と称していますが、前2作が耽美的な映像と激しい情念を基本にしているのに対して、「夢ニ」は、もっと軽い印象を受けました。

「ピストルオペラ」は、殺し屋を主人公にして死を描きながら、さらに「軽み」が徹底しているように感じました。枯れている軽みではなく、徹底して遊びまくるという自在さです。既成観念を捨てて、身をまかせ、楽しみ、後には何も残りません。

和服にブーツの江角マキコの立ち振る舞いが、凛としてかっこいい。話さない方がもっといい。山口小夜子は、相変わらず妖しい雰囲気をまき散らしています。新人の韓英恵の幼さと妖艶さの共存に驚きました。樹木希林、加藤治子、平幹二朗と、超ベテランが脇を固めています。

しかし、「殺しの烙印」のリメークなのですから、ぜひとも宍戸錠に登場してもらいたかったと感じたのは、私だけではないでしょう。



トム・クルーズがハリウッドでの映画権を買い、自らプロデュースした映画「バニラ・スカイ」

  • 2016.01.14 Thursday
  • 16:45




キャメロン・クロウ製作・脚本・監督の「バニラ・スカイ」(2001年。アメリカ映画)は、スペイン映画「オープン・ユア・アイズ」(アレハンドロ・アメナバール監督)のリメイクです。トム・クルーズがハリウッドでの映画権を買い、自らプロデュースし主演しています。

オリジナルのどうしようもない閉塞感、絶望感が薄れ、華やかなラブサスペンスになっているのは、さすがハリウッド。オリジナル作品に出演したペネロペ・クルスが共演し、ニコール・キッドマンと離婚したトム・クルーズと恋愛中というのも、出来過ぎた展開です。この作品の製作そのものが選ばれた仮想現実のようです。おっと、ネタばれ。

いつも混雑しているニューヨークのタイムズ・スクエアが、デヴィッドただ一人になるという驚くべきシーンから始まります。ポップ・カルチャーの雰囲気もしっかり出ていて、なかなか良いです。きわどい会話をしつつ自滅的な運転をして死ぬジュリーを演じるキャメロン・ディアスに感心しつつ、ペネロペ・クルスとの対比を楽しみました。ファッションも対照的です。

独創的な選曲は、ロック・ジャーナリストとしてスタートしたキャメロン・クロウらしいです。ただ、自動車事故で醜くなったデヴィッドの顔の崩れ加減が、オリジナルに比べて不満です。作品のインパクトよりも、自分の顔を選んだトム・クルーズ。



映画「ヴィドック」、ハリウッドとは違った黄金色を基調にした絵画的質感

  • 2016.01.14 Thursday
  • 16:07




「ヴィドック」(2001年品。フランス映画)は、「ロスト・チルドレン」「エイリアン4」などでビジュアル・エフェクトを手がけてきたピトフの初監督作品です。最新デジタルカメラ"HD24p"を全編に使用しながら、ハリウッドとは違った絵画的質感のデジタルムービーとなっています。

ジャンパルジャンのモデルともなった実在の私立探偵・ヴィドック。彼が犯人に殺されるというショッキングなオープニングから、畳み掛けるように真相が明らかになっていきます。ケレン味たっぷりといって良いような過剰な雰囲気。ピトフ監督はギュスターヴ・モローを参考にしたといいますが、黄金色を基調にした色彩は、ゴシック的なテイストとマッチしていました。

しかし、ジャン・ラバスやマルク・キャロが一緒なのだから、ゴシック的な要素を、もっと強調しても良かったのではないかと思います。まがまがしい錬金術師の部屋は、もっとなめるように描いてほしかったです。そうすれば、ラストに向けて、さらに盛り上がったはずです。

また、ギュスターヴ・モローを意識するのなら、闇の中の宝石のような色彩をちりばめてほしかっですた。派手な演出はありましたが、どうも見せ場の重みが足りません。映画の醍醐味は、編集に負う面が大きいからだと思います。



2001年のカンヌ映画祭でパルムドールを受賞した映画「息子の部屋」

  • 2016.01.14 Thursday
  • 15:53




ナンニ・モレッティ監督の「息子の部屋」(2001年。イタリア映画)は、2001年のカンヌ映画祭でパルムドールを受賞しました。平穏な日々を送っていた家族が、息子のでき死によって、それぞれが苦しみ、家族がバラバラになりかけます。しかし、息子の恋人との出会いが、再生へのささやかなきっかけになります。

1つひとつの会話、しぐさがていねいに作られていて、静かにしみ込んでくるような感動を覚えました。この作品に心を動かされなかった人は、かなり幸せな人なのかもしれません。肉親の死を経験した人には、個々のエピソードがダイレクトに共感できるはずです。

父親は、患者の心の悩みを治療する精神分析医。父は息子との約束を守っていれば、息子はダイビングに行かず事故にもあわなかったのではないかという自責の念にとらわれます。そして、精神状態が不安定になり、診療を断念します。自己のトラブルに対処できない精神分析医を皮肉っぽく描くこともできましたが、モレッティ監督は父の悲しみに寄り添い、自ら演じます。

