ギャグ満載の映画「カンフーハッスル」は、チャウ・シンチー監督のサービス精神健在

  • 2015.12.31 Thursday
  • 16:31




チャウ・シンチー監督の「カンフーハッスル」(2004年)は、血なまぐさい殺りくシーンから始まるので、うわぁっと思いますが、すぐにギャグ満載の展開になり、おおいに笑わせてもらいました。

冷酷無情なギャング団の名前が「斧頭会」(ふとうかい)。貧困地区のアパートの名前が「豚小屋砦」(ぶたごやとりで)。チャウ・シンチーのサービス精神は健在です。ただ、あまりにもたくさんのギャグを連発したので、外したネタも多かったです。

アクション場面では、かつてカンフー映画で活躍した俳優が登場。まさにあり得ないほどの派手なシーンが続きます。「カンフーの達人になるのが一番の夢、俳優は二番目」というチャウ・シンチーの、ブルース・リーらへのオマージュが詰め込まれています。「ドラゴンボール」を連想した人も多いはずです。

さんざん笑っておいてなんですけれど、「少林サッカー」ほどの驚きや爽快感はありません。「少林サッカー」のツボを押さえたストーリー展開と、結末の鮮やかさに比べると、明らかに完成度は低いです。とりわけ、最後のオチはイスから転げ落ちるほど、ひどかったです。それでも楽しい作品であることは、間違いありません。



映画「お父さんのバックドロップ」、男の子と父親の対立と和解という直球ストーリー

  • 2015.12.31 Thursday
  • 15:06




李闘士男監督の「お父さんのバックドロップ」(2004年)。笑って泣いて、元気をもらいました。母を亡くした男の子と父親の、対立と和解という直球なストーリーですが、プロレスラーの父と、プロレスがかっこ悪いと思っている息子という設定とともに、関西下町の雰囲気と個性的な登場人物が作品をほのぼのと膨らませていきます。感動的な盛り上がりの中に程よく笑いがブレンドされていた。

プロレスラー役の宇梶剛士は、実直な父親と血みどろファイターを好演しています。神木隆之介は、かわいらく芯の強さ男の子を演じ、見事に泣かされました。祖父役の南方英二も良い味を出していました。

原作者の中島らもが、床屋役で出演していますが、単なるゲスト出演ではなく、ちゃんと芸を見せていました。2004年7月26日に52歳で転落事故がもとで病死し、この作品が遺作となりました。



北海道移住を命じられた淡路・稲田家の武士とその家族の苦闘を描く映画「北の零年」

  • 2015.12.31 Thursday
  • 13:19




行定勲監督の「北の零年」(2004年)は、明治維新によって、故郷を追われ、北海道移住を命じられた淡路・稲田家の武士とその家族の苦闘を描く上映時間168分の大作です。吉永小百合111本目の出演作としても話題になりました。

ストーリーに粗さがあるものの、観終わって、確かな感動が残ります。ただし北海道開拓の過酷さをリアルに再現した群像ドラマと呼ぶことには抵抗があります。むしろ気高い女性たちへの賛歌を、寓話的に歌い上げていると言った方がいいでしょう。

脚本は「デビルマン」の那須真知子。今回も、一歩間違えば大駄作になりかねない奇妙な脚本でした。しかし、それを厚みのある映像にした行定勲監督の力量は、相当なものです。歴史大作にありがちな、図式的な単純化を避け、錯綜し奥行きのある作品に仕上げました。物語の背景にアイヌ民族の懐の深さ、知恵の深さを感じさせるのも、素晴らしいです。

さすが大女優・吉永小百合には、凛とした存在感があります。顔のアップがなければ年令は気になりません。それにしても渡辺謙が、こんな汚れ役を演じるとは思いませんでした。彼が演じたことで、単なる悪役には見えませんでした。志乃の娘・多恵の役は、少女時代が大後寿々花、思春期が石原さとみ。二人ともなかなか良い演技を見せました。そして、迫力あるクライマックスでの馬たちの大熱演も書き留めておきます。

エンドロールには、夕張でのロケを切望していた故・中田鉄治・元夕張市長の名前が流れ、別の深い感慨にも包まれました。エンドロール全体に、ロケ地で協力してくれた人たちへの感謝の思いがあふれていました。



「パッチギ!」は、しっかりした歴史観に支えられた、おおらかで暴力的な熱血青春映画

  • 2015.12.31 Thursday
  • 11:30




井筒和幸監督の「パッチギ!」(2004年)は、おおらかで暴力的な熱血青春映画です。とにかく面白いですが、しっかりとした歴史観に支えられた傑作です。「ガキ帝国」の初心に帰りながら、痛苦な歴史を省みない日本の現状をも批判しています。その姿勢は共感できます。

