2001年6月8日、札幌のショートフィルムフェスティバルで新海誠監督と出会う

  • 2016.09.25 Sunday
  • 21:51


 

 

新海誠監督の劇場アニメ「君の名は。」が、予想を遥かに超えた大ヒットになっています。9月22日までに774万人を集め、公開28日で興行収入が100億円を超えました。

 

 

 

札幌国際短編映画祭は、2006年から始まっていますが、その前にアメリカン・ショート・ショートフィルムフェスティバルという映画祭を開いていました。

 

新海誠監督との出会いは、2001年6月8日、第2回アメリカン・ショート・ショートフィルムフェスティバル2001でした。まだ20代で、デビュー前でした。

 

上映したアニメ「彼女と彼女の猫」(4分46秒)は、一人暮らしの女性と拾われた猫の日常を叙情豊かに描いていました。音楽の使い方と映像の省略のセンスが抜群でした。マックを使って一人でアニメを作る姿勢に大きな可能性を感じました。

 

製作中の「ほしのこえ」は、予告編を公開しました。宇宙と地上にひきさかれたスーパー遠距離恋愛、アクションSFといった内容です。新しいセンスを感じて、わくわくしたことを覚えています。

 

短編映画祭は、新海誠監督のような才能に、いち早く出会える場でもあります。新しい才能、新しい表現に出会える場です。

 




 

ヒマラヤ4000メートル以上の山地でのオールロケ映画「キャラバン」

  • 2016.01.19 Tuesday
  • 11:34




エリック・ヴァリ監督・脚本の「キャラバン」(1999年)は、ヒマラヤ4000メートル以上の山地でのオールロケによる作品です。

構想10年。80年代からネパールに住んでいたエリック・ヴァリ監督は、3年間ドルポの村に住み、村人との信頼関係を築いていきました。その結果、大自然の中での壮大なドラマを、村人たちが演じるという困難な課題を克服することができました。

写真家でもある監督だけに、自然の切り取り方が抜群に美しい。そして、人間と自然のたぐいまれな距離感は、そこに住んでいる者でなければ、なかなか生まれないでしょう。

麦を得るための命懸けのキャラバン。そこに指導者をめぐる世代間の対立を絡める骨太の構図。なんといっても長老ティンレ役ツェリン・ロンドゥップの渋い演技が光ります。

ただ、死に際に、それまで憎んでいたカルマとすんなりと和解するシーンは、ちょっと違和感がありました。心の奥底で通じ合っていたとも考えられますが。子役パサンを演じたカルマ・ワンギャル少年の、涼し気なまなざしが印象的です。次期指導者の片鱗を感じました。



映画「レッド・プラネット」、時間をかけてつくられた、かなり密度の濃いSF作品

  • 2016.01.19 Tuesday
  • 11:24




「レッド・プラネット」(2000年)は、ナイキのテレビCMで 一躍有名になったアントニー・ホフマンの初監督作です。「火星地球化計画」をベースにしたSF作品。ストーリーも映像も、飛び抜けて独創的という訳ではありませんが、見事な火星の風景、緻密な音響設計、滑らかなロボットの動作、多彩な登場人物、スピーディな展開と、いずれも時間をかけてつくられたことが分かり、全体としては、かなり密度の濃い作品になっています。CGに依存した派手なだけで大味なSFが多い中で、ハイレベルの仕上がりといえます。エマ・シャプリンの美声を含め、音楽もなかなか聞かせます。

「マトリックス」(ウォシャウスキー兄弟監督)のトリニティー役で有名になったキャリー=アン・モスが、宇宙船の船長ボーマンを演じています。次々に襲いかかる困難な状況を、独力で乗り越えていきます。タフです。しかも人間的な優しさも持ち合わせています。「エイリアン」のリプリーをほうふつさせます。いや、リプリー以上に冷静です。ヴァル・キルマーら男性たちも個性的。哲学的な思索にふけるベテラン宇宙飛行士のシャンティラス役にテレンス・スタンプを充てたのは、巧みなキャスティングです。



押井守監督の映画「アヴァロン」、見たことのない美しい質感

  • 2016.01.19 Tuesday
  • 11:17




押井守監督の「アヴァロン」(2001年)は、世界的な注目を集めた「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」以来5年ぶりの実写作品です。先進的な技術を使い、今まで見たことのない美しい質感を表現しています。

