札幌国際短編映画祭(SAPPOROショートフェスト)2009
- 2015.12.21 Monday
- 14:17
札幌国際短編映画祭(SAPPOROショートフェスト)2009が、2009年10月14日から18日まで開催されました。毎年札幌で世界中のショートフイルムを観ることができて、とてもうれしい映画祭です。2009年は、札幌在住の横須賀令子監督が、フィルムメーカー部門のグランプリに輝き、さらにうれしさが増しました。
【エントリー作品】
■フィルムメーカー-AフィルムメーカーA。アレキサンダー・フィリップ(AlexandrePhilippe)監督の作品に出会いました。おそらく、2009年最高の出会い。「LEFT」のすごみのある美しい映像に、全身が震えました。ずっと、探していた映像に出会ったという感覚。タルコフスキー監督の映像に震えた以来の体験です。吉田舞、アナ・マッグラス両監督の作品はかわいい。
■フィルムメーカー-BフィルムメーカーBは、エーリック・ローゼンルンド(ErikRosenlund)、マイケル・ウォルフ(MichaelWolf)、令子(ReikoYokosuka)の3氏がエントリー。それぞれに強烈な個性を放っています。エーリック・ローゼンルンドは、デフォルメした表現のブラック・コメディが持ち味。マイケル・ウォルフの作品は、異様に怖い。こんな怖い3作品を見せられるとは。横須賀令子は札幌市内在住。墨を使ったアニメは、軽やかでダイナミックに踊ります。余白で自在に遊ぶ。28年間一貫して墨絵アニメを創作しています。今回グランプリを獲得しました。
■フィルムメーカーCフィルムメーカーC。神風動画の若々しいアニメに力がありました。アイルランド出身のテリー・オリアリー監督、ロシアのナタリー・クジミナ監督も個性的な作家性を感じさせます。
■チルドレンチルドレンショートプログラム。今年は、すべてアニメ。子供向けと侮れない佳作ぞろい。「まいごのペンギン」(フィリップ・ハント監督、イギリス)は、ていねいな作りで情感を盛り上げます。海のCGも見事。最優秀チルドレン・ショート賞。子ども審査員賞。ベルギー人アニメーター・セバスチャン・ゴダールと大阪の子供たちが創り上げたユニークな「うみといのち(うらしまたろうものがたり)」も面白かったです。
■インターナショナルI-A(女性におすすめ)
「ラウンド」(カーク・ヘンドリー監督、イギリス)がジャングルでの死と再生をテーマに手による影絵アニメの新しい地平を切り開いていました。「パッセージ」は、マリー・ジョゼ・サンピエール監督自身の出産体験をもとにした医療ドキュメンタリーアニメ。
■インターナショナルI-B(人間模様)
黒澤明監督の名作「七人の侍」への屈折したオマージュとなっている「八人目の侍」が出色。メキシコの「パラダイスカフェ」もおもしろかったです。
■インターナショナルI-C(クール!)
インターナショナル部門で一番気に入ったプログラム。作品部門のグランプリを獲得したエコロジカルなアニメ「ヴァーミンツ」(マルク・クレステ監督、イギリス)が傑出しているのは間違いありませんが、サイケデリックなミュージックビデオ「ノー・プレイス・ライク・ホーム」(ロスト監督、オランダ)のダークな雰囲気も大好きです。落書きアート「ムトー」(ブルー監督、イタリア)のインパクトも、忘れがたい。60年代のイラストをコラージュしたラン・レイク監督のアニメ「コントロール・マスター」も、毒を放っていました。
■インターナショナルI-D(不思議な世界)
「死の舞踏(DanceofDeath)」(ペドロ・ピレス監督、カナダ)の死体の荘厳な美しさに衝撃を受けました。
■インターナショナルI-E(映画好きもビックリ)
お気に入りのプログラム。「2バーズ」(ルナー・ルナーソン監督、アイスランド)の瑞々しく、切なくて、いたたまれなくなる映像に魅せられました。最優秀監督賞受賞。クロアチアのシモン・ボゴイヤビッチ・ナラス監督のアニメ「モラナ」は、非常に大きく切実な世界を描いていて胸に響きました。「テン」(ビフ監督、フランス)の幻覚も衝撃的。
■インターナショナルI-F(驚き。)
「編集者ミナミケイジ」(ティアゴ・メンドンカ監督、ブラジル)が勉強になりました。1970年代のブラジル、サンパウロで起きた「ボカ・フィルム・ムーブメント」を支えた雑誌「CinemainClose-up」の発行・編集者ミナミケイジを描いています。
■ナショナル-A
「赤い森の歌」(泉原昭人監督)の独自な世界を描ききったアニメが印象的。精緻な映像に引き込まれました。最優秀国内作品賞。筧昌也監督の「愛の小手指」は、指たちの恋の行方を描いたコメディ。単純だが笑えます。
■ナショナル-Bナショナル-Bでは、まず「28」(片岡翔監督、札幌)にやられました。エコロジカル・ホラー・コメディという新しいジャンルを切り開いたわけではなく、1発芸的なのだが、それでも「やられた」感は強いです。「KUDAN」(木村卓監督)は、ユニークな世界観を独自のキャラクターで描いたアニメ。労作です。宇木敦哉監督が1人で製作し、一般の映画館で劇場公開された、札幌で怪獣が暴れまわる「センコロール」も力作でした。最優秀北海道作品賞。
【特別プログラム】
■カリフォルニアショートカリフォルニアショート
姉妹映画祭カリフォルニア・インディペンデント・フィルム・フェスティバル(CIFF)2009からセレクト。BECKの妹アリッサ・スウェード出演のミュージックビデオ「FallingFromMars」、米国TVドラマ「HEROES」のアンドウ君役ジェームズ・キーソン・リー主演の「Akira'sHiphopshop」など9作品を上映。「Akira'sHiphopshop」では、片言の日本語を話す日本人役の俳優が笑えました。
■アジアンタイフーンアジアンタイフーン
90歳で初長編映画『夢のまにまに』を公開して、世界最高齢監督としてギネスブックに登録された木村威夫監督の監督デビュー作「夢幻彷徨」と「海をみつめて過ごした時間」と、新進気鋭の韓国女性監督であるホン・ジェヒの「雌のライオン」という異色の組み合わせ。「雌のライオン」は、「OUT」を連想させます。そして、なんと言っても木村監督作品を大スクリーンで観る幸せに浸りました。
■プレミアムショート
本当に豪華です。2008年度フィルムメーカー部門グランプリ受賞のケン・ワードロップ監督作品。古田亘(わたる)監督の「彼女の告白」。森本晃司監督のアニメ「次元爆弾」、マイケル・アリアス監督の「HOPE」など。なかでも、「彼女の告白」には、大笑いしました。卓越したストーリーテラーだと思います。