2015年の映画独断ベスト10・洋画
- 2015.12.31 Thursday
- 19:31
2015年の映画独断ベスト10・洋画篇です。あくまでも、私がことし劇場で見た作品の中から選んでいます。もっと素晴らしい作品をたくさん見逃していると思いますが、ご了承ください。
1位「マッドマックス 怒りのデス・ロード」
30年ぶりに公開された「マッドマックス」シリーズの第4作。ほとんどCGを使わずに制作されています。私はIMAX3Dで観ました。凄まじい迫力です。一生ものの経験ができました。頭蓋骨のオブジェなど細部にまで徹底的にこだわり抜いたアート性、想像をはるかに超えるド派手なカーアクション、妥協のないバイオレンスの連続、絶望的な状況の中での濃厚な人間ドラマ。さまざまな驚きが詰まっています。
2位「さよなら、人類」
スウェーデンのロイ・アンダーソン監督が4年の歳月をかけて完成させました。計算され尽くした絵画のような39シーンで構成しています。冒頭に博物館のシーンがありますが、この作品全体が注意深く切り取られた人間の歴史博物館です。人類の現在、人類の過去、人類の未来。いつでも人類は愚かで滑稽です。それを優しく傍観する監督のまなざしを感じました。その距離感は絶妙で、冷酷のようでもあります。
3位「ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女」
アナ・リリ・アミリプール監督の長編デビュー作です。モノクロ映画。「歴史上はじめてのイラン風モノクロ吸血鬼ウェスタン」と言われています。確かに新しい吸血鬼像をつくりあげました。映像にも音楽にも、強烈な作家性を感じます。冒頭に出てくる青年アラシュは、ジェームズ・ディーンを思わせます。ジム・ジャームッシュ監督のような、みずみずしい映像表現。イランが舞台なのですが、アメリカ風でもあります。
4位「人生スイッチ」
ペドロ・アルモドバルが製作、ダミアン・ジフロンが監督しました。6作品のオムニバスです。想像を超えた展開の連続で、恐怖のあまり、笑ってしまいます。観ている間、心の中で何度も「えーっ」と叫んでしまいました。周りでは、笑いの渦が起こっていました。ブラック・コメディ・ショートを堪能できます。若きアルモドバル監督のブラック・コメディを思い出しました。
5位「おみおくりの作法」
ウベルト・パゾリーニが監督・脚本・製作を務めています。ロンドンで民生委員をしている主人公ジョン・メイを、エディ・マーサンが見事に演じています。寡黙な、たたずまいが素晴らしいです。メイの仕事は、孤独死した人の、身寄りを探し、葬儀の手配をし、埋葬まで見届けること。彼自身も独身で孤独な人生を送っています。彼は交通事故で死にます。そして誰にも見送られずに埋葬されます。しかし、最後に心温まる場面が訪れます。
5位「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」
いろいろな意味で、打ちのめされました。第2次世界大戦で、ドイツ軍の暗号機エニグマによる暗号を解読し、連合国軍に勝利をもたらしたイギリスの天才数学者アラン・チューリングの人生を描いています。実話に基づく映画というのが信じられないほど、ドラマチックな展開です。人間存在の裏側や歴史の裏側にも踏み込む重層的な物語になっています。