グループ・サウンズ全盛の1968年が舞台。いきなり失神シーンが登場し笑わせます。次は京都府立東高校の空手部と朝鮮高校の番長・アンソンらによる乱闘シーン。激しくぶつかり合い血が飛ぶます。主人公の松山康介は、アンソンの妹でフルートが得意なキョンジャに心を奪われます。

彼女が奏でる美しい曲が「イムジン河」という朝鮮半島に思いをはせた歌だと、音楽に詳しい坂崎に教えられます。康介は、ギターの弾き語りで「イムジン河」を練習し、朝鮮語の独学を始めます。そして日本と朝鮮の歴史に目覚めていきます。

この辺の展開は、スムーズで無理がありません。さすが熟達な井筒和幸監督です。坂崎役のオダギリジョーは、相変わらず軽妙で魅力的。松山康介を演じた塩屋瞬は、すがすがしい姿が印象的でした。



30歳で自殺した女性詩人シルヴィア・プラスの生涯を描いた映画「シルヴィア」

  • 2015.12.31 Thursday
  • 11:26




クリスティン・ジェフズ監督の「シルヴィア」(2003年)は、30歳で自殺したピュリッツァー賞作家・女性詩人シルヴィア・プラスの生涯を描いた作品です。

アメリカの上流家庭に育ちながらも、早くに父を亡くしファザーコンプレックスを克服していません。10代で文学的才能が認められ、優れた詩人になるべくケンブリッジに入学し、イギリス人大学院生テッド・ヒューズの詩に感動。交際が始まり、やがて結婚します。

テッドは詩人として有名になりますが、シルヴィアは創作の時間が少なくなり、テッドの女性関係に対してさい疑心が強くなります。苦しい経験を通じて力強い詩が創造されます。しかし、やがて精神状態は限界を超えてしまいます。

芸術家どおしの結婚が悲劇に終わりやすいことは、容易に想像できますが、シルヴィア・プラスの場合はファザーコンプレックスという底流があります。

作品は、比較的静かに進んでいきます。そこから芸術家の苦悩を読み取れるかどうかで、評価が分かれます。グウィネス・パルトローとしては、名演技の部類でしょうが、美しくて恐ろしい詩を書いたシルヴィア・プラスの凄みには欠けます。



映画「ヴィタール」は、人体解剖を扱っていながら叙情的で幻想的

  • 2015.12.31 Thursday
  • 11:22




「ヴィタール」(2004年)は、塚本晋也監督作品です。全身を揺さぶられる暴力的な塚本作品のファンにとっては、あまりにも静かな展開が物足りないかもしれません。

人体解剖という生々しいテーマを扱っていながら、この作品の基調は叙情的で幻想的です。身体に包まれた「意識」の不思議さ、「記憶」の不思議さを手探りしています。そして肉体の「もろさ」と「かけがえのなさ」が、個々人の存在の「もろさ」と「かけがえのなさ」を浮かび上がらせます。映像の静ひつな美しさが、死への思索を促します。煙突のシーンは、かつての力強い塚本映像ですが、不要に感じました。

これまでの塚本作品には不釣り合いな雰囲気の浅野忠信ですが、今回は不思議なオーラが新しい塚本映画の誕生に貢献しています。そして塚本監督は浅野忠信の不気味さを見事にえぐり出していました。クラシック・バレリーナの柄本奈美のキレの良い踊りが、作品の広がりを支えています。モデルのKIKIも尖った存在感を見せました。

塚本監督は「鉄男」から「双生児(GEMINI)」まで手回しのフィルム編集機を使ってきましたが、今回初めてFinal Cut Proでデジタル編集しました。これまでは4カ月かかっていた編集作業が1日で終わったとか。音と絵のシンクロが非常に簡単にできるなど、1人で編集全体が進められるので、とても効率的だったらしいです。



レイ・チャールズの天才性と人間的なもろさを描く映画「レイ」

  • 2015.12.31 Thursday
  • 10:35




「レイ」(2004年)は、テイラー・ハックフォード監督の作品です。レイ・チャールズは、作品の公開を待たずに2004年6月10日他界しましたが、レイ・チャールズの意向が色濃く反映された伝記映画になっています。迫真の演技と呼ぶふさわしいレイ役のジェイミー・フォックスをキャスティングに指名したのはレイ・チャールズ自身でした。
監督のテイラー・ハックフォードは、レイ・チャールズと15年にわたる親交があり、密度の濃いストーリーに反映しています。レイ・チャールズの天才性と人間的なもろさが見事に描き出されているとともに、アメリカの黒人差別の歴史も浮かび上がらせています。