これまでのデジタル処理の多くが、アニメ的手法を実写に持ち込む試みだとするなら、この作品は実写をもとにアニメを製作するという方法を取っています。実写とアニメは、デジタル技術の進歩の中で、競いながら溶け合っていくのでしょう。

体感型ネットワーク・ゲームの隠されたフィールドを探るというテーマは、目新しいものではありません。しかし、歴史が重層化しているポーランドでオールロケし、セビア色を基調にしたスタイリッシュな映像は、間違いなく押井守の作家性に貫かれています。

コーラスを多用し荘厳なまでに構築された川井憲次の音楽は、ストーリーの神話性を高めています。現実に迫ろうとして異世界を描く押井守は、閉塞的な神話世界との危うい闘いを続けています。

2001年。日本映画。106分。配給=日本ヘラルド映画。監督=押井守。エグゼクティブ・プロデューサー=渡辺繁、香山哲、塩原徹、坂上直行。プロデューサー=久保淳。脚本=伊藤和典。音楽=川井憲次。撮影監督=グジェゴシ・ケンジェルスキ。美術=バルバラ・ノバク。衣裳=マグダレナ・テスワフスカ。ビジュアル・エフェクト・スーパーバイザー=古賀信明。デジタル・アートディレクター=林弘幸。音響デザイナー=井上秀司、ランディ・トム。オリジナルサウンドトラック=メディアファクトリー。アッシュ=マウゴジャータ・フォレムニャック、ゲームマスター=ヴァディスワフ・コヴァルスキ、マーフィー=イエジ・グデイコ、ビショップ=ダリュシュ・ビスクプスキ、スタンナ=バルテック・シヴィデルスキ、受付の女=カタジナ・バルギエヲフスカ、ジル=アリシィア・サプリック、九姉妹のマーフィー=ミハウ・ブライテンヴァルド、ゴースト=ズザンナ・カシュ



映画「クリムゾン・リバー」、多彩な見せ場を盛り込んだフランス映画

  • 2016.01.19 Tuesday
  • 09:34




「アサシンズ」のマチュー・カソヴィッツ監督が、苦みのきいた娯楽作「クリムゾン・リバー」(2000年。フランス映画)を作り上げました。山岳アクション、猟奇的殺人ミステリー、閉鎖的な大学空間。この意外な組み合わせによって「クリムゾン・リバー」は、スリリングな展開をみせます。

たるみのない展開と力強い映像は見ごたえ十分。こんなに多彩な見せ場を盛り込んだフランス映画は珍しいです。ハリウッドなら評価しませんが、フランス映画の今後にとっては大きな意義があります。

映画はタイトルから衝撃的。無数の裂傷を負い、腐敗しかかった死体がクローズアップでなめるように描かれていきます。あまりにリアル。あまりにショッキング。「セブン」(デビッド・フィンチャー監督)と違い、実に即物的な描写です。監督の強引にして魅力的な映像が幕を開けます。

ジャン・レノとヴァンサン・カッセルが刑事役で登場します。レノの独特の存在感は謎に包まれた物語にぴったり。ヴァンサン・カッセルは、息を飲むような武術を見せます。実際に鼻を骨折したほどの熱演。ナディア・ファレスは、難しい役で今後の飛躍を予感させます。そして、娘をひき殺され発狂した母親役を、かのドミニク・サンダが演じていたのは、思わぬ拾い物でした。



映画「バトル・ロワイアル」、日本社会を考えるリアリティある思考実験

  • 2016.01.19 Tuesday
  • 09:26




「バトル・ロワイアル」(2000年)は、国会で表現の法的規制の発言まで飛び出した深作欣二監督70歳、60本目の作品です。ヤクザ映画ならどんなに残虐な殺し合いでも良くて、中学生ならR15指定になるのは何故でしょう。

ストーリーは荒唐無稽のようでいて日本社会を考える思考実験としては、リアリティがあります。問われているのは、大人社会のあり方です。冒頭「この国はすっかりダメになりました」と言われますが、登場する子供たちは、皆生き生きとした人間的な感情にあふれています。不良も含めて、こうした子供たちを恐れている大人たちのひよわさと狂気に慄然とします。

そして級友を殺さなければ殺されるという限界状況に置かれた15歳の中学生が、どんな選択をするのか。さまざまな道が模索されています。中でも、なごやかな雰囲気だった少女たちが、一瞬にして殺し合うシーンの異様な迫力は忘れがたい。殺りくに満ちてはいますが、スピード感にあふれ、清清しい。甘さを排し時代を突き抜ける力に満ちた傑作です。

生徒たちは、深作欣二のテンションに良くついてきていました。群像劇としての厚味もあります。ビートたけしの絶妙さは評価するとして、藤原達也、前田亜季らも難しい役をこなしていました。しかし、全員が主役という方がいいでしょう。

自ら死を選ぶ者、迷いつつ逃げ道を探す者たちの中にあって、決然と殺しつづけることを選んだ相馬光子役柴咲コウの熱演が、とりわけ光りました。殺しっぷリも、殺されっぷリもすごい。他者への憎悪を抱え込んだ幼年期は描かれていませんが、その不幸さが手に取るように伝わってきます。

2000年作品。日本映画。103分。配給=東映。監督=深作欣二。原作=高見広春。脚本=深作健太。製作=田中敏雄。撮影=柳島克己。音楽=天野正道。美術=部谷京子。編集=阿部浩英。七原秋也=藤原達也、中川典子=前田亜季、川田章吾= 山本太郎、キタノ=ビートたけし、桐山和雄=安藤政信、相馬光子=柴咲コウ、千草貴子=栗山千明



映画「愛のコリーダ2000」、25年ぶりによみがえった世界に誇りうる傑作

  • 2016.01.18 Monday
  • 23:34




大島渚脚本・監督の「愛のコリーダ」は、25年前の日本での公開時には一部シーンがカットされ、シーンによっては全面にぼかしがかって、何をしているのかさえ分らないほどの「修正」がなされていました。

「愛のコリーダ2000」としてよみがえった作品は、一部にぼかしはあるものの、修正はごくわずかで何をしているかはすべて分かります。ショッキングなラストは修正なしで公開されました。日本で「愛のコリーダ」が劇場公開されたと言っていいでしょう。

1936年の「阿部定事件」を男女の壮絶な愛のドラマとして描いた大島監督の熱いまなざし。その力強く美しい映像は、戸田重昌の美術によって、さらに輝きを増しています。

全く古びていないばかりか、時がたってさらに魅力的になったと感じました。世界に誇りうる傑作です。さらに、じつにさまざまな性の形態が盛り込まれていることにも驚きます。「ポルノ」ではないと言われたが、日本文化を踏まえた極上のポルノグラフィでもあると言えます。

定役の松田英子は、本当に逸材でした。あの存在感は誰も真似できません。ただ、その後の不幸を知っているだけに複雑な思いになります。

ハードコアに挑戦した藤竜也の勇気は、今こそ最大限に評価したいと思います。二人の身体は、映像な美に昇華しています。脇役も素晴らしい。中でもみすぼらしい乞食を演じた殿山泰司の「勇気」こそ、最も讃えなければならないでしょう。

1976年作品。日本・フランス映画/109分。提供=大島プロダクション×ギャガコミュニケーションズ。製作=アルゴス・フィルム(フランス)、オセアニック(フランス)、大島渚プロダクション。製作代表=アナトール・ドーマン。脚本・監督=大島渚。製作=若松孝二。撮影=伊東英男。照明=岡本健一。美術=戸田重昌。美術担当=下石坂成典。装飾=荒川大。衣装=加藤昌廣。録画=安田哲男。編集=浦岡敬一。音楽=三木稔。演奏=日本音楽家集団。美粧=竹村幸二。結髪=大沢菊江。吉蔵=藤竜也、定=松田英子、「吉田屋」のおかみトク(吉蔵の妻)=中島葵、「吉田屋」の女中松子=芹明香、「吉田屋」の女中キヌ=阿部マリ子、「吉田屋」の女中千恵子=三星東美、老乞食=殿山泰司、「吉田屋」の女中頭お常=藤ひろ子、芸者八重次=白石奈緒美、「みつわ」女中=青木真知子、芸者(「みつわ」)=東祐里子、芸者(「みつわ」)=安田晴美、芸者(「みつわ」)=南黎、芸者(「みつわ」)=堀小美吉、半玉=岡田京子、幇問=松廼家喜久平、「田川」のおかみ=松井康子、大宮先生=九重京司、(満左喜)の女中=富山加津江、蛇の目の娘=福原ひとみ、小料理屋のおやじ=野田真吉、芸者菊竜=小林加奈枝、芸者(「満左喜」)=小山明子