事故直後、激しい悲嘆にくれていた母親よりも、次第に深い悲しみに襲われる父親のリアルさ。そして、かすかな希望。モレッティ監督は、すべてを優しく思いやりに満ちた視線でみつめ続けます。2000年にパルムドールを獲得したトリアー監督とは、正反対のタイプです。



映画「フロム・ヘル」、コラージュを多用した巧みな映像が魅力

  • 2016.01.14 Thursday
  • 15:26




「フロム・ヘル」(2001年)は、ヒューズ・ブラザーズ(アルバート・ヒューズ、アレン・ヒューズ)監督作品です。1888年の秋、切り裂きジャックは10週間に5つの儀式的で凄惨な殺人を犯します。しかし事件は迷宮入りします。その後、さまざまな犯人像がささやかれます。

この作品は、事件の背後にフリーメイソンとイギリス王室を置いている。ただし、作品の魅力はストーリー展開ではなく、コラージュを多用した巧みな映像にあります。陰惨で冷え冷えとした質感。セットもライティングも凝っています。

惨殺屍体は無気味なほどリアルで、やりきれなくなります。やりきれないと言えば、5人仲間の2人が相次いで殺されても、夜の街に1人で出かけて行って殺される娼婦たちの破滅指向も、不自然でやりきれません。そして不必要な裸のエレファント・マンまで登場させてしまうヒューズ兄弟のマニア向けサービスもやりきれません。

妻子が死に深い悲しみから立ち直れずにアヘンを吸い、事件の幻覚を見るアバーライン警部を演じるジョニー・デップ。その憂いに満ちた美しさは、さすがです。自称"切り裂きジャック・オタク"としての会心の演技を見せます。娼婦メアリ役のヘザー・グラハムは、美貌よりも生活に疲れた疲労感が印象的。唯一助かる娼婦ですが、ホラーならば彼女が一番惨殺にふさわしい存在だと思います。



映画「魚と寝る女」、猟奇的なストーリー、シリアスにみせかけたコメディ

  • 2016.01.13 Wednesday
  • 23:41




「魚と寝る女」(2000年。韓国映画)は、キム・キドク監督・脚本の作品です。2001年ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭のグランプリを受賞しました。

不思議な作品です。墨絵のように幽玄で美しい湖に叙情的な音楽が重なる耽美的な映像。優れた日活ロマンポルノのような情念あふれる猟奇的なストーリー。そして、寓話的なラストシーン。

釣り針の束を飲み込み、それを引き抜くという痛覚を刺激される場面もありますが、シリアスにみせかけたコメディのようにも思えます。魅力的というば魅力的、中途半端というば中途半端。ただ、韓国映画の新しい側面を見せてくれた作品と言えます。

何といっても、一言も口を聞かず、いつも不機嫌そうにしている官能的な釣り場支配人のヒジンを演じたソ・ジュンに最大級の拍手を送ります。スタイルもルックスも美形の俳優なのですが、釣りのえさのミミズを食いちぎったり、カエルをたたき潰して皮を剥いだり、股に釣り針の束を押し込んだりと、怪演の域に達しています。



映画「ビューティフル・マインド」、数学の天才が病いと共存しながらノーベル賞を受賞するまでの感動の物語

  • 2016.01.13 Wednesday
  • 23:35




「ビューティフル・マインド」(2001年。アメリカ映画)は、ロン・ハワード監督作品です。数学の天才が精神分裂(統合失調)病と闘い、妻の愛に支えられ病いと共存しながらノーベル賞を受賞するまでの感動の物語。2002年のアカデミー賞で作品賞と監督賞を獲得しました。

数学の天才を主人公にした作品は、少ないようで結構あります。「π(パイ)」(ダーレン・アロノフスキー監督)や「グッド・ウィル・ハンティング」(ガス・ヴァン・サント監督)が、思い浮かびます。

「ビューティフル・マインド」は、ジョン・ナッシュの伝記をもとに脚色したものですが、「グッド・ウィル・ハンティング」、「シャイン」(スコット・ヒックス監督)、「ファイト・クラブ」(デイビッド・フィンチャー監督)を足して3で割ったような印象を受けました。

米ソ冷戦下の緊張を強調した脚本は良くできていますが、原作にあった同性愛の問題を避けたので、ナッシュの苦悩の深さが十分に生かされていないと思います。

ジョン・ナッシュ役のラッセル・クロウは、さすがです。知性と精神の病が共存する役になりきっていました。ただ、かすかなあざとさが鼻につきました。

特筆すべきはアリシア・ラード・ナッシュを演じたジェニファー・コネリー。私にとって注目の俳優ですが、メジャーな適役に乏しかったのは事実です。やっと、話題作のはまり役に巡り会い、アカデミー賞の助演女優賞を受けた意味は大きいです。艶やかさと意志の強さと聡明さが共存しています。