映画の中ではレイ・チャールズ自身の歌声も響いていますが、ジェイミー・フォックスの歌とピアノ演奏は、本人としか思えない素晴らしさです。コンサートシーンは、映画ではなく、ドキュメンタリーを観ているような臨場感がありました。

ゴスペルとR&Bを融合させた数々のソウル・ナンバーに聞き惚れ、その存在の大きさをあらためて実感しました。窓の外の鳥のかすかな羽音を聞き取るシーンが、レイの聴力の非凡さと感性の豊かさを象徴しています。感動のヒューマンドラマです。



「シネマ秘宝館in札幌2」、2005年2月開催

  • 2015.12.31 Thursday
  • 09:55




シネマ秘宝館in札幌2が、2005年2月5日「シネマカフェ」(札幌市南2西2富樫ビルB1F)で開かれました。アルコールを含むフリードリンク制でスナックも付いて1500円。食べながら、飲みながら映画を楽しむというシネマ秘宝館のスタイルが札幌でも実現しました。凝ったタイトルで始まり、斎藤館長と中村犬蔵さんの司会で進行。第1部「斎藤館長のバカ歌謡曲レコードコンサート」は、時間は短かったですが参加者の心をしっかりつかみました。

第2部「超短編&秀作大集合!」は、ふみはあとスタジオ制作の「森の番人・魚様」「とびうおカックン」「かものはし」ら作品に爆笑。4月に新宿で開催される「シネマ秘宝館26ロボまつり」公開に先駆けCG作品「ロボレンジャー」(前野健一監督)も先行上映しました。特に「絶対無双麻雀マン」(山岸剛志監督)の技術力とセンスに驚きました。

第3部「アクション映画特集」はガンアクション「イリーガル小学生」(太田文平監督)、派手すぎるテーマとCGの「ファイティング八漬くん4〜THE TOKYO WARS」(池田健一郎監督)、本格カンフーアクション「ミュージックドラゴン」(笠原大監督)は、それぞれ個性的な作品に仕上がっていました。

第4部「禁断の大バカ作品一挙上映」では、まず中村犬蔵&捏造さん特集に圧倒されました。デンキネコも良いですが、既存の映像を駆使したパロディ作品には、死ぬほど笑わされました。編集ビデオ作品タクラビジョン来襲も、懐かしさと可笑しさに時間を忘れました。「戦え!サザエさん」の爆破シーンに驚嘆し、斎藤館長作の皮肉の効いた「セカチュー」で締めくくりました。4時間半が、あっという間に過ぎました。



映画「オペラ座の怪人」、映画ならではの迫力と華麗さ

  • 2015.12.31 Thursday
  • 09:23




監督・脚本ジョエル・シュマッカーの「オペラ座の怪人」(2004年)は、あまりにも有名なミュージカルの傑作「オペラ座の怪人」の映画化です。総勢100人のフルオーケストラで奏でられるメロディは、確かに迫力があります。映画ならではの華麗さも認めます。ストーリーも音楽も素晴らしいのは当たり前。映画としての新しい魅力がなければ、映画化の意味は乏しいと思います。

舞台は高いので何時でも見ることはできませんが、映画なら何時でも見ることができます。でも、だから映画化というのは、違うのではないでしょうか。

私は、映画としての印象が薄いと感じました。特に中盤は単調に思ました。歌はそれなりに上手かったのですが登場人物の切ない思いが、あまり心に響きませんでした。何もかも、謎を明らかにしてしまう脚本もいただけません。

ホラー的な要素ではなく、活劇的に味付けするのなら、シャンデリアの落下シーンなどは、もっと派手に演出すべきでした。ブライアン・デ・パルマ監督の「ファントム・オブ・パラダイス」の方が、はるかに面白いです。



映画「ビフォア・サンセット」は、素晴らしい会話劇をたんのうできます

  • 2015.12.31 Thursday
  • 00:00




リチャード・リンクレイター監督の「ビフォア・サンセット」(2004年)は、素晴らしい会話劇をたんのうできます。派手な仕掛けの作品ばかりが、映画ではありません。このようなウイットに富んだ作品に出会うのも映画の醍醐味です。

9年ぶりに再会した2人が、別れの時間までの85分間にとりとめのない会話を交わしながら、徐々にそれぞれの思いを打ち明け始めます。恋愛だけではなく、政治、人生にまで話題は広がります。前向きな生き方をしている2人にも押し寄せている現代の生き難さの感覚に、生々しいリアルさを感じました。

イーサン・ホーク、ジュリー・デルピーとも、膨大な会話をこなしていますが、とりわけジュリー・デルピーの熱演は感動的です。

どきどきしながら結末はどうなるのだろう、と思っていたら、何とも粋な終わり方です。会話だけで、こんなにも感激する作品ができるのだとあらためて感心しました。



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