映画「スナッチ」、悪党どもの血なまぐさいドタバタ劇をハイスピードの展開で

  • 2016.01.18 Monday
  • 21:44




「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」で抜群の映像・音楽センスを見せたガイ・リッチー監督の「スナッチ」(2000年。アメリカ・イギリス合作)。 さまざまな悪党どもの血なまぐさいドタバタ劇を、ハイスピードの展開で混ぜ合わせ、あっという間に終えてしまいます。通常なら3時間の物語を鮮やかな手さばきで100分余りに仕上げました。

群集劇ですが、「マグノリア」(ポール・トーマス・アンダーソン監督)のような重たい手応えとは対極にあります。軽い。粋といえば、粋。肩の凝らない、しかしスタイリッシュな手法を編み出したと言える(肩は凝りませんが、眼は疲れます)。

相変わらずのアクの強いキャスティング。ブラッド・ピットの使い方にはとりわけ感心しました。素手ボクシングが強い流れ者の役ですが、けっして前には出ていません。へたくそな刺青を全身に入れたチープさが、独特の魅力を引き出しています。 本来は、こういう危ない役がハマリなのだと思います。ボクシングでの派手な殴られ方もいい。そこにも、ガイ・リッチーのセンスが光っています。



映画「小説家を見つけたら」は、「グッド・ウィル・ハンティング」に及ばない

  • 2016.01.18 Monday
  • 20:27




傑作「グッド・ウィル・ハンティング」のガス・ヴァン・サント監督による「小説家を見つけたら」(2000年)。青年の天才的な才能に気付いた大人が、その才能を伸ばそうと交流を深めるという筋書きは似ています。しかし、前作のような細部の工夫が乏しいので、感動には導かれません。

文学や音楽の使い方が、いかに巧みでも、脚本の弱さは隠せません。天才青年が16歳というのも、やや無理があります。せめて18歳でなくては、あの熟達の文章にリアリティがありません。

隠とん生活をしている小説家をショーン・コネリーが演じています。さすがに堂々としています。青年の才能をつぶそうとするクローフォード教授をF・マーリー・エイブラハムが演じているのも見ものです。「アマデウス」でのモーツアルトをつぶそうとするサリエリ役が、強烈に脳裏に焼き付いているからです。ただ、この作品では彼の内面にまで視線が届いていません。そして、ベテラン二人と互角に張り合ったのが新人ロブ・ブラウン。最大の収穫かもしれません。



映画「サトラレ」、本広克行監督らしく、ほどよいスパイスで味付けし、笑いと涙をブレンド

  • 2016.01.18 Monday
  • 16:28




「サトラレ」(2001年)は、本広克行監督作品です。チラシに「泣きのエンターティンメント」というコピーが付けられていますが、まさにその通りです。青年の清らかな心に触れて、泣くことができたという満足に浸ることができます。

「考えていることがすべて患者に伝わってしまう医者がいたら」というドリフターズのコントのようなアイデアですが、その人物に真実を知られないために国家政策として24時間監視し保護しているという、荒唐無稽な設定です。さすがは本広克行監督、ほどよいスパイスで味付けし、笑いと涙をブレンドしていきます。

主人公の安藤政信が、ピュアな青年を好演しています。この年頃の男性は、もっとHだと思うのだけれど、それを言い出すと全体が崩れるから大目に見ましょう。私は、「バトル・ロワイアル」(深作欣二監督)での、一言も話さず、ひたすら殺人の快楽を追い求めていた桐山役との対比を楽しみました。すべてが対照的で驚いてしまいます。こういう偶然も面白いです。

鈴木京香は、コミカルとシニカルを使い分けられる女優に育ちました。そして、ベテランの八千草薫。穏やかな表情が年を取っても美しい。



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