映画「友へ チング」、プサンを舞台に4人の男たちの友情を描いた感動作

  • 2016.01.13 Wednesday
  • 23:28




「友へ チング」(2001年。韓国映画)は、クァク・キョンテク監督作品です。チングとは、古くからの親友の意味。1970年代後半から90年代前半のプサンを舞台に、4人の男たちの友情を描いた感動作です。無理に泣かせようとしない抑制が、かえって深い感動を残します。

1970年代のプサンを描いたノスタルジックな風景は、韓国の中年の人たちには、ジーンとくる場面でしょう(私たちが「クレヨンしんちゃん・嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」に、うるうるしていまうように)。プサンの名所が次々に登場し、4人が高校から映画館まで駆け抜けた通りは「チング通り」と命名されたといいます。

このシーンから、映画は急にテンポを上げ、より輝きはじめます。そして、暴力が目立ちはじめる。映画館での乱闘シーンの迫力に驚きましたが、ヤクザの血で血を洗う抗争のリアルさもすさまじいです。フイルム・ノワールの味わいです。

監督が、プサンでの実体験をもとに、書き上げた半自叙伝的な作品。監督に近い立場のサンテクが、少し善人すぎる以外は、どの人物も造形がしっかりしているます。

そして俳優たちが、素晴らしい演技をみせます。ユ・オソンは、ジュンソクの強さと弱さを演じ分け、人間的な魅力を十分に引き出しています。ジュンソクと心ならずも対立するドンス役チャン・ドンゴンは、陰影のあるしなやかな演技。刺し殺されるシーンの見事さは、長く記憶に残るでしょう。紅一点のジンスクを演じたキム・ボギョンは、とてもチャーミングです。

どの国の映画にも、その国に住んでいる人だけに分かる笑いがあります。この作品でも、そんな場面がありました。サンゴンがドンスをスカウトする時の言葉「自分は日陰に住んでいながら、日なたに住む人々をより輝かせるのがヤクザではないか」は、かの悪名高いKCIAの標語「我々は陰地で働き、陽地を志向する」をもじったものです。知っている人は苦笑したことでしょう。私は、残念ながら映画を観た後で知りました。



映画「折り梅」、家族や人間の生き方を描いた極めて深い人間ドラマ

  • 2016.01.13 Wednesday
  • 23:03




松井久子監督の「折り梅」(2002年)には、社会派作品にありがちな感傷性や説教調がみじんもありません。家族や人間の生き方を描いた、極めて深い人間ドラマです。映画として一級の出来といえます。

世話するために引き取った義母・政子が、アルツハイマー型痴呆症を患って奇行を繰り返し、主婦の巴をはじめとする家族4人は、深刻な危機を迎えています。しかし、グループホームに入れる日、政子は巴に実の子にも話していない自分の過去を整然と話し始めます。巴の中の痴呆のイメージが変わる劇的な場面です。そして、痴呆が進む政子に、絵画という思い掛けない才能が開花します。私の痴呆観も大きく変化しました。それは、人間の豊かさの再認識でもあります。

梅が、こんなにも深く、美しいイメージとともに映画の中核に位置する作品を私は知りません。「折り梅」という言葉が、高齢者のメタファーとなって、魅力的に立ち表れる瞬間が素敵です。吉行和子、原田美枝子という名俳優は、競い合うのではなく、響き合うように感動を高めていきます。吉行和子が添い寝した原田美枝子の胸に触って甘えるシーンが素晴らしい。子役たちも健闘しています。加藤登紀子、金井克子、りりィは、3人とも印象的な役で登場します。

2002年作品。日本映画。111分。配給=パンドラ/シネマワーク。製作・監督=松井久子。原作=小菅もと子(「忘れても、しあわせ」日本評論社刊)。脚本=松井久子、白鳥あかね。エグゼクティブ・プロデューサー=福島昭英。プロデューサー=新藤次郎、里中哲夫。アソシエイト・プロデューサー=吉井久美子。撮影=川上皓市。照明=水野研一。音楽= 川崎真弘。美術=斉藤岩男。録音=芦原邦雄。編集=渡辺行夫。記録=堀ヨシ子菅野巴=原田美枝子、菅野政子=吉行和子、菅野裕三=トミーズ雅、菅野みずほ=田野あさみ、菅野俊介=三宅零治、中野先生=加藤登紀子、山際夫人=金井克子、ヘルパー夏子=乾 貴美子、坂田愛子=岡本麗、政子の母・つや子=中島ひろ子、鈴本みどり=天衣織女丸山知美=安田ひろみ、星野保子=鶴間エリ、絵画教室の先生=りりィ、パン屋の主人=蛭子能収、パン屋の奥さん=角替和枝、茶髪の女の子=芝山香織、時子=今井和子、政子の子供時代=松田花穂、川島えりな、医師=有福正志、順子=江崎順子、彩=小菅あゆみ、港の男=山室一貫、老人たち=丸子礼二、伊佐治高光、早川治平、田中利光、加藤八代、今野常子、成瀬よ志子、加瀬功



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