映画「裸足の1500マイル」は、先住民アボリジニの同化政策という歴史に向き合った作品
- 2016.01.09 Saturday
- 09:25
「裸足の1500マイル」(2001年。オーストラリア映画)は、「今そこにある危機」「ボーン・コレクター」というハリウッドのヒット作品を手掛けたフィリップ・ノイス監督が、生まれ故郷のオーストラリアに帰り、先住民アボリジニの同化政策という歴史に向き合った作品です。強制的に隔離された寄宿舎から母のもとに歩いて戻る少女たちの2400キロの旅。なんと稚内から那覇までの距離です。
感動作にありがちな派手な演出を避け、アボリジニの少女3人が故郷へ向かう姿を、淡々と追います。大きな出来事はありませんが、実話をもとにしているだけに、説得力があります。ただ食べ物を得る苦労があまり描かれないので、90日間、どうやって生き抜いたのかという点でのリアリティがやや弱いです。日々の暮らしで得た知恵が生かされたのだと思いますが。
アボリジニの血を引く少女3人の表情の素晴らしさが、この作品全体に希望を与えています。とりわけモリー役のエヴァーリン・サンピの意志的な瞳が印象的。大地とともに生きる人間の尊厳をうたいあげたピーター・ガブリエルの曲が見事です。電子メールに添付したMP3のファイルを何度も監督と交換しながら生まれたというのも感慨深いです。