ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2006(3)

  • 2016.02.08 Monday
  • 16:25




2006年2月26日も、ヤング・ファンタスティック・コンペ部門の作品を観ました。最後の6作目。「日が暮れても彼女と歩いてた」(日本、高柳元気監督)は、序盤のギャグが寒くて白けましたが、若い女性たちの日常を淡々と描くうちに彼女たちが輝きはじめます。会話も良い。後半では、計算したとは思えない素晴らしいシーンが登場します。なかなか清清しい。

招待作品「子ぎつねへレン」(河野圭太監督)は、オホーツクを中心にロケされた映画です。キタキツネの生態調査の第一人者で、野生動物の保護・治療に尽力し、写真家・エッセイストでもある竹田津実の「子ぎつねヘレンがのこしたもの」を原作にしています。視覚、聴覚、嗅覚が不自由な子ぎつねを見つけた少年が、必死で育て、最後には「子ぎつねの母親」になって、看取るまでの話しです。種を超えた家族関係の構築。夕張で、こういう映画を見ると、素直に感動し泣けます。

「プロデューサーズ」は、トニー賞12部門、史上最多受賞のブロードウェイ・ミュージカルを完全映画化した。原作は、メル・ブルックスにアカデミー脚本賞をもたらした1968年の映画。これをブルックス自身の脚本と作詞作曲で2001年にミュージカル化。その舞台で演出、振り付けを担当したスーザン・ストローマン自身が初監督しました。初監督とは思えない、余裕のある出来栄えです。ブロードウェイ恐るべし。ミュージカルの素晴らしさを味わいました。危ないネタを満載しながら、ぎりぎりのところで笑いに変える絶妙な手さばき。これだけネタが詰まっていれば、何度でも観たくなるでしょう。
 

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2006(2)

  • 2016.02.08 Monday
  • 16:08




「シチズン・ドッグ」は、傑出しています。レトロなファンからマニアまでの絶賛を浴びた「怪盗ブラック・タイガー」のウィシット・サーサナティアン監督の第2作。タイ映画のニューウェイブというよりも、世界のニューウェイブの水準にあります。厳密な色彩設計と天才的なひらめき。クスクス笑いに、ちくちくと風刺も込めたシュールなロマンティック・コメディです。

「三差路ムスタング少年の最後」(韓国、ナム・ギウン監督)は、ビターでブラックなギャグ満載作品。パンクな才気は感じますが、表現もストーリーも、それほど新鮮ではありません。

「血の涙」(韓国)は、奇跡的な傑作「バンジージャンプする」のキム・デスン監督の第2作。斬新でエッジの効いた映像が素晴らしい。しっかりとつくり込まれた脚本による堂々たる歴史大作です。すでに貫禄すら備えています。作品の完成度は、ピカ1。ただ、ヤング・ファンタという新しい才能を発掘するコンペのグランプリにふさわしいかどうかは、意見が分かれるでしょう。



ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2006(1)

  • 2016.02.08 Monday
  • 15:39




第17回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2006に、2006年2月25日から参加しました。目標は、ヤング・ファンタスティック・コンペ部門のノミネート全6作品を観ること。25日に、一気に5作品を観ることができました。
 
「陶器人形」(中国、ツアン・ジャーベー監督)は、 伊藤歩が主演する初の中国映画です。不気味で不可解な死が連鎖するミステリー・ホラー。ツアン・ジャーベー監督は、日本映画シナリオと監督の研究にも取り組み、沢山の本を翻訳しています。1990年に来日し、日本映画学校へ留学。川喜多記念映画文化財団に入り、映画の研究をし続けてきました。ホラーをよく研究しているのは分かりますが、作品は、やや生煮えの印象でした。

「イド」(日本)の不二稿京(ふじわら・けい)監督は、 塚本晋也監督作品「鉄男」(1987年)で、女優・撮影・特殊小道具・特殊メイキャップを担当しています。「オルガン」(1996年)で脚本・出演し、初の映画監督を担当しました。「イド」は、「オルガン」に比べ、かなり洗練された映像です。時間をかけて丹念に作り上げたことが分かります。猥雑でグロテスクですが、とても宗教的な作品です。



映画「秘密のかけら」は、アメリカ・ショービズ界の光と闇を描く虚飾と頽廃に満ちた物語

  • 2015.12.28 Monday
  • 22:19




アルメニア出身のアトム・エゴヤン監督がトルコによるアルメニア人虐殺を描いた前作「アララトの聖母」は、自らのルーツを問う重厚な作品でした。「秘密のかけら」(2005年)は、1950年代の華やかなアメリカ・ショービズ界の光と闇を描く異色サスペンスです。

虚飾と頽廃に満ちた物語だが、とても人工的な感じがします。初めてハリウッドで撮影したエゴヤン監督は、ハリウッドの魅力の陰にある表面的な虚飾をさりげなく切ってみせます。その皮肉は、まさにエゴヤン映画です。

物語の構図は、なかなか屈折していますが、俳優たちも、これまでとは違った側面をみせます。ケビン・ベーコンがくせのある役を演じるのは、見慣れていますが、コリン・ファースがコメディから、一転暴力的になる場面は驚きました。

ラスト近くでは、さらにすごい場面があります。子どもっぽい役が多いアリソン・ローマンがベッドシーンに挑戦しています。相次ぐベッドシーンに登場する女優たちは、なかなか魅力的で大胆でした。しかし成人映画に指定されたのは理解できません。



映像温泉芸社in札幌 その3.5で、なにわ天閣作品に感動

  • 2015.12.28 Monday
  • 22:15




2006年1月21日、イベントスペース『EDiT』で「映像温泉芸社in札幌 その3.5」が開催されました。開場から上映までの間も飽きさせない映像サービス。終わった後の「家族映像」も濃厚で、しっぽまでネタが詰まった上映会でした。

爆笑を誘う酒徳ごうわく監督作品「リアルニンテンドッグス」は、いいかげんに見せながら計算されているベテランの貫禄。7才の子供が作成した「ベンハー/赤ちゃん恐竜連れ去る」、素晴らしく考えさせられた「ダー機関の ニューツネマパラダイズ」、中村犬蔵の労作「デンキネコ対メカデンキネコ」と楽しませてくれました。

中でも「バカ映画の始祖」「バカ映画の手塚治虫」と呼ばれる、なにわ天閣作品に感動しました。『特攻伝説』の「特攻特攻とことこ」で脳内ねんざし、『ハローキティー』で全身骨折しました。ハンブルグ国際短編映画祭に正式招待された『みどりちゃん』は、20秒間に家族関係の屈折と少女の脆さを凝縮しつつ笑わせる日本が世界に誇るべき傑作です。



映画「スキージャンプ・ペア〜Road to TORINO 2006〜」は、爆笑CG作品の実写版

  • 2015.12.28 Monday
  • 21:43




1組のスキー板に2人で乗ってジャンプする。DVDが大ヒットを記録した爆笑CG作品「スキージャンプ・ペア」の劇場公開実写版です。初日2006年1月28日に観ました。

札幌劇場入り口で、初日サービスとして2本セットのチュウチュウアイス(チョココーヒー味)を手渡されました。劇場が暑かったので、チュウチュウしながら作品を観ました。物理学者・原田博士が発見した「ランデブー理論」を説明する場面でチュウチュウアイスが登場。「アハハッ!!!」。

「ランデブー理論」とオリンピック正式種目になるまでのドキュメンタリーが、イマイチうまくつながっていません。リアルさにこだわらず、もっと馬鹿馬鹿しい展開にした方が良かったと思います。ただ、テレビドキュメンタリーという設定は、悪くありません。あのテレビ中継をパロったトリノオリンピック決勝のCGに、見事につながった時は、長年のプロジェクトが完成したという深い感慨を覚えました。


2006年作品。日本映画。82分。配給=ファントム・フィルム。監督=小林正樹。総監督=真島理一郎。プロデューサー=中島真理子、八幡麻衣子。プロデュース=川村元気。エグゼクティブプロデューサー=釜秀樹、穀田雅仁。企画=川村元気。原案=真島理一郎。CG監督=真島理一郎。ナレーション=政宗一成。出演=谷原章介、船木和喜、荻原次晴、八木弘和、アントニオ猪木、ガッツ石松



映画「グレート・ビギン」は、貴重なだけでなく、鮮明で美しい映像に満ちています

  • 2015.12.28 Monday
  • 21:33




「グレート・ビギン」(2004年。フランス映画)は、生物学者であり、フランスの映像作家でもあるマリー・プレンヌーとクロード・ニュリザニーが、16年という年月をかけて撮った作品です。

ビタミンCが水に溶ける時の結晶を撮影した魅惑的な映像から始まり、藻のコロニー、ミズクラゲの群舞、大きな卵を飲み込む蛇など、次々に生命の姿が写し出されます。

自然ドキュメンタリーのひとつですが、生命の誕生とつながりという大きなテーマを追っています。既存の映像をつなぎ合わせるのではなく、この作品の撮影のために開発されたオリジナルの機材によるこだわりの映像は、迫力が違います。さすが昆虫の世界を超顕微な視点で追った「ミクロ・コスモス」(1996年)の監督です。

貴重なだけでなく、鮮明で美しい映像に満ちています。母親の胎内で豊かな表情を見せる人間の胎児の映像を知るだけでも、見る価値のある作品だでしょう。正しい意味で教育的な映画です。



映画「奇妙なサーカス」、気味の悪さでは「乱歩地獄」を超えています

  • 2015.12.28 Monday
  • 13:28




園子温監督・脚本・音楽の「奇妙なサーカス」(2005年)は、R-18作品です。かなり過激な作品だとは思っていましたが、エログロの極北という懐かしい言葉を連想させるほど、すさまじい内容です。

気味の悪さでは「乱歩地獄」を超えています。錯乱的なテンションはどんどん高くなります。何が現実で何が幻覚なのか、観客には分からない。見事なマジックです。

12年ぶりに女優業に復帰した宮崎ますみですが、歴史に残る怪演を見せてくれました。熟れた赤い薔薇のような魅力を再認識しました。乳房から血が吹き出すシーンが痛々しかった。いしだ壱成も得体のしれなさが見事に決まって、かっこ良かったです。


2005年作品。日本映画。108 分。配給=セディック・インターナショナル。監督・脚本・音楽=園子温。製作=中沢敏明、星野晃志。プロデューサー=富田敏家、佐藤敏宏。企画=國實瑞惠。撮影=大塚雄一郎。美術=大庭勇人。編集=伊藤潤一。照明=前田淳。録音=福田伸。尾沢小百合/作家・三ッ沢妙子=宮崎ますみ、尾沢剛三=大口広司、田宮雄二=いしだ壱成、尾沢美津子=桑名里瑛、編集長=田口トモロヲ、高橋真唯、不二子、マダム・レジーヌ



映画「THE 有頂天ホテル」は、個性派ぞろいのキャスティングを楽しむ作品

  • 2015.12.28 Monday
  • 13:21




三谷幸喜監督の「THE 有頂天ホテル」(2005年)は、個性派ぞろいのキャスティングです。女優陣が、がんばっていました。娼婦役・篠原涼子が目立っていたものの、松たか子の成長ぶりが印象に残りました。大勢のキャストを、それぞれ引き立てつつ、物語を転がしていきます。そして、とにもかくにも前向きな後味にまとめあげる力技は、さすがです。

確かに面白く、何度か笑ったが、それほど感激はしませんでした。多彩なカメラワークも、わざとらしさが目立ちました。「ラヂオの時間」の方が、わくわくしました。ただ、この作品は年末に観たら、印象がだいぶ違うのかもしれません。


2005年作品。日本映画。136 分。配給=東宝。監督=三谷幸喜。製作=亀山千広、島谷能成。プロデューサー=重岡由美子、小川泰、市川南。エグゼクティブプロデューサー=石原隆、佐倉寛二郎。脚本=三谷幸喜。撮影=山本英夫。美術=種田陽平。編集=上野聡一。音楽=本間勇輔。照明=小野晃。録音=瀬川徹夫。副支配人(宿泊部長)・新堂平吉=役所広司、客室係・竹本ハナ=松たか子、国会議員・武藤田勝利=佐藤浩市、ベルボーイ・只野憲二=香取慎吾、コールガール・ヨーコ=篠原涼子、アシスタントマネージャー・矢部登紀子=戸田恵子、副支配人(料飲部長)・瀬尾高志=生瀬勝久、憲二の幼馴染・小原なおみ=麻生久美子、シンガー・桜チェリー=YOU、筆耕係・右近=オダギリジョー、堀田 衛=角野卓造、スパニッシュマジシャン・ホセ河内=寺島進、武藤田の秘書・神保 保=浅野和之、板東の息子・板東直正=近藤芳正、    ウェイター・丹下=川平慈英、客室係・野間睦子=堀内敬子、徳川の付き人・尾藤=梶原善、ホテル探偵・蔵人=石井正則、腹話術師・坂田万之丞=榎木兵衛、ホセのアシスタント・ボニータ=奈良崎まどか、堀田由美=原田美枝子、芸能プロ社長・赤丸寿一=唐沢寿明、会社社長・板東健治=津川雅彦、総支配人=伊東四朗、大物演歌歌手・徳川膳武=西田敏行



映画「ある子供」、鋭さとともに優しいまなざしがダルデンヌ兄弟の持ち味

  • 2015.12.28 Monday
  • 13:06




「ある子供」(2005年。ベルギー・フランス合作)は、「ロゼッタ」のダルデンヌ兄弟(ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ)の監督作品です。カンヌ国際映画祭2度目のパルムドール大賞に輝いた社会派ドラマです。

若年層の失業率が20%に達しているベルギーの社会情勢を背景に、大人になりきれないまま子供を産んでしまった若いカップルの運命を抑制的に描いています。このテーマはベルギーに限ったことではありません。鋭さとともに優しいまなざしがダルデンヌ兄弟の持ち味です。

行き当たりばったりですが、最後は責任に目覚める青年ブリュノは、なかなかリアルだと思います。ただ、子どもが大泣きしたり、オシッコをしたりしないので、手のかかる子供に辟易するという、当然あるべき場面が登場しません。だから、深い考えもなしにその子供を売りとばしてしまう選択が、やや唐突に感じられます。ぶつ切れのようなラストも、効果的とは言えません